専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

CLTI  疾患概念・予後

2022.08.08
カテゴリー: 循環器

末梢動脈疾患(PAD)ガイドラインが今年春に改訂されました。PADといってもピンとこないと思いますが、PADとは冠動脈疾患と大動脈疾患以外の動脈硬化性疾患を指します。PADの中で大部分を占めるのが下肢動脈疾患ですが、他に頸動脈・椎骨動脈疾患や上肢動脈疾患、腎動脈疾患なども含むので、最近のガイドラインでは下肢動脈疾患(LEAD)と呼んでいます。これは従来、下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO)と言われていたものと同義と考えてください。

用語の定義についてはこの記事をご覧ください

 

最近ではこのLEADという疾患の認知度も上がってきたのですが、重篤な疾患を想起させる胸痛といった症状と異なり、下肢の症状はあまり積極的に拾い上げられていない、いざ見つけたとしても、どこに相談したら良いのか分からないので、整形外科や皮膚科や形成外科に紹介されているというケースがまだまだ多いのが実情ではないでしょうか?確かにLEADの主たる症状である間歇性跛行は通常急速に悪化するものではありませんし、大部分の症例では、何年もそのまま悪化することなく経過していきます。

 

しかしLEADの中でもCLTIと呼ばれる状態は極めて予後不良ですので、このCLTIについては早く拾い上げて、早く専門施設につなげることがとても重要なので、ぜひあなたにも知っておいてもらいたいと思います。

 

水戸済生会では10年以上前からLEADに対する血管内治療(EVT)に取り組んでおり、多い時で年に約160例、コロナの影響を受けた昨年も約120例ほど施行しています。そして当院は透析症例が多いという背景からEVT施行例の約7割がこのCLTI患者さんです。今回から改訂されたガイドラインをベースに、当院の経験も交えてCLTIについて紹介していきます。

 

まず、先ほどから登場しているCLTI(シーエルティーアイ)ですが、Chronic Limb-Threatening Ischemiaの略で、日本語では「包括的高度慢性下肢虚血」と訳されています。

 

下肢虚血,組織欠損,神経障害,感染などの肢切断リスクをもち,治療介入が必要な下肢を総称する概念で、虚血による安静時痛や下肢潰瘍,壊死が少なくとも2週間以上改善せず持続するものを指します。

 

もしかしたら、今までCLIという言葉を聞いたことがあるかもしれません。これはCritical Limb Ischemiaの略で、日本語で「重症下肢虚血」と呼んでいました。ところがCLIだと虚血の程度でしか評価していませんでしたが、虚血に加えて,創の部位や大きさ,感染が下肢の予後を大きく左右する要因になっていることが分かり、より的確に下肢切断リスクを反映する概念としてCLTIが出てきました。

 

このCLTIは血行再建を行わなければ1年以内の下肢切断率が20~30%、さらに1年死亡率も約20%という非常に予後の悪い集団です。ちなみにここでの下肢切断とは、踵がなくなる下腿レベルでの切断のことを指しており、大切断と呼んでいます。

 

また死亡率に関しては、ステージⅢの胃がんでは1年生存率が約80%、つまり1年死亡率が約20%ですから、どのくらい予後が悪いかが分かってもらえると思います。

 

もう一つ重要なことはCLTIで切断に至っても、大切断をうけた術後30日死亡率が4~22%、周術期死亡を免れても1年の死亡率は30~50%と非常に高いことです。

 

ですので、早期にCLTIを発見し、創治癒を得て、下肢切断を回避することが生命予後的にも極めて重要になることをぜひ知っておいてください。

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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