
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
右室梗塞
STEMIが来た時は、患者さんを急いでカテ室に搬入し、さっさと再潅流を得たいところです。でも、STEMIは刻々と状況が変わりやすく、ERで待っている間にVTやVfを来すことがあります。そんな時は当然除細動ですし、もし心源性ショック、肺水腫となっていれば、先に挿管が必要になります。こう言った命に直結するイベントに適切に対処して、患者さんが元気になるのが循環器医の醍醐味の一つです。今回はSTEMIの中でも、取扱いに注意が必要な右室梗塞についてまとめてみようと思います。
右室梗塞は右冠動脈の心筋梗塞のことではありません。右冠動脈の近位部が閉塞することで、左室の下壁領域が壊死に至るだけでなく、右室の壁運動が障害された結果、右室から肺動脈への拍出が出来なくなり、左室への潅流が減って血圧低下に至るものです。下壁や後壁梗塞の25%~50%に合併するとされています。
STEMIの時に血圧低下に至るのは、通常は左室の収縮が低下して肺うっ血を来すパターン(心原性ショック)が多いのですが、右室梗塞では肺動脈への血流が低下するので、肺うっ血を来さずに、頸静脈の怒張を来します。
と言うことで、もしあなたが下壁の心筋梗塞患者に遭遇した時に、
①血圧が低く
②SatO2が下がっていない(=肺うっ血がない)
この2つがあれば、右室梗塞を疑いましょう。
身体所見としては、頸静脈怒張の有無を短時間で確認し、心電図では下壁梗塞(Ⅱ、Ⅲ、aVF)でのST上昇を確認したら、次にV1のST上昇がないかを確認します。V1のST上昇は右冠動脈近位部の閉塞を示すからです。さらにV4の電極を、胸骨を挟んで反対側に付け替えて(V4Rと言います)心電図を記録し、ST上昇があれば確実です。
さて、混乱しやすいのは治療です。
心筋梗塞ですから、速やかにPCIなど再灌流療法を行うのは言うまでもありませんが、心筋梗塞なら硝酸薬とか、肺うっ血を伴っていれば利尿剤を使いたくなりますよね。しかし右室梗塞では利尿薬や硝酸薬、モルヒネを使用するのはアブナイです。前負荷が低下すると、さらに血圧が下がるからです。逆に生理食塩水などで輸液をどんどん入れる必要があります。そして右室から肺動脈への拍出を増加させる目的でカテコラミン(ドパミン、ドブタミン)を使用します。(閉塞性ショックの対応)
初期対応を間違えずに行えば、PCI後には比較的速やかに血圧が落ち着くことがほとんどですが、遷延する時はIABPやECMOの使用を考えます。
(編集長)
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心室中隔穿孔
80歳台の女性が呼吸困難感を主訴に救急搬送されてきました。数日前から症状が悪化してきたとのこと。胸部レントゲンでは両側にうっ血と胸水を認めました。心電図では前胸部誘導で異常Q波とST上昇がありましたが、採血検査ではトロポニンが上昇しているものの、CKとCK-MBは正常範囲でした。心エコーも前壁~中隔のAkinesisがあり、心嚢液はありませんでした。
発症時期は分かりませんが、数日から1~2週間前発症のSTEMIに伴う心不全と判断し、血行再建は急がずに、まずは心不全のコントロールを付ける方針とし、NPPVとフロセミドの静注を開始。利尿も順調に得られて安心していたのですが、翌日の胸部レントゲンでは思いのほか改善していませんでした。いや、レントゲンだけ見ると、むしろ悪化していました。
さて、何が起きたのでしょうか?
