専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

専門医の役割は何なのか?

2023.01.30
カテゴリー: ブログ

80歳台後半の女性。ADLは自立して、畑仕事も元気にやっている方でした。ある時、胃痛を主訴に他の医療機関を受診しました。そこで上部消化管内視鏡検査を行ったところ進行胃癌が見つかりました。

 

ところが、心電図で前壁領域の異常Q波を認め、心エコーでも同領域の壁運動低下とEF45%の収縮能の低下を指摘されました。どうやら胃痛の原因は心筋梗塞で、胃癌はたまたま発見されたようです。

 

循環器内科をやっていると、ときどきこんな症例に遭遇しますが、この患者さんは前の医療機関では「手術できない、緩和ケア病棟に入院したら」と言われたそうです。

 

本人は今では胃痛も消失し、いたって元気。認知症もなく、病状も良く理解されています。ご家族も、そんな状況で緩和ケア??と

納得できずに当院の外来にやってきました。

 

胸部レントゲンでは心不全兆候もなく、本人は以前と同様に畑仕事をやっていて、症状はありません。すでに発症から1か月以上は経過しているようです。

 

さて、あなたならこの患者さんの治療方針をどう考えますか?(循環器専門医の役割は何かという質問に置き換えて、あなたなりに考えてみてください)

おそらく心筋梗塞があると全身麻酔がかけられない、おまけに抗血小板薬を飲むから、手術の時に止めなくてはいけない、その時に心筋梗塞が悪化したらマズいでしょ。とあなたも考えるのではないでしょうか。

 

でも心筋梗塞といっても、心筋ダメージは小さくEFは正常で、日常生活に何も支障ない場合から、心不全で繰り返し入院したり、心室頻拍でICDを植え込む場合もあります。この患者さんは、心筋梗塞後も心不全症状はなく、畑仕事をやっても症状がないので、耐術能はありと考えます(もちろん心エコーとか、CTでの評価は行いました)。消化器内科と消化器外科と相談し、胃全摘を無事に終えました。もとが元気な方でしたので、退院後もADLの低下は無いようです。

 

ガイドラインに沿った診療をするのは、専門医でなくともできることですが、ガイドラインに沿った患者さんばかりではないのが実臨床です。特に高齢の患者さんでは、併存疾患があるのが当たり前ですが、「心筋梗塞だから手術できない」とか「進行胃癌だから心カテできない」と思考停止にならず、ホントに必要なことは何か?何が患者さんにとって大事なことなのかを考えて、判断していくのが専門医の役割ではないかと思うのです。

 

あくまで編集長個人の考えですが、多くの問題を抱えている患者について、おかれた条件の中で最適解を考えて出して、実行していくのが専門医の役割の一つだと思いますし、あなたにもそんな専門医になってもらいたいと考えています。

 

水戸済生会の内科専門研修では、地域の基幹病院としていろいろな背景をもった患者さんの診療を行っています。患者さんにとっての最適解を考えていく場をこれからも提供していきます。

(編集長)

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水戸済生会総合病院の専門研修

2023.01.23
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今回は当院の専門研修の概要について紹介します。

 

当院は472床の総合病院で、救命救急センター(3次救急)を有しており、ドクターカーやドクターヘリの基地病院でもあります。また、茨城県立こども病院と隣接しているため、茨城県の県央・県北地区の総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩などを一手に引き受けています。

 

専門研修は内科で基幹型プログラムを有していますが、それ以外の診療科は、筑波大学をはじめとした専門研修プログラムの協力施設として、専攻医を受け入れています。

 

 

初期研修医の定員は10名で、おかげさまでこの数年はフルマッチが続いており、このうち当院の内科専門研修プログラムに進むのは毎年1~2名です。最近では他施設で初期研修後に当院の専門研修プログラムを選択してくれる人も少しづつ増えてきて、いろいろと活気づいています。

 

ちなみに過去3年間の当院で初期研修を終えた研修医の進路は、

 

・当院の内科専門研修プログラム

・筑波大学の内科専門研修プログラム(呼吸器内科、膠原病内科、循環器内科)

・筑波大学の消化器外科、麻酔科、整形外科、産婦人科、脳外科、救急科、皮膚科

・県立こども病院、こころの医療センター、栗田病院

 

など県内の施設が多いのですが、毎年2~3名は県外の施設での研修を選択しています。

 

筑波大学の産婦人科や消化器外科に進んだ人は、当院での初期研修後にそのまま半年~1年間程度当院に在籍して症例数を稼いでから大学に行くケースが多いようです。

(編集長)

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専門診療科を決めるときに考えるべきこと

2023.01.16
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年が明けて、もう2か月もすると後輩ができることに気づいたJ1のあなた。

後輩にイイところを見せられるかという心配とともに、3年目以降の専門研修をどうするか? どこに、いつ頃見学に行こうかと、そろそろ考え出していると思います。

ほんの10か月前、初期研修が始まったばかりの頃は、目の前のことをこなすのに精いっぱいでしたが、今では少し余裕ができて、いろいろなことが見えてくるのではないでしょうか?

