専門研修ブログ
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茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
一人で練習する
あなたが循環器内科志望なら、カテの練習はどうやっていますか?
ずっと助手でついていて、指導医に「やってみる?」と言われてカテを手にしても、いきなりできる訳ではないですよね。やはり練習が必要です。それ以前に、そもそも患者さんに失礼です。
このブログで紹介している「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」には、「手術はパフォーマンス・演奏会と同じと考えよ」と書いてあります。確かに、もしあなたが大勢の前でギターの演奏を披露するとしたら、気を散らさないように一人で練習するでしょう。
手術やカテもこれと同じで、患者さんに最高の手技を見せられるように練習が必要です。しかも、自分を追い込んで、人よりもたくさんの練習が必要です。
適切な例えではないかもしれませんが、あなたが医学部を受験した時、国試を受験した時には一人で、時間を惜しんで勉強したはずです。だから今のあなたがあるのと同じです。
当院の場合は、消化器外科ならスキルラボで腹腔鏡の練習ができますが、多くの施設同様にカテのスキルラボはありません。
でも、PCIが終わったら、片付ける前に使い終わったデバイスをいじって、どこまで力を加えると壊れるのかを確かめてみる。滅菌期限切れのガイディングとかワイヤーをもらって、自分の部屋でいじってみる。放射線技師さんにお願いして、カテ台の上で透視を見ながら動かしてみる。カテ台の動かし方や操作方法も練習する。
指導医の側からすれば、すぐには上達しなくとも、あなたのそんな努力に気づきますし、チャンスを与えようという気持ちになります。ぜひ頑張ってください。
(編集長)
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リスクの伝え方
あなたは内視鏡やカテなどの処置や手術の説明をして、患者さんやご家族から同意書にサインをもらったことはありますか?手術の同意書はないけど、造影CTや輸血の時などはサインをもらったことがあるはずですよね。
手術に限らず造影CTでも輸血でもリスクがあるから、説明したうえで同意書にサインをもらう訳ですが、このリスクをどう伝えたらいいのか、あなたは考えたことはあるでしょうか?
例えば、高齢で腎機能も悪い患者さんで周術期死亡率が5%と予想される手術の説明をするとしましょう。
患者さんは「先生におまかせします」というばかりですが、死亡率5%の手術は死亡率1~2%と言われる冠動脈バイパス手術(CABG)と比べると、かなりリスクの高い手術ということになります。なので、あなたはもっと深刻に捉えて欲しいと思っています。
この時、あなたは
① この手術は死亡率は5%の手術です。
② この手術では20人に1人が死亡する可能性のある手術です。
どちらで説明しますか?ちょっと考えてみてください。
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リスクを自分のこととして捉えてもらいたい時は、②の説明の方が伝わりやすと言われています。
「5%」も「20人に1人」も、どちらも同じことを言っているのですが、「20人に1人」と言われた方が人は、より「もしかしたら自分の身に起こるかもしれない」と考えるそうです。
似たようなことがコロナワクチンでもありました。
1回目のワクチン接種が始まったころに、「ワクチン接種後に〇〇人死亡した」という報道が良くありました。でも、ワクチンの接種回数がその時点ですでに何万回という状況だったので死亡率は非常に低い頻度だったはずです。さらにワクチンと死亡には前後関係はあるかもしれませんが、ホントにワクチンの影響なのかという因果関係は分からない状況だったのに、患者さんの中には非常に不安に受け止めていた人が多くいました。「〇〇人死亡」という実数でリスクを自分のことと受け止めやすくなったのだと思います。
リスクを伝えるとき、同じことを言っているのに相手にどのように受け取られるかについては、私たちはもっと注意を払うべきではないでしょうか。
(編集長)
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まずは話を聞いてみる
ある日のことですが、外来をやっていると看護師さんから相談がありました。
「検診で肝機能異常と尿酸高値を指摘された患者さんが受診したのですが、初診当番の消化器の先生は尿酸の方は診れないって言っているので、先生に診てもらえませんか?」
個人情報になるので詳細は言えませんが、この先生は以前に当院で研修していた内科専攻医なのですが、患者さんの診察をする前から、肝機能異常はOKだけど、尿酸はNGという対応って、あなたはどう思いますか?