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編集長は心音を聴取する時は、心尖拍動の触知をするのをほぼルーチンにしているのですが、この時は心尖部から胸骨寄りでThrillを触れました。また汎収縮雑音も聴取しました。心エコーを改めてやってみると、こんな画像が得られました。
そう、STEMIの重篤な機械的合併症の一つである心室中隔穿孔(VSP:Ventricular septum perforation)でした。入院時にはThrillは無かったので、おそらく入院後にVSPを発症したのだと推察しました。(画像は心尖部からの四腔像)
VSPをまとめておくと・・・、
STEMIでもNon-STEMIでもVSPは発症しますが、再潅流療法が行われるようになってからは頻度は非常に少なく、STEMI患者で0.21%、Non-STEMI患者では0.04%とされています。しかし発症して手術をしなければ、2か月以内の死亡率が90%と報告されています。
一方で手術をしたとしても、死亡率は50%を超えていて、ショックを呈する患者では手術死亡が81~100%という報告もあります。最近では経皮的に閉鎖デバイスを用いたメタ解析がありますが、それでも死亡率は32%と高率であることには変わりありません。
発症のタイミングは24時間~2週間と言われていて、前壁梗塞でも下壁梗塞でも起こり得ます。症状は軽い息切れの悪化からショックまで非常に幅広いようです。治療は前述の通り外科的修復もしくは経皮的閉鎖デバイスですが、手術時期については一定の見解はないものの、梗塞領域が線維化する数週間後に施行した方が良いとの意見が多いようです。
冒頭の症例は、高齢で認知症もあったことなどからご家族と何度も相談した結果、手術は行いませんでした。あなたも心不全を合併したSTEMI患者で予想と違う経過の時は、頻度は低いもののこのような合併症が無いか考えてみてください。
(参考文献:JACC CardiovascInterv 2019; 12:1825、 EuroIntervention 2016;12:94)
(編集長)
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急性心筋梗塞の病型分類
80歳台の女性が胸痛で救急搬送されてきました。ADLは自立していますが、糖尿病の既往があり、1週間前から下腿浮腫に気づいており、2日前から労作時の息切れもあったそうです。この日は夜間就寝中に突然の胸痛を自覚したとのことでした。胸部レントゲンでは両側に肺うっ血と胸水を認め、心不全の増悪で間違いなさそう。ところが心電図は下壁誘導でわずかですがST上昇あり。トロポニンも陽性でエコーでも下壁の動きは低下していたため、STEMIの診断で緊急PCIとなりました。
PCIをやってみると、前下行枝と回旋枝に狭窄病変はあるものの閉塞病変はありませんでした。下壁でST変化があったことから回旋枝病変に対してPCIを行うこととし、病変部をバルーンで拡張したものの硬い病変で、血栓が関与している印象はなし。ステントを留置して、無事終了しましたが、その後の心筋逸脱酵素の上昇も大したことない・・・・。なんか、いつものSTEMIとはちょっと印象がちがっている症例でした。
実はこの症例は、おそらくType2心筋梗塞と呼ばれるものですが、あなたは心筋梗塞に病変分類があることをご存じでしょうか?
前回の記事でも紹介した2018年のUniversal definitionでは、心筋梗塞の原因によりType 1~5に分類されています。
Type 1:アテローム性動脈硬化に併発した血栓症によるもの。
Type 2:心筋への酸素の需要と供給のミスマッチによるもの。
Type 3:心筋バイオマーカー未評価の状況下での心筋虚血による突然死。
Type 4a:PCI手技関連によるもの。
Type 4b:ステント血栓症によるもの。
Type 5:冠動脈バイパス(CABG)手技関連によるもの。
実際のところType3以下はあまり使うことはないのですが、Type2心筋梗塞はあなたも遭遇するかもしれません。
Type2心筋梗塞とは、具体的には冠動脈狭窄病変における酸素需給のインバランス,冠動脈攣縮,冠動脈解離などにより心筋壊死を伴う心筋傷害を認めるもののことを指しています。
冒頭の症例は、心不全のため酸素需要が増大したものの、冠動脈の狭窄病変があるため酸素の需要と供給にミスマッチが生じて起こったと考えられます。よくある冠動脈内の血栓が関与していない心筋梗塞のPCIは時々経験するので、決して珍しい訳ではありませんので、知っておいた方が良いと思います。
