専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

肺高血圧の定義

2025.10.27
カテゴリー: 循環器

日本循環器学会では各種のガイドラインを出しており、2025年春に改訂版としていくつかのガイドラインがリリースされていますが、その中から8月までVTEについて紹介してきました。今回からその続きで肺高血圧についても紹介していきます。

 

以前も紹介した通り、VTEと肺高血圧のガイドラインは、それまでの「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」、「肺高血圧症治療ガイドライン」そして「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplasty(BPA)の適応と実施法に関するステートント」の3 つを統合して新たに改訂されたものです。

 

これは、肺高血圧症に対する薬物治療やBPAのエビデンスが多数出てきて、診断・治療の内容が大きく変わっていることを受けてのことです。編集長としては、ちょっと苦手な領域なのですが、役立ちそうなところを順不同で紹介していきます。

 

******************************

さて、最初は肺高血圧の定義の確認です(何ごとも定義がどうなっているのかを把握しておかないと、話がだんだん分からなくなります)。

 

肺高血圧(PH)は、「右心カテーテル(RHC)検査により測定した安静仰臥位の平均肺動脈圧(mPAP)>20 mmHg」と定義されています。

 

昔の定義では>25mmHgだったのですが、2022年に改訂された欧州のガイドラインに採用され、現在の世界標準となっています。

 

また、ご存じのようにPHは左心疾患や心拍出量(CO)の増加、胸腔内圧上昇などに影響されます。このため、mPAP上昇から区別するために、肺血管抵抗(PVR)と肺動脈楔入圧(PAWP)も定義に含めることが必要となるので、

ガイドラインではPVR>2 Wood単位、PAWP≦15 mmHgと定義されています。

逆に、例えば純粋な左心不全でPHを来している場合(≒後毛細血管性肺高血圧症:pcPH)は、mPAP>20mmHg、PVR≦2 Wood単位、PAWP>15mmHgということになります。

 

さらに、運動でもmPAPは上昇しますが、正常では運動中のmPAPは,COが10 L/分において30mmHgを超えない,またはmPAP/COの傾きが3 mmHg/L/分を超えないとされるので、運動時PHは、運動時におけるmPAP/COの傾きが3 mmHg/L/分を超える場合と定義されています。

 

運動時の血行動態には年齢依存性があり、高齢者は若年者よりもmPAP/COやPAWP/COの傾きが急峻です。また運動時PHは、労作時息切れ患者、心血管系疾患における予後不良、膠原病、特に全身性強皮症(SSc)患者のPH発症や生命予後と関連しています。

 

(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)

(編集長)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

◆病院見学に来ませんか?

当院の研修医がどんなふうに仕事しているのか?

どんな生活を送っているのか?

あなたの目で確かめてみてください!

病院見学をご希望の方は、下のフォームからご連絡ください。

なお、病院見学がむずかしい時は、Zoomで個別説明会を行っていますので、

下のフォームに「Zoom希望」と記入してご連絡ください。

病院見学の申し込みはこちらから