当院の研修医も専門研修をどうするのか悩んでいますが、もともと志していた診療科に進む人、ローテーションしてみて

興味を持った診療科に進む人、実際にローテーションしてみて当初考えていた診療科は不向きだと気付く人、といろいろあります。

以前に当院のマッチング研修医の動向を調べたことがあるのですが、初期研修開始時の希望診療科と3年目で選択した専門診療科が同じだったのは約4割でした。つまり、学生の頃に考えていた診療科はあるけれど、半分以上の人が初期研修中に悩んで悩んで診療科を決めているという感じなのだと思います。

編集長が研修医らに話すのは、どうして医師になったのか? もともと考えていた診療科をどうして選んだのか?

そこを、もう一度考えてみることを勧めています。

自分が医師になったきっかけは、実際のところ自分や家族の病気がきっかけだったり、ブラックジャックなどの漫画(意外と多い!)やドラマでカッコいいと思った、など人それぞれです。

ただ、実際の専門診療科を選ぶとなるともう少し現実的かもしれません。医学生のときと違ってローテーションしてみると、自分は不器用で手技は向かないとか、興味なかったけどすごく才能があって面白くなったとか、その診療科のリズムが合う、合わないということが分かります。他にも上級医の対応がかっこよくて無理だと思っていた患者さんを助けることができたので自分もできるようになりたい、といったことも少なからずあります。

医師という職業はとてもやりがいがありますが、決して楽な職業ではありません。どの診療科に進むとしても、それなりの覚悟は必要です。労働条件とか給料といった条件で比較することも大事ですが、損得勘定よりもリズムが合うとか、カッコイイという憧れの気持ちも大事にした方が仕事が楽しくなりますから、じっくり考えてみてください。

(編集長)

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CLTI  抗血小板療法

2023.01.09
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。今回はCLTIを含めた動脈硬化性LEAD患者に対する抗血小板療法についてまとめてみます。

 

冠動脈でも頭蓋内でも、もちろん下肢でも動脈硬化がベースにある場合には抗血小板療法が必須です。この抗血小板療法の目的は2つあって、心血管イベントの抑制と、もう一つは治療後の早期血栓閉塞予防です。つまり、全てのPAD患者は2次予防目的に、基本的に生涯にわたって抗血小板療法が必要になります。

 

特に血管内治療(EVT)でステントやステントグラフトを留置した後は、抗血小板薬を2剤併用するDAPT(Dual Antiplatelet Therapy)が行われます。もともとは冠動脈ステントで行われているものを下肢領域でも慣習として行っていて、明確なエビデンスがある訳ではありません。DAPTにすれば抗血小板作用が強くなるので、血栓性イベントは低下しますが、出血イベントが増加するので、しかし、今さら抗血小板薬を1剤だけでOKという試験は実施できないので、現在はDAPT期間をいかに短くして抗血小板薬単剤(SAPT:Single Antiplatelet Therapy)にできるか?ということが議論されています。

 

抗血小板薬の種類にはいろいろありますが、DAPTは通常アスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン)のことを指していて、アスピリン+シロスタゾールはDAPTには含めないことになっています。

 

主なデバイスのDAPT期間は以下の通り

・大腿膝窩動脈領域に対する自己拡張型ステントグラフト(バイアバーン)では、DAPT6か月が推奨

・腸骨動脈領域に対するバルーン拡張型ステントグラフト(VBX、LIFESTREAM)では、DAPT6~9か月以上が推奨

・DES(Zilver PTX、Eluvia)では、DAPT2か月以上が推奨

・DCB(IN.PACT、Lutonix、Ranger)では、DAPT1か月以上が推奨

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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新年明けましておめでとうございます

2023.01.02
カテゴリー: ブログ

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

このブログの読者は年末年始も当直や日勤で、お正月って何?という方ばかりかと思います。コロナに加えて、インフルエンザも徐々に増えていて、毎日発熱患者の対応に追われているのではないでしょうか。大変お疲れ様です。

 