参考文献:Circulation. 2018;138:e618–e651
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急性心筋梗塞の診断基準
ERに搬送されて来た70歳代の男性。主訴は胸痛。発症から約3時間で来院しました。心電図は下壁誘導でST上昇あり。緊急PCIで右冠動脈の閉塞を認めて、ステント留置で無事に再灌流に成功しました。よくあるSTEMIの症例です。ところがPCI終了後にERで初療を行ってくれた初期研修医からこんな質問がありました。
「来院時の採血でWBCもCPKもLDHもトロポニンも全く正常でしたけど、こんなことってあるんですか?」
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答えはもちろん「あり」です。STEMIでも発症から早ければ血液検査が正常ということは当然あります。
でも現場でやっていると、「WBCも何も上昇していない、いいのかな?」とか「循環器の先生を呼んじゃったけど良かったのかな?」などと、急に不安になった経験があなたにもあるはずです。後から考えれば何てことないのですが、臨床とはそういうものです。なので心配しなくて大丈夫です。
でも、自分なりに症例を振り返り、次に同じような状況に遭遇した時に自信をもって対応できるように経験を積み上げていくことが大事です。
では、この症例に関連して質問です。急性心筋梗塞の診断基準は何でしょう?
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意外とこの質問に自信をもって答えられる専攻医は少ないものです。なので、この機会に是非とも覚えてください。
急性心筋梗塞の診断基準は2012年に欧州心臓病学会と米国心臓病学会からUniversal definitionなるガイドラインが出されています。これには、トロポニン上昇に加えて、
- 心筋虚血による症状
- 心電図による新たなST-T変化、新たな左脚ブロックの出現
- 心電図にて異常Q波出現
- 画像診断にて新たな心筋のバイアビリティ喪失、新た壁運動異常
- 冠動脈血管造影や剖検での冠動脈内の血栓の同定
上記5つのうち1つ以上を満たすと定義されています。
このUniversal definitionが覚えにくいもしくは覚えたくない、という場合は以前に用いられていたWHOの診断基準が簡単です。
それは
・虚血による胸部症状
・心筋梗塞に合致する心電図変化
・心筋逸脱酵素の上昇
このうち2つ以上あれば急性心筋梗塞と診断します。
疾患概念や疾患の定義、診断基準は変わるものですが、遭遇頻度の高い疾患については、現場で経験した時に確認してみると頭に入りやすくなります。
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日循で発表してきました♪
先週のことですが、日本循環器学会学術集会が福岡で開催され、当院の本田先生がポスター発表をしてきました。
昨年まではコロナの影響でオンライン中心の開催になっていましたが、久しぶりのリアル開催で、なおかつオンデマンド配信を見ると専門医更新の単位もとれるので、地方にいる循環器内科医には有難い開催形式だったと思います。
福岡ということもあり、編集長は初日の朝に茨城空港から直行便で福岡へ。福岡は夜でも上着がいらないほどの暖かさと天気のよさで快適でした。2日間いて、ちゃんと勉強してきました。やはり国内最大規模の循環器学会ですので参加者も多く、心不全療養指導士など医師以外のセッションも非常に盛り上がっていました。
学会2日目の午前に本田先生の発表がありました。内容は心房細動に対するアブレーションに関するものでしたが、似た内容の論文が最近発表されていて、別の結果だったのですが、その点に関する質問も無難にこなしていました。本田先生、お疲れ様でした。
日常臨床の忙しい中で発表の準備をするのは、なかなか大変なものですが、今後はもう少し学会発表を増やしていきたいと思っています。
(編集長)
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STEMIか?解離か? CTはいつ撮るべきか
50歳代の男性が胸痛で搬送されてきました。心電図は下壁誘導(Ⅱ、Ⅲ、aVF)でST上昇が見られます。
バイタルは血圧170/100mmHg、心拍数86bpm、体温36.5℃、呼吸数20回/分。STEMIと診断して、緊急PCIの準備に取り掛かりました。そんな最中に、「A型解離の可能性は大丈夫かな?」「CTどうする?」と誰かが言いました。
こんな時、あなたならどうしますか?
