専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
左脚ブロックならSTEMIの診断はできない?
ERに70歳台の男性が胸痛で搬送されてきました。その時にERでとられた心電図がこれです。
洞調律で、左脚ブロック(LBBB)波形を呈していました。左脚ブロックはST変化が判断でき
ないと教わったと思いますが、この症例も心電図からSTEMIと判断することはできないのでしょうか?
LBBBでは、原則STの判断ができないのですが、Sgarbossa criteriaを使うことで、虚血と診断ができる場合もあります。
(*Sgarbossaはスペイン語で、発音は「ズガルボッサ」と聞こえました・・・)
Sgarbossa criteriaの話をする前に、LBBBでは前提としてQRSの向きとST-Tの向きが逆になるのが原則です。これをdiscordantと言いますが、虚血などの影響でQRSの向きとT波の向きが同じになる(concordantと言います)と異常所見と捉えます。
一般的なLBBB波形
QRSとST-Tの向きが逆になっているのが通常です
これを踏まえたうえで、Sgarbossa criteriaとは
①QRSが上向きの誘導で1mm以上のST上昇 →5点
②V1~V3のいずれかの誘導で1mm以上のST低下 →3点
③QRSと逆方向の5mm以上のST上昇 →2点
3点以上で虚血ありと診断できる
なお、③はST上昇とS波の比が0.25以上とするModified Sgarbossa criteriaを用いた方がオリジナルのものよりも精度が高いとされています。ちなみにSgarbossaスコア3以上の感度は20%、特異度は98%とされています。つまり、特異度が高いので所見が合えば診断できますが、感度が低いので除外には使えないということです。
冒頭の心電図を見てみると、V4では①を満たしそうですし、V1~V3ではST上昇/S>0.25となっていて、3点以上をクリアしています。トロポニンも陽性で、緊急CAGではLAD#6の99%病変が判明し、PCIを行って無事に退院しました。
冒頭の症例のV2誘導
明らかにST上昇/S>0.25を満たしています
LBBBのSTEMIに遭遇することは少ないと思いますが、記憶のどこかにあるだけで、すぐにスマホで調べることができるので役に立ちますよ。
(編集長)
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