専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その9(2021ガイドラインの変更点)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年改訂版が日本内分泌学会からこの秋にリリースされました。
この改訂ではアルドステロンの測定法も、レニンの測定法にも変更点があり、これに伴ってカットオフ値も変更されています。今回はちょっと分かりにくいこれらの点を整理します。
このブログの シリーズ その2 で紹介しましたが、まず従来のPAのスクリーニングは
・血漿アルドステロン濃度(PAC)
・血漿レニン活性(PRA)
上記2つを測定して
・アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA) を求めます。
従来のカットオフ値は
PACの単位がpg/mlであれば、ARR>200(単位がng/dlであれば、ARR>20)
さらに、ARRに加えてPAC>120pg/ml (12ng/dl)の併用が推奨となっていました。
ところが、従来用いられていたRIA法は測定キットが供給停止になったため、CLEIA法によるPACに統一されました(単位はpg/ml)。
CIEIA法では、以前のRIA法よりも値が低くなります。理由として、より特異的なモノクローナル抗体を用いているため、アルドステロン以外のステロイドなどとの交差が極めて低いためだそうです。
このため新しいスクリーニングのカットオフ値は
ARR≧200 かつ PAC≧60pg/ml に変更
さらに、CIEIA法に切り替わったばかりなので、至適カットオフ値が確立するまで
ARR 100~200も境界域として
ARRが100~200 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
もう一つ、レニンの測定も血漿レニン活性(PRA)と共に、活性型レニン濃度(ARC)も採用されています。
ARCはPRAと測定原理が異なるので正確な換算は困難だそうですが、便宜上
CLEIA法によるPAC/ARC≧40 を陽性と判定
CLEIA法によるPAC/ARCが20~40 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
当院で検査をオーダーすると、結果の画面には・・・
・アルドステロンCLEIA
・アルドステロンRIA相当値(→すでに廃止されたので換算値)
・レニン活性(→PRAのこと)
・レニン定量CLEIA(→ARCのこと)
・アルドステロン/レニン活性比(→CLEIA法によるPAC/PRAのこと)
・アルドステロン/活性型レニン定量値比(→CLEIA法によるPAC/ARCのこと)
というように、いくつも記載してあってかなり迷いますが、結局のところ
・アルドステロンCLEIA ≧60
・アルドステロン/レニン活性比 ≧200
(もしくは、アルドステロン/活性型レニン定量値比≧40)
が当てはまっているかを見ればよいことになります。
ちなみに、前回は2016年にコンセンサスステートメントが出されていますが、それから5年経過経過しての改訂でした。今回は日本からのエビデンスも多く採用されていますが、JPAS・JRASという本邦の大規模PAレジストリが大きく関わっています。
実はこのJPAS・JRASに水戸済生会も参加しており、編集長も普段は交流のない内分泌の先生方との議論に参加させてもらい、非常に勉強になりました。(注:もちろんガイドライン改訂には関わっていません)
(編集長)
これはアブレーション中の一コマ
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