確かに、急性A型大動脈解離では胸痛の訴えが多いですし、右冠動脈を巻き込むことが多く、下壁梗塞の心電図を呈します。では、下壁梗塞とか、胸痛を訴える患者さんは、A型解離を鑑別するために、全員に造影CTを施行するべきなのでしょうか?
一方で、STEMIに比べれば、急性A型大動脈解離は頻度がずっと少ないですし、CTを撮ればPCI開始までの時間が長くなり、せっかちな循環器医は待ってくれません。
こんなときに参考になるのが、大動脈解離診断リスクスコア(ADD-RS : Aortic DissectionDetection Risk Score)です。(Circulation 2011; 123:2213-8)
3つのカテゴリーがありますが、各カテゴリーの中で1つ以上該当するものがあれば1点とし、0点から、最高3点となります。0点は低リスク、1点は中リスク、2点以上は高リスクとします。
このスコアでは、症状も重要で、裂けるような痛みと表現されています。(ちなみにSTEMIでは胸痛と言っても、「象に乗られたような、胸全体が苦しい感じ」という表現に近くなります。ですので、胸痛と一言で片づけないで、良く症状を聞き出しましょう)
さらに、このADD-RSとDダイマーをあわせて、大動脈解離を除外していくアルゴリズムも提唱されています。(Circulation.2018; 137:250-8.)
「解離の可能性は?」「CTを撮るべきか?」 悩んだ時は参考にしてみてください。
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循環器内科の専門研修2023
もしあなたが、循環器内科に興味があって
・STEMI患者のPCIをできるようになりたい
・アブレーションで不整脈を治したい
・早いうちからTAVIもMitraclipもやりたい
・PADやAortaなど心臓以外もやってみたい
これらいずれかに当てはまるなら、この先を読む価値があります。そして医局に入らずに循環器専門医資格を取りたいと思っている
なら、なおさら最後まで読んでください。
ご存じの通り、循環器領域は日中でも夜でもERに最も呼ばれる診療科の一つで、決して楽な診療科ではないかもしれません。ですが、自分の治療で患者さんがみるみる良くなることも実感できる診療科でもあります。さらにデバイスの進歩が目覚ましく、治療戦略が次々にアップデートされ、それだけやりがいのある領域です。水戸済生会の循環器内科は「地域完結」をキーワードの一つに掲げて、循環器領域の大部分の診療をカバーしています。
もう少し紹介すると、水戸済生会の循環器内科はPCIではもともと県内で有数の施設でしたが、さらにカテーテルアブレーションやICD、CRTにも早くから取り組んでおり、今ではアブレーションも県内有数の症例数となっています。また循環器内科医が関わることの多いPADに対するEVTも県内トップの症例数で、さらに心外との連携が密で、大動脈瘤、大動脈解離へのステントグラフトや大動脈弁狭窄症に対するTAVI、そしてMitraclipも順調に症例を重ねています。
新しいデバイスは症例数の多い施設から導入されることが多いので、あなたが専門研修施設を選ぶ時は当然考慮すべきポイントです。さらに最近では、新しいデバイスの術者になるための要件として、ほとんどの場合で循環器専門医資格が必要になっています。循環器専門医を取得したうえで、他の循環器領域の資格であるCVIT専門医や不整脈専門医などを取得するシステムになっています。
つまり、循環器専門医を持っていないと、いくら経験や技術はあってもその次の資格が取得できないようになっているのです。あなたが循環器内科を考えているなら、最初にすべきことは内科専門医を最速で取得し、最短で循環器専門医資格を得ることです。そして、そんな時に当院は有利です。
先ほど紹介したように主要な疾患をカバーしていることに加え、県立こども病院が隣接しているため成人の先天性心疾患症例も含めて当院は症例数も多く、異動することなく1つの施設で専門医取得のための症例が全部経験できるのです。そして専門医資格を取得後も、PCIをはじめとした各種の施設認定を受けているので循環器領域の各種の資格取得もスムーズです。しかも、大学の医局とは関係なく専門医資格を取得できるのが当院の強みです。
当院の内科専門医プログラムから循環器領域をじっくりと腰を据えて、技術の取得と経験症例数の確保に専念できる環境ですので、あなたも当院での内科専門医プログラムから循環専門医取得を目指してください。
ご質問など、どんな小さなことでも遠慮なく、下記の問い合わせフォームからご連絡ください!