外来患者さんが多くなると、早く患者さんを診療しなくてはいけないので、だんだん焦ってきて、自分が慣れている専門分野以外のことは他に回したくなる気持ちは実によく良く分かります。でもこれが尿酸ではなく、血糖の指摘でも、おそらく診れないと言うのではないでしょうか?(現実として、内科ではどの領域でも糖尿病を診ない訳にはいきません)
検診で指摘された程度であれば、まずは話を聞いて、病歴を確認する程度で、いきなり処方を出したり、その日のうちに精査が必要になることは通常ありません。肝機能のフォローついでに、尿酸もフォローして、その間にどう対応すればよいのか調べる時間はあります。たとえ糖尿病だとしても、すぐにインスリンが必要なんてことは、外来診療では極めてまれです。
しばらく前に当院で内視鏡のトップとして活躍してくれていた消化器内科の先生が開業されたのですが、その先生とお会いした時に「クリニックで診療している患者さんのうち消化器内科疾患はどのくらいの割合ですか?」と聞いたことがあります。
その先生の答えは「約2~3割」とのこと。それ以外の大部分が高血圧とか脂質異常症そして糖尿病と言っていました。つまり、専門領域に関わらず内科のコモンな疾患については、ある程度の対応ができないといけないと言えるでしょう。
今は内科専攻医、そして勤務医として急性期病院で働いているあなたでも、将来はどこで仕事をするようになるか分かりません。今から自分のできることを狭めるのはもったいない。どんな状況でも対応できるように、内科のコモンな疾患の評価や管理を自分でやってみるのは大事だと思います。
食わず嫌いにならないように、「まずは話を聞いてみる」ことから始めてみてください。
(編集長)
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上達するための最も効果的な道具
手技が上手くなるための最も効果的な道具は何だと思いますか?
ちょっと考えてみてください。
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それは「失敗」です。
私たちは失敗してしまうと、本能的に間違いを直視せず、無視してしまいます。その次には、失敗を無かったことにして、最終的に「あれは失敗ではなかった」としてしまいます。
これは、「失敗を認めたくない」「失敗は悪である」「失敗は無駄である」と、あなた自身を否定するものと捉えているから、このように対応してしまうのだそうです。
でも、失敗が起こったプロセスを見つめることでスキルアップの手段になります。失敗の正しい対処法は、失敗の原因と向き合い、分析し、自分を成長させるヒントにすること。
このブログで紹介している「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」には「間違いは成長のために積み木を重ねていくようなもの」とあります。失敗という最も効果的な道具を大事に使って、あなたの手技をレベルアップしてください。
(編集長)
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手術記録は常に手術前に書け
手技を習得する時には、ただ指導医から症例を回してもらうのを待っているだけでは上手くなりません。前回の記事で紹介したように、「パフォーマンス直後に練習する」ことが方法の一つですが、他にもいろいろあります。
先日こんなことがありました。
紹介されてきた内腸骨動脈瘤の症例。CTを見ると総腸骨動脈の分岐角が難しく、かつ瘤の中枢はネックがほとんどなく、総腸骨動脈から外腸骨動脈にかけてステントグラフトを使用した方が良い症例でした。
「治療戦略はどうする?」と聞かれた専攻医は、「末梢をコイルで塞栓。近位はステントグラフトを用います」と正しい戦略を答えてくれました。
「では、アプローチは?シースサイズは?」と尋ねると「・・・・」
やったことがある人は分かると思いますが、腸骨動脈に留置するステントグラフトはサイズによりシースの太さが変わります。大きいサイズを使うなら通常用いられる6Frではなく、7Frや8Frを選択する必要があります。また、腸骨動脈の屈曲や蛇行があると通過できない、血管損傷をきたしてしまうので、同側からアプローチが無難です。一方、内腸骨動脈瘤の末梢の操作は対側からクロスオーバーさせた方がラク。
となると、最初に対側から6Frロングシースを挿入して、シースごとクロスオーバーさせたうえで末梢のコイルもしくはプラグでの塞栓をしっかり行い、近位は同側から8Frシースを挿入してステントグラフトを留置するという両側アプローチが必要になります。使用するシースだけでなく、屈曲した腸骨動脈に通過させるためのサポート力の強いガイドワイヤー、枝の分岐角度をみて透視装置のワーキングアングルを決めておく、末梢を塞栓するコイルのサイズ決めなど術前にやることはたくさんあります。手技が始まってから考えるのは遅すぎますし、患者さんに対してきわめて失礼と言えるでしょう。
このブログで紹介している「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」でも、「手術記録は常に手術前に書け」とあります。循環器領域ではTAVIもMitraClipも術前に入念な計画を立てて、上手くいかなかったときのプランBだけでなく、プランCまで準備して行っています。これは循環器の手技に限らず、内視鏡などでも同様ですね。あなたも、術前に手技記録を書きあげてから手技に臨んでください。