編集長は大みそかと元旦はお休みをいただきましたが、病棟や発熱外来、コロナ病棟など、例年となんら変わらず病院にいる年末年始です。

 

さて、このブログは水戸済生会の専門研修を紹介するのが一番の目的ですが、当院は有名病院のような知名度はありませんし、大学病院のように、何でもそろっている訳ではありません。

 

でも、専門医取得を目指すあなたにとっては、自分が経験できる症例数や、自分で実際に行う手技の多さと多様さ、そして働く環境という点から考えると、当院はすごく掘り出しものだと思っています。

 

前回のブログでもご紹介したとおり、春から4名の内科専攻医が来てくれますが、彼らの期待に十分応えられるように我々も頑張りたいと思います。

 

今年もこのブログでは、少しでも早く臨床の実力を付けたいあなた、第一線でビビることなく手技をできるようになりたいあなたに、当院の専門研修の魅力や、各診療科の情報を引き続きお届けしたいと思います。

 

改めまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

(編集長)

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年末のご挨拶

2022.12.26
カテゴリー: ブログ

早いもので、もう年末ですね。

 

当院の内科専門研修を紹介する目的で2020年7月から始めたこのブログも、気づいたら約2年半たっていました。週1回のゆっくりしたペースで記事を書いて、扱うテーマもだいぶニッチなものばかりなので、正直なところ2年たっても閲覧数はあまり増えていません(笑)。でも、こうしてあなたに記事を読んでいただけるのは、編集長としてはうれしい限りです。御礼申し上げます。

 

さて、水戸済生会の内科専門研修では、今年大事件が起きました。

 

それは何かというと・・・・・、内科専門プログラムで定員いっぱいの4名の応募をいただきました♪

 

初めてのことで、内科スタッフは誰もが、とても驚きましたが、同時に応募してくれた4名の期待に応えて、しっかりと研修できるように気を引き締め直す必要があると改めて認識しました。

 

何度か紹介していますが、当院の内科専門研修プログラムの特徴を一言でいえば、消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得することを目指しています。

 

これは、早く自信をもって対応できるものが欲しいという専攻医のニーズに応えるものですが、同時にいろいろな状況でも活躍できる内科医になってもらえるように、さまざまな経験をしてもらうことも重要と考えています。

 

臨床の現場で活躍できる内科医を育てていけるようスタッフ一同頑張ってまいりますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

(編集長)

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CLTI  大切断(2)

2022.12.19
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回はCLTI治療の中での大切断のメリットと適応について紹介しました。今回は主にデメリットについてまとめてみます。

 

CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあることは前回も紹介しました。

 

しかし、最初はごく小さな足の傷が、大切断という大事件に発展することは患者や家族は想像だにしていないのが普通です。創治癒を得るまでに、どのくらいの期間がかかるのか、何回EVTをする必要があるのか、創傷ケアの継続の必要性、疼痛が持続してしまう可能性など、分からないことだらけで、患者や家族の事情や願い、目標とは一致しないことがほとんどです。そのため、予想されるこれらの情報を共有し,適切な意思決定を支援していくことが極めて重要になり、治療の各段階においても大切断や、場合によっては血行再建も大切断も行わない緩和医療も含めたあらゆる選択肢について話し合う必要があります。

 

そんな話をする時に知っておいた方が良い数字を押さえておきましょう。

 

<切断後の創傷治癒率>
小切断(足趾・足部切断)では追加のデブリードマンや切断は4~40%に必要。再入院率は約20%で,その大半は1ヵ月以内。

膝下切断後の一次治癒率は約60%であり,15%で膝上切断を要する.

膝上切断は最も一次治癒率が高い切断手法だが、ただし膝上切断でも術後30日で8.1%の治癒不全を認めるとの報告があり。

 

< 大切断術後の生命予後>
大切断術30日後死亡率は4~22%,大切断後5年の生命予後は30~70%。

特に低心機能症例は大切断に対する耐術能が低く、周術期死亡リスクは上昇する。

 

<切断後の歩行維持率>

膝下切断後の歩行維持率は33%,膝上切断後では0%

 

かなりショッキングな数字かもしれませんが、実際にCLTI患者さんを診ていると実感のある数字でもあります。CLTIについてはエビデンスと呼べるようなデータもまだまだ少ないのですが、今回のガイドラインには実臨床での疑問をPractical question(PQ)として取り上げています。

 

このPQはエビデンスが乏しい中で、ガイドラインを作成した委員の先生たちが臨床で患者さんと向き合いながら日々格闘しているのが分かる文章で、いろいろと良いことが書いてあります。その中でもこの大切断に関するPQは編集長としては非常に納得・共感するところがありましたので、転載させていただきます。

