専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

心室中隔瘤

2022.08.01
カテゴリー: 循環器

今年7月に仙台で開催されたTAVI関連学会のJTVT(日本経カテーテル心臓弁治療学会)で循環器内科の川原先生が発表した内容からシェアします。

 

心室中隔中を合併した重症AS患者に対するTAVの問題点を整理してくれています。

 

【心室中隔瘤】

心室中隔から右室側に膨隆する瘤状の構造物

 

Valsalva洞直下の心室中隔に左室から

右室に突出する心室中隔瘤(矢印)

 

【病因】

先天性:先天性心疾患の0.3%に合併  うち20%は心室中隔欠損(VSD)に合併

後天性:外傷・虚血・感染性心内膜炎後・VSDの術後に生じた報告例あり(稀)

(心臓 vol.49 No.6 (2017) 590-594) 

【症状】

一般的には無症状 ただし合併症発生のリスクあり

 

合併症としては・・・

 大動脈弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症・瘤破裂・左右シャント・細菌感染・右室流出路狭窄・血栓塞栓症(脳梗塞・冠動脈塞栓)・不整脈(心室性頻拍・脚ブロック・房室ブロック)

 

【治療】

外科的なパッチ閉鎖 → 瘤閉鎖に伴う三尖弁弁尖のゆがみ、医原性伝導路障害のリスクあり

無症状であれば経過観察 → 上記のような合併症を有する場合には手術を検討

日心外会誌 47巻 2号:49-53 (2018)

 

【TAVIでの問題点】

①弁のsizing(中隔瘤をどう計測するか)

TAVIではCTでの計測が重要で、特にAnuulusやValsalvaの計測が弁のサイズ決定に重要です。でも、今回の心室中隔瘤はValsalva洞直下にあり、通常の計測では含まれる位置でした。瘤を含めるか含めないかでAnnulusの計測が変わってきます。

 

②中隔瘤部分からのPVL(弁周囲からの逆流)

中隔瘤部分が圧着しないため、術後にPVLが残存する可能性が懸念されました

 

③中隔瘤部分の脆弱性

中隔瘤部分は周囲組織比べて薄く、圧が加わることによる損傷のリスクも懸念されました。  

 

本症例では特に大きな問題なく弁を留置でき、PVLもtrivial-mild程度で終了しています。術後3カ月の時点では経過良好ですが、症例数が少ないこともあり心室中隔瘤合併例のTAVI後の長期成績は不明であるため、今後もPVLや心室中隔瘤に関連した合併症の発生に注意してフォローしていく必要があると考えています。

(編集長)

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