(編集長)
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医師の資質
私に初期研修医でも、専攻医でも、ついてくれた時に必ずする質問があります。
「’良い医者’に求められる資質、1つだけ挙げるとすれば何か?」
これには、皆さん色々な考えがあることと思います。技術、能力、センス、恐れない心、努力、知識などなど色々な回答がありました。
あなたはいかがでしょうか? 僕は”責任感”こそが最も大切であると考えています。
責任感があれば、患者さんの要望や希望に応えられるように努力するだろうし、目の前の患者さんのために勉強したり技術を磨いたり、仮にミスがあっても真摯な対応をすることができる。責任感がすべての根源になっているのではないか、と考えています。
当院では毎週木曜日の8時から内科外科カンファレンスが行われています。基本的には内科から外科に手術につながる症例のプレゼンテーションを行い、方針を検討する形です。このカンファでよく外科の先生が言う言葉で、内科医としてシビレル言葉があります。
「内科の先生がそこまでやってダメなら、あとはコッチ(外科)でやります」
このフレーズを外科から聞いたとき自分たちが一生懸命患者さんに尽くしてきてくれたこと、自分たちが十分に内科的治療をし尽くしたことを理解してもらえたとうれしくなるのと同時に「ここまで来たらあとは俺たちが何とかするぞ」という外科の心意気に感動します。
私も内科医として自分の仕事にプライドを持っていますが、やはり内科の限界があります。その時には外科の力を借りるしかありません。(時として、やっぱり外科はかっこいいなと感じることもなくはないです)もちろん、内科が外科の術後の偶発症に対して治療協力をすることもあります。(我々も内視鏡医としてできることはたくさんありますからね!)
内科にとっても、外科にとっても自分たちが知力を尽くして戦った後の後ろ盾になってくれる強力な存在があることで、より複雑でリスクの高い患者さんの治療へも立ち向かっていくことができます。私は当院の外科の先生を心から尊敬していますし、頼りにしています。
目の前の患者さんがどんなに大変な状況になっても、この患者さんのために自分は何ができるのか、と責任感をもってともに考えて行動してくれる仲間はなんと心強い存在でしょうか。すべての医師にちゃんと責任感があれば、患者さんの押し付け合いなんてならないですからね。
(Nao)
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パフォーマンス直後に練習せよ
自分の患者さんの心カテをやったのですが、診断カテでは上手くはないけど普通にできたのに、つづけてPCIになってガイディングカテーテルをエンゲージさせようとしたけど、どうしても出来ない。でも、指導医に代わったとたんにエンゲージされてしまった。
循環器でカテをやり始めの頃には誰でも経験したことがあるはずです。もちろん編集長も経験しました(しかも何度も)。
こんな時に、あなたはどうやっていますか?
次の症例で指導医に代わることなく、上手くできるために、何をしていますか?
専攻医になると手技の習得が大きなテーマの一つになりますが、初めから上手な人はいません。上手に見える人は、人の気づかないところで練習を繰り返しているから上手なのです。
そのための方法にはいろいろありますが、編集長は手技終了後に記録を付けて、手技を言語化し、繰り返すということをやっていました。カルテに記録する以上の手の動きや持ち方、姿勢などの細かいことまでノートに付けて、次のPCIの前に見直していました。
以前に「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」という本を紹介しました。
その中には、この記録をより効果的なものにする方法が紹介されていました。それが「パフォーマンス直後に練習せよ」です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(本文p70より) 手術の後、あるいは手術以外の診療の後、私は一人で部屋に入り、どうすれば改善できるかを意識してその日の出来事を振り返ることにしています。その際、その症例の改善点だけでなく、次の症例でどのように改善するのかと言うことも含めて、自己批評を行います。
・・・中略・・・・
解決策を考え出すことは、ただ単に問題を認識するよりも良いことです。常に解決策を考え出す努力をしましょう。手術直後に手術を振り返り反省しましょう。友人と症例について話し合いましょう。ノートを見直して、どこが逸脱していたかを見つけましょう。もっとも重要なことは、何が悪かったのか、なぜそうなったのかを特定することです。そして、二度と同じことを繰り返さないと自分に約束するのです。(引用終わり)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
PCI直後に指導医に質問し、自分なりの解決策を考えてみる。その場は忙しいはずなので、一息ついたできるだけ早いタイミングで記録をつけておく。(実際の患者さんではできませんから)頭の中で何度も何度も手技をシュミレーションしてみる。こんな努力があなたの手技をレベルアップさせます。ぜひ取り組んでみてください。
(編集長)
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2024年度の専攻医登録が始まります!
