専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
刺激伝導系ペーシング(CSP) その1
今回もフォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は刺激伝導系ペーシング(CSP)についてです。
まずCSPという言葉を聞いたことがあるでしょうか?このCSPは不整脈をやっている先生でなければ聞きなれないかもしれません。編集長も詳しくはないので勉強も兼ねて紹介します。
もともと、徐脈に対するペースメーカ治療では右室心尖部ペーシングが用いられてきました。
右室心尖部ペーシング
この右室心尖部ペーシングは心拍数維持効果は得られますが、左室の非同期的収縮を生じるため、ペーシング率の増加にともない、EF 低下や心不全など心血管イベントが増加することが知られています。その後は右室心尖部以外に右室中隔ペーシングが試みられてきましたが、心血管イベントの抑制効果は示されませんでした。
右室中隔ペーシング
動物実験などでは刺激伝導系を直接捕捉するヒス束ペーシング(HBP)が生理的な興奮伝播様式が保持されることが分かっていましたが、デバイスの登場でHBPや左脚領域を直接補足する手技成功率が向上し、CSP の可能性に注目が集まっています。
左脚ペーシング
(右室中隔ペーシングに比べて高位に留置されています)
今回のガイドラインのアップデートでは、徐脈性不整脈に対するCPSは以下のようになっています。
【ClassⅡa】
ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で、高頻度の心室ペーシング(> 20%)が予測され、かつ軽度~中等度の左室収縮能低下(LVEF 36 ~ 50%)を認める場合、刺激伝導系ペーシングを考慮する。
【ClassⅡb】
・ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で、高頻度の心室ペーシング(> 20%)が予測され、かつ左室収縮能低下を認めない場合、ペーシング誘発性心筋症を回避する目的で、刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい。
・房室ブロック作製術を必要とする症例に対して,刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい。
当院でもまだ10例未満と少数ですが、左脚領域に心室リードを留置するケースを経験しています。長期経過がどうなるか注目ですね。
(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)
(編集長)
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