 

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わが国のCLTI患者は,高齢で,長期間透析によるアミロイドーシスによって手の巧緻性が失われ,糖尿病網膜症によって視力低下も認められる患者が多いため,義足装着が困難な患者も多く,その結果諸外国の報告に比較して歩行維持率は低い傾向にある.したがって若年者の事故や腫瘍切除後の患者のように,大切断術後に義足をつけて歩行が可能であるとの考え方は,わが国のCLTI患者においては当てはまらない.このように歩行機能が失われる可能性が高くなることや,創離開や周術期合併症があるため,安易に大切断を選択できない.透析患者において大切断を選択し大切断によって歩行機能が失われると,外来透析クリニックへの通院が困難になり,透析ができる施設へ入所するなど患者の社会的な環境が大きく変化する.大切断によって在宅での生活が失われる可能性も十分考慮する必要がある.したがって患者が在宅での生活を強く希望する場合には,創傷と付き合いながら疼痛管理と感染制御などの緩和医療を在宅で行うということも,わが国においては選択する場合もある.(ガイドラインのPQ10より転載)

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(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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CLTI  大切断(1)

2022.12.12
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。

 

今まではCLTIの評価や血行再建、創傷治療に関して紹介してきましたが、CLTIでは大切断の話題は避けて通れません。もちろんCLTI治療の第一選択は血行再建ですが、切断も重要な治療の選択肢になります。決して切断は治療の失敗ではないのです。もちろん切断を決めるのは治療する我々も容易なことではありませんが、患者としても簡単に受け入れられるわけがありません。しかしそのメリット、デメリットを整理しておくことは重要で、ガイドラインでも一つのセクションを設けて大切断について記載しています。

 

まず、言葉の定義ですが、ここでいう大切断とは「大切断=踵(かかと)がなくなる切断」と考えてください。大切断には膝下(下腿)切断と膝上(大腿)切断があります。さらに一次切断(血行再建無しで切断)と二次切断(血行再建後に切断)という言い方も使われます。

 

CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあります。もちろん可能であれば歩行維持を目的とした義肢やリハビリテーションを提供しなければいけません。

 

大切断の適応としては、以下の4つがガイドラインに記載されています。

 

①再建不可能な血管疾患を有する状態
多くの場合、血行再建術の不成功、または血行再建困難例が大切断に至る理由となります。特に足関節以下(IM)のフローが悪い時は非常に成績が悪くなります。

②非機能肢(神経損傷や脳卒中による麻痺がある状態や関節拘縮により下肢機能が著しく障害された状態)
血行再建術の適応は限定的であり,大切断は有効な治療となりえます。

 

③足部の主要な運動負荷部位の壊死または制御不能な感染
広範な壊死に創部の感染が加わると制御できない状況になりえます。中足骨レベルでの切断では治癒が見込めない壊死・感染の拡がりや骨髄炎・深部感染症,踵を含む広範な壊死では大切断を考慮します。

④重篤な併存疾患や限られた生命予後しかない状態に対し、回復まで長い期間を要するハイリスク手術の回避
重篤な併存疾患を有する患者や長期生存が見込めない患者においては大切断が適応となる場合があります。血行再建を繰り返し、創治癒を得るまで長期の入院が求められることがしばしばありますが、これは著しくQOLを低下させます。これに対して一次大切断は早期に創傷ケアを必要とする状態を回避することで入院期間を短縮することができます。

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

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CLTI  創傷治療(5)

2022.12.05
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。

 

CLTIの創傷治療は8項目に分けて考えていきますが、実は最後の⑧再発の予防/予防的フットケアについては、ガイドラインでは触れられていません。と言っても大事なところなので、当院の経験も踏まえて少しだけ触れておこうと思います。

 

まずは、CLTI患者の下肢の予後について、ガイドラインには患側下肢と対側下肢に分けて記載されています。

 

患側下肢では血行再建術後の下肢大切断リスクはとくに術後1年以内に集中しており、それ以降は比較的低率にとどまりますが、術後1~3年の大切断(踵が無くなる下腿切断もしくは大腿切断)の累積発生率は10~20%程度報告されています。EVTと外科的血行再建術を比べると,最終的な大切断リスクや総死亡リスクは同等とする報告が多いようですが、創傷治癒は外科的血行再建術の方が早期かつ高率に達成されやすいとされています。

 