すでにご存知かもしれませんが、2024年4月開始の専門研修プログラムの専攻医登録が11月1日(水)から始まります。
昨年は12月1日からの登録開始でしたから1か月前倒し(と言っても一昨年に戻っただけですが)になっていますので、勘違いしないようにご注意ください。
手続きとして、まず専門医機構のサイトで専攻医登録(アカウントの取得)をします。それから希望の専門研修プログラムに専攻医登録サイトから応募します。研修先での面接等の選考を経て採用が決まります。
1次募集で希望のプログラムに採用されなかった時は2次募集で別のプログラムに応募することに
なります。
1次募集の応募期間は11月1日から11月14日までです。
おそらく多くの研修施設では、例年同様に面接や書類の提出を行い、内定を出しているところが多いかもしれませんが、上述のように専門医機構に専攻医の登録をしてから各研修施設のプログラムに応募しないとできないシステムとなっています。J2のあなたは、よく確認して早めに登録をしてください。
さて、ここで水戸済生会の専門研修についても紹介させてください。
当院は422床の総合病院で、救命救急センター(3次救急)を有するため、ドクターカーやドクターヘリの基地病院としての役割や、茨城県立こども病院と隣接しているため、県央・県北の総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩などを一手に引き受けています。
専門研修は内科で基幹型プログラムを有していますが、それ以外の診療科は、筑波大学をはじめとした専門研修プログラムの協力施設として、専攻医を受け入れています。
初期研修医の定員は10名で、3年連続でフルマッチしてくれています。このうち当院での内科専門研修に進むのは例年1~2名ですが、近年は他施設で初期研修を終えた専攻医も増えてきています。
水戸済生会の内科専門研修プログラム当院には、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、血液内科、総合内科、糖尿病代謝内科があります。血液内科と糖尿病代謝内科はそれぞれ常勤医が1名体制で、総合内科は院内診療科として活動しており、外来は行っていません。呼吸器内科は現在のところ不在ですが、今秋から脳神経内科とリウマチ・膠原病内科が常勤医体制になり、内科全体の診療がレベルアップしています。
このため、内科専門研修プログラムでは特に血液内科や呼吸器内科について、水戸地区を中心とした近隣の病院に連携施設となってもらい、まんべんなく症例を経験できるようにしています。
当院の内科専門研修プログラムの特徴を一言でいえば、消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格(以下、サブスペ専門医)を取得することを目指しています。
消化器内科、循環器内科、腎臓内科では施設を異動することなく、当院のみの研修でサブスペ専門医試験の受験資格を得ることができます。さらに各診療科の関連する多くの資格を取得可能です。このため、個々の希望を聞きながら希望診療科の連動研修(並行研修)を取り入れてプログラムを組んでいます。
少しでも早くサブスペシャルティの資格を取りたいあなたは、ぜひ当院の内科専門医プログラムをご検討ください。
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
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「胃腸炎」よもやま話
皆様こんにちは。消化器内科の蒼いRX²です。
「胃腸炎」の季節ですね。
「『胃腸炎』はゴミ箱診断」
「カルテに『胃腸炎』と書くな」
「下痢がない『胃腸炎』はない」
「『胃腸炎』に抗生剤使うな」……
オーベンからこんな風に言われたことはありませんか?今回は俗にいう「胃腸炎」について少し掘り下げてみます。
☆今回のポイント
① 「胃腸炎」のmimickerを押さえる!
② 「胃腸炎」は臨床像にとことんこだわる!
