専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
手術記録は常に手術前に書け
手技を習得する時には、ただ指導医から症例を回してもらうのを待っているだけでは上手くなりません。前回の記事で紹介したように、「パフォーマンス直後に練習する」ことが方法の一つですが、他にもいろいろあります。
先日こんなことがありました。
紹介されてきた内腸骨動脈瘤の症例。CTを見ると総腸骨動脈の分岐角が難しく、かつ瘤の中枢はネックがほとんどなく、総腸骨動脈から外腸骨動脈にかけてステントグラフトを使用した方が良い症例でした。
「治療戦略はどうする?」と聞かれた専攻医は、「末梢をコイルで塞栓。近位はステントグラフトを用います」と正しい戦略を答えてくれました。
「では、アプローチは?シースサイズは?」と尋ねると「・・・・」
やったことがある人は分かると思いますが、腸骨動脈に留置するステントグラフトはサイズによりシースの太さが変わります。大きいサイズを使うなら通常用いられる6Frではなく、7Frや8Frを選択する必要があります。また、腸骨動脈の屈曲や蛇行があると通過できない、血管損傷をきたしてしまうので、同側からアプローチが無難です。一方、内腸骨動脈瘤の末梢の操作は対側からクロスオーバーさせた方がラク。
となると、最初に対側から6Frロングシースを挿入して、シースごとクロスオーバーさせたうえで末梢のコイルもしくはプラグでの塞栓をしっかり行い、近位は同側から8Frシースを挿入してステントグラフトを留置するという両側アプローチが必要になります。使用するシースだけでなく、屈曲した腸骨動脈に通過させるためのサポート力の強いガイドワイヤー、枝の分岐角度をみて透視装置のワーキングアングルを決めておく、末梢を塞栓するコイルのサイズ決めなど術前にやることはたくさんあります。手技が始まってから考えるのは遅すぎますし、患者さんに対してきわめて失礼と言えるでしょう。
このブログで紹介している「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」でも、「手術記録は常に手術前に書け」とあります。循環器領域ではTAVIもMitraClipも術前に入念な計画を立てて、上手くいかなかったときのプランBだけでなく、プランCまで準備して行っています。これは循環器の手技に限らず、内視鏡などでも同様ですね。あなたも、術前に手技記録を書きあげてから手技に臨んでください。
(編集長)
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