そして、血行再建術後にいったん創傷治癒が得られてもCLTIが再発することがあります。CLTI再発率は創傷治癒後1年で2~8%,2年で6~13%,3年で9~17%とされており、創傷治癒が得られた後もCLTI再発のリスクに注意して観察する必要があります。

 

片側性にCLTIを呈する患者が、経過中に対側肢にCLTIを発症することは珍しいことではありません。術後2年の対側CLTIの累積発症率は20%で、本邦からも対側肢のCLTI発症率は1年で20.8%,3年で44.8%,5年で54.2%であったとの報告があります。

 

つまり、CLTI患者では患側下肢も対側下肢も十分に注意してフォローする必要があることを認識しておくことが重要です。ただ、日常の外来ではなかなか靴下を脱がせて両足の確認は難しいのが実情です。そうであれば形成外科の受診日と同じ日にするとか、フットケアに関心のある看護師さんを味方につけるなどの工夫が役に立ちます。ちょっと古いのですが、当院でのフットケアの間隔は下記を参考にしてやっています。

 

 

患者さんには、創治癒を得ても、足の状態を確認することや、もし傷ができた時は早めに受診するように繰り返し伝えています。また靴の履き方は重要で、サンダルではなくて踵を合わせて靴ひもで甲をしっかりホールドするように履くことが傷を作りにくくします。すでに胼胝(べんち)があるなら、インソールを作ることを病院に出入りしている装具士さんに相談してみるのが良いと思います。

 

フットケアについては、日本フットケア・足病医学会が中心となって活動しており、2022年9月に学会のガイドラインが上梓されています(編集長はまだ読めていません)。

学会のサイトはこちら

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

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2023年度の専攻医登録が始まります!

2022.11.28
カテゴリー: ブログ

すでにご存知かもしれませんが、2023年4月開始の専門研修プログラムの専攻医登録が12月1日(木)から始まります。

専門医機構のページはこちら

 

昨年は11月1日からの登録開始でしたから1か月遅れで、だいぶヤキモキしたのは編集長だけでしょうか?

手続きとして、まず専門医機構のサイトで専攻医登録(アカウントの取得)をします。それから希望の専門研修プログラムに専攻医登録サイトから応募します。面接等の選考を経て採用が決まります。

 

1次募集で希望のプログラムに採用されなかった時は2次募集で別のプログラムに応募することになります。

1次募集の応募期間は12月1日から12月14日です。

 

おそらく多くの研修施設では、例年同様に面接や書類の提出を行い、内定を出しているところが多いかもしれませんが、上述のように専門医機構に専攻医の登録をしてから各研修施設のプログラムに応募しないとできないシステムとなっています。J2のあなたは、よく確認して早めに登録をしてください。

 

さて、ここで水戸済生会の専門研修についても紹介させてください。

 

当院は422床の総合病院で、救命救急センター(3次救急)を有するため、ドクターカーやドクターヘリの基地病院としての役割や、茨城県立こども病院と隣接しているため、県央・県北の総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩などを一手に引き受けています。

 

専門研修は内科で基幹型プログラムを有していますが、それ以外の診療科は、筑波大学をはじめとした専門研修プログラムの協力施設として、専攻医を受け入れています。

 

初期研修医の定員は10名で、3年連続でフルマッチしてくれています。このうち当院での内科専門研修に進むのは例年1~2名ですが、近年は他施設で初期研修を終えた専攻医も増えてきています。

 

水戸済生会の内科専門研修プログラム当院には、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、血液内科、総合内科、糖尿病代謝内科があります。血液内科と糖尿病代謝内科はそれぞれ常勤医が1名体制で、総合内科は院内診療科として活動しており、外来は行っていません。神経内科や膠原病内科は非常勤医師による外来のみで、呼吸器内科は現在のところ不在です。

 

このため、内科専門研修プログラムでは特に血液内科や呼吸器内科、神経内科について、水戸地区を中心とした近隣の病院に連携施設となってもらい、まんべんなく症例を経験できるようにしています。

 

当院の内科専門研修プログラムの特徴を一言でいえば、消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格(以下、サブスペ専門医)を取得することを目指しています。

 

消化器内科、循環器内科、腎臓内科では施設を異動することなく、当院のみの研修でサブスペ専門医試験の受験資格を得ることができます。さらに各診療科の関連する多くの資格を取得可能です。このため、個々の希望を聞きながら希望診療科の連動研修(並行研修)を取り入れてプログラムを組んでいます。

 

少しでも早くサブスペシャルティの資格を取りたいあなたは、ぜひ当院の内科専門医プログラムをご検討ください。

(編集長)

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