専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

大動脈弁狭窄症(重症度分類)

2023.05.22
カテゴリー: 循環器

今回はASの重症度分類についてです。

 

まず、ASに基づくと考えられる自覚症状を有するか否かで、症候性と無症候性に分類されますが、症候性の場合は無症候性以上に予後不良であることが分かっています。つまり重症度がより高いと判断する必要があります。

 

そして通常では、ASの重症度評価は心エコーで行います。その際の指標は、大動脈弁口面積(AVA)と大動脈弁最大血流速度(Vmax)、大動脈弁平均圧格差(mPG)の3つを覚えればOKです。

 

まずAVAから。覚えておくべき数字は「1㎠」「0.6㎠」です。正常のAVAは3~4㎠ですが、≧1㎠なら軽症もしくは中等症<1㎠なら重症となります。さらに<0.6㎠を超重症と呼んでいます。なお、AVAを体表面積(BSA)で補正した値(AVAI)が<0.6㎠/㎡も重症と定義されますが。無理に覚えておかなくても構いません。

 

ここでAVAの弱点を押さえおく必要があります。AVAの求め方には。エコーで短軸画面をトレースする「プラニメトリー法」と、「連続の式」と呼ばれる左室流出路血流速から求める方法があります。プラニメトリー法は石灰化のため正確にトレースすることは困難で、わずかにトレースが異なるだけで、値が全然違ってきます。連続の式から求める方法はパルスドプラ法を用いますが、正確な流速の評価にはドプラビームと血流の方向が一致することが大事です。心尖部から計測することが多いものの、他の方向からもしっかり確認する必要があります。

 

次にVmaxとmPGについて。連続波ドプラ法によって大動脈弁最大血流速度、最大圧較差(maxPG)、mPGを求めます。ただし、計測が簡便なものの大動脈弁圧較差は弁通過血流量に依存するために、血流量低下(前負荷減少や左室サイズ減少および機能低下)により AS は高度であるにもかかわらず圧較差が少なかったり,血流量増加(甲状腺機能亢進・大動脈弁逆流の合併や貧血など)により AS は軽度であるにもかかわらず圧較差が大きかったりします。そこでAVAと合わせて評価する必要があります。

 

VmaxとmPGでおさえておくべき数字は、Vmaxの「4.0m/sec」と「5.0m/sec」mPGでは「40mmHg」と「60mmHg」です。重症ASはVmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHg、超重症ASはVmac≧5.0、mPG≧60と定義されます。

 

ただし、AVA<1.0㎠でもVmax<4.0、mPG<40mmHgの低圧格差を示す低流量低圧格差(low flow, low gradient)のASがあり、ここが混乱してしまうところです。この点については次回に紹介します。 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

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