①「胃腸炎」のmimickerを押さえる!
mimickerとは、本来は“ものまねをする人”という意味ですが、ここでは症状がとても似ていて誤診しやすい疾患を指します。「胃腸炎」のmimickerはあまりに多すぎて書ききれないので、ここでは致死的な疾患を3つだけ挙げますので是非覚えておいて下さい。
・敗血症:特に腎盂腎炎・胆管炎
・糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
・アナフィラキシー:消化器症状の頻度は25~30%
どれも見逃したら大変なことになる疾患ですね。これらの典型的な臨床像を思い浮かべると、問診や診察で除外すべきポイントが見えてきます。
さて、これらに共通するとても重要なバイタルサインがひとつありますね……“呼吸数”です。「ん?この人胃腸炎っぽいけど、なんか呼吸が速いなぁ」と思った瞬間、ギアを入れ替えましょう。頻呼吸は急変の予兆です。迷わず血液ガスを取ってください。小児や高齢者は特に要注意です。
付け加えると、心筋梗塞の中でも特に下壁梗塞は嘔気・嘔吐を伴うことが多く「胃腸炎」と間違われやすいなので重要です。また、「女性を見たら妊娠と思え」は今も昔も変わらないクリニカルパールですが、特に異所性妊娠は常に鑑別に挙げておくことが大切です。
②「胃腸炎」は臨床像にとことんこだわる!
ではどんな条件がそろえば「胃腸炎」と呼べるのでしょうか。「胃腸炎」と呼ぶくらいなので、上部・下部消化管両方の症状が、上から下へ出てきます。つまり、「嘔気・嘔吐 → 下痢」という、この順番で出てこない限り、「胃腸炎」と呼んではいけません。
えっ順番も大事なの?と思うかもしれませんが、下痢が先行して嘔吐が後から来る疾患には虫垂炎、腸閉塞(閉塞機転より肛門側から軟便が出てくる)などが挙げられます。
また救急で超有名な林寛之先生は、ご自身の著書の中で「胃腸炎」に特徴的な臨床像を以下のように挙げられています。
・水様便がピーピー大量
・発熱や腹痛はあっても軽い(腹部所見に乏しい)
・嘔気・嘔吐が比較的強い
これらの臨床像を全て満たし、基礎疾患のない患者であれば、病歴と身体所見だけで自信をもって「胃腸炎」と診断できますので、採血やCTなど不要です(研修医の練習のためにエコーぐらい当ててあげると患者さんの満足度も上がって一石二鳥かもしれませんが)。
逆に完全に満たさないのであれば、カルテ上のプロブレムは「#胃腸炎疑い」よりも「#急性下痢症」や「#心窩部痛 #下痢 #発熱」などにしておいた方が無難です(バイアスがかかるのを避けるため)。
また血便など非典型的な症状があれば、それは絶対に「胃腸炎」ではないのでギアを入れ替えて精査すべきです。
少し長くなってしまいましたが、改めて今回の2つのポイント、
① 「胃腸炎」のmimickerを押さえる!
② 「胃腸炎」は臨床像にとことんこだわる!
これらをしっかり意識して診療にあたってください。それではまた。
<参考文献>
1) 林寛之著『ステップビヨンドレジデント4 救急で必ず出会う疾患編 Part2』羊土社
胃腸炎mimickerの表は必読です!
2) CDS勉強会資料『便通異常』林寛之先生
(蒼いRX²)
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レジナビに動画アップされてます♪ 水戸済生会の内科専門研修プログラム
レジナビFairオンライン2023 内科 ~専門研修プログラム~ が9月に開催されました。
事前のご案内が不十分でしたが、当院も9月11日に説明会を行いました。専門研修の説明会とはいえ、今までは医学生の方が多く参加してくれていたのですが、今回は今までで一番多くの初期研修医にご参加いただきました。どうも有難うございました。
レジナビのいつもパターンで前半に水戸済生会の内科専門プログラムについての紹介で、後半は現在専攻医2年目(卒後4年目)として頑張ってくれている循環器内科志望の清瀬先生も参加して、コメントしてもらいました。
その時の録画動画がレジナビのサイトにアップされているので、是非ご覧ください。
J2のあなたは、来春からの研修先を決めていると思います。もし、まだ迷っているなら一度動画をご覧になってください。
あなたがJ1で専門研修先を探しているなら、この動画の情報だけでは足りないハズです。
そこで、もしあなたが少しでもそう思ったのなら、当院の各診療科の指導医や専攻医とZoomで直接話をして、あなたの知りたい情報を手にしてください。特に診療科が決まっているあなたには、当該科の専攻医から情報収集できるようにしますので、ぜひ下記からお申し込みください。
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