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CLTI 抗血小板療法
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。今回はCLTIを含めた動脈硬化性LEAD患者に対する抗血小板療法についてまとめてみます。
冠動脈でも頭蓋内でも、もちろん下肢でも動脈硬化がベースにある場合には抗血小板療法が必須です。この抗血小板療法の目的は2つあって、心血管イベントの抑制と、もう一つは治療後の早期血栓閉塞予防です。つまり、全てのPAD患者は2次予防目的に、基本的に生涯にわたって抗血小板療法が必要になります。
特に血管内治療(EVT)でステントやステントグラフトを留置した後は、抗血小板薬を2剤併用するDAPT(Dual Antiplatelet Therapy)が行われます。もともとは冠動脈ステントで行われているものを下肢領域でも慣習として行っていて、明確なエビデンスがある訳ではありません。DAPTにすれば抗血小板作用が強くなるので、血栓性イベントは低下しますが、出血イベントが増加するので、しかし、今さら抗血小板薬を1剤だけでOKという試験は実施できないので、現在はDAPT期間をいかに短くして抗血小板薬単剤(SAPT:Single Antiplatelet Therapy)にできるか?ということが議論されています。
抗血小板薬の種類にはいろいろありますが、DAPTは通常アスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン)のことを指していて、アスピリン+シロスタゾールはDAPTには含めないことになっています。
主なデバイスのDAPT期間は以下の通り
・大腿膝窩動脈領域に対する自己拡張型ステントグラフト(バイアバーン)では、DAPT6か月が推奨
・腸骨動脈領域に対するバルーン拡張型ステントグラフト(VBX、LIFESTREAM)では、DAPT6~9か月以上が推奨
・DES(Zilver PTX、Eluvia)では、DAPT2か月以上が推奨
・DCB(IN.PACT、Lutonix、Ranger)では、DAPT1か月以上が推奨
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 大切断(2)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回はCLTI治療の中での大切断のメリットと適応について紹介しました。今回は主にデメリットについてまとめてみます。
CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあることは前回も紹介しました。
しかし、最初はごく小さな足の傷が、大切断という大事件に発展することは患者や家族は想像だにしていないのが普通です。創治癒を得るまでに、どのくらいの期間がかかるのか、何回EVTをする必要があるのか、創傷ケアの継続の必要性、疼痛が持続してしまう可能性など、分からないことだらけで、患者や家族の事情や願い、目標とは一致しないことがほとんどです。そのため、予想されるこれらの情報を共有し,適切な意思決定を支援していくことが極めて重要になり、治療の各段階においても大切断や、場合によっては血行再建も大切断も行わない緩和医療も含めたあらゆる選択肢について話し合う必要があります。
そんな話をする時に知っておいた方が良い数字を押さえておきましょう。
<切断後の創傷治癒率>
小切断(足趾・足部切断)では追加のデブリードマンや切断は4~40%に必要。再入院率は約20%で,その大半は1ヵ月以内。
膝下切断後の一次治癒率は約60%であり,15%で膝上切断を要する.
膝上切断は最も一次治癒率が高い切断手法だが、ただし膝上切断でも術後30日で8.1%の治癒不全を認めるとの報告があり。
< 大切断術後の生命予後>
大切断術30日後死亡率は4~22%,大切断後5年の生命予後は30~70%。
特に低心機能症例は大切断に対する耐術能が低く、周術期死亡リスクは上昇する。
<切断後の歩行維持率>
膝下切断後の歩行維持率は33%,膝上切断後では0%
かなりショッキングな数字かもしれませんが、実際にCLTI患者さんを診ていると実感のある数字でもあります。CLTIについてはエビデンスと呼べるようなデータもまだまだ少ないのですが、今回のガイドラインには実臨床での疑問をPractical question(PQ)として取り上げています。
このPQはエビデンスが乏しい中で、ガイドラインを作成した委員の先生たちが臨床で患者さんと向き合いながら日々格闘しているのが分かる文章で、いろいろと良いことが書いてあります。その中でもこの大切断に関するPQは編集長としては非常に納得・共感するところがありましたので、転載させていただきます。
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わが国のCLTI患者は,高齢で,長期間透析によるアミロイドーシスによって手の巧緻性が失われ,糖尿病網膜症によって視力低下も認められる患者が多いため,義足装着が困難な患者も多く,その結果諸外国の報告に比較して歩行維持率は低い傾向にある.したがって若年者の事故や腫瘍切除後の患者のように,大切断術後に義足をつけて歩行が可能であるとの考え方は,わが国のCLTI患者においては当てはまらない.このように歩行機能が失われる可能性が高くなることや,創離開や周術期合併症があるため,安易に大切断を選択できない.透析患者において大切断を選択し大切断によって歩行機能が失われると,外来透析クリニックへの通院が困難になり,透析ができる施設へ入所するなど患者の社会的な環境が大きく変化する.大切断によって在宅での生活が失われる可能性も十分考慮する必要がある.したがって患者が在宅での生活を強く希望する場合には,創傷と付き合いながら疼痛管理と感染制御などの緩和医療を在宅で行うということも,わが国においては選択する場合もある.(ガイドラインのPQ10より転載)
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(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
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CLTI 大切断(1)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。
今まではCLTIの評価や血行再建、創傷治療に関して紹介してきましたが、CLTIでは大切断の話題は避けて通れません。もちろんCLTI治療の第一選択は血行再建ですが、切断も重要な治療の選択肢になります。決して切断は治療の失敗ではないのです。もちろん切断を決めるのは治療する我々も容易なことではありませんが、患者としても簡単に受け入れられるわけがありません。しかしそのメリット、デメリットを整理しておくことは重要で、ガイドラインでも一つのセクションを設けて大切断について記載しています。
まず、言葉の定義ですが、ここでいう大切断とは「大切断=踵(かかと)がなくなる切断」と考えてください。大切断には膝下(下腿)切断と膝上(大腿)切断があります。さらに一次切断(血行再建無しで切断)と二次切断(血行再建後に切断)という言い方も使われます。
CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあります。もちろん可能であれば歩行維持を目的とした義肢やリハビリテーションを提供しなければいけません。
大切断の適応としては、以下の4つがガイドラインに記載されています。
①再建不可能な血管疾患を有する状態
多くの場合、血行再建術の不成功、または血行再建困難例が大切断に至る理由となります。特に足関節以下(IM)のフローが悪い時は非常に成績が悪くなります。
②非機能肢(神経損傷や脳卒中による麻痺がある状態や関節拘縮により下肢機能が著しく障害された状態)
血行再建術の適応は限定的であり,大切断は有効な治療となりえます。
③足部の主要な運動負荷部位の壊死または制御不能な感染
広範な壊死に創部の感染が加わると制御できない状況になりえます。中足骨レベルでの切断では治癒が見込めない壊死・感染の拡がりや骨髄炎・深部感染症,踵を含む広範な壊死では大切断を考慮します。
④重篤な併存疾患や限られた生命予後しかない状態に対し、回復まで長い期間を要するハイリスク手術の回避
重篤な併存疾患を有する患者や長期生存が見込めない患者においては大切断が適応となる場合があります。血行再建を繰り返し、創治癒を得るまで長期の入院が求められることがしばしばありますが、これは著しくQOLを低下させます。これに対して一次大切断は早期に創傷ケアを必要とする状態を回避することで入院期間を短縮することができます。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
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