
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
急性膵炎のはなし4 治療のバンドル
バンドルとは“束”のことですが、ここでは急性膵炎のより良い治療を行うために、実践すべき医学的根拠の高い治療を示しまとめたものをバンドルと呼んでいます。これは別に僕が言っていることではなくガイドラインで示されたもので、膵炎に限らず多くのガイドラインで“バンドル care bundle”は使われています。
実は急性膵炎の治療において実臨床ではこのバンドルを遵守した治療が行われていないことがわかり、より実践度を高めることを目的としてガイドラインの改定が行われましたので紹介していきます。最後に、バンドルの中のコアバンドル(あくまで個人的なやつですが)を示しますので、結論だけ見たい方は最後まで飛んでください。
1.急性膵炎診断時、診断から24時間以内、24-48時間の各々の時間帯で、厚労省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する。
⇒ 当科では診断時は当然ですが、翌日、翌々日は連日採血をします。翌々日は全身状態に応じて全例ではないですが、造影CTを含めた画像評価を行います。
2.重症急性膵炎では、診断後3時間以内に、適切な施設への転送を検討する。
⇒ 当院は重症膵炎を診る施設ですので、膵炎の紹介は一切断らないようにしています。
3.急性膵炎では、診断後3時間以内に、病歴、血液検査、画像検査などにより、膵炎の成因を鑑別する。
⇒ 特に胆石性は必ずチェックします。
4.胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例、横断の出現または増悪などの胆道通貨障害の遷延を疑う症例には、早期のERCP+ESTの施行を検討する。
⇒ 当院はほとんどすべての症例で診断後数時間のうちにERCPを行っています。
5.重症急性膵炎の治療を行う施設では、造影可能な重症急性膵炎症例では、初療後3時間以内に造影CTを行い、膵造影不良域や病変の広がりなどを検討し、CT gradeによる重症度判定を行う。
⇒ 造影CT可能な施設ではどこでも膵炎と診断したときには造影CTを考慮すべきと考えます。
6.急性膵炎では、発症後48時間以内はモニタリングを行い、初期には積極的な輸液療法を実施する。
⇒ これは別に説明しますが、膵炎の治療=大量輸液と言っても過言ではないくらい大切なことです。
7.急性膵炎では、疼痛のコントロールを行う。
⇒ 以前は、ソセゴンは乳頭括約筋を収縮させ、膵炎を増悪させるといわれていた時代がありましたが、現在は予後に影響しないと研究で結論付けられています。必要な症例では積極的にオピオイドを含めた鎮痛を行います。
8.軽症急性膵炎では、予防的抗菌薬は使用しない。
⇒ これは非常に大切なことですが、残念なことに多くの消化器科医がルーチンで抗生剤投与します。これを読んだ皆さんはぜひ正しい抗生剤使用を心がけましょう!
9.重症急性膵炎では、禁忌がない場合には診断後48時間以内に経腸栄養(経胃でも可)を少量から開始する。
⇒ これは別の記事で触れますが、自分でも守れていない。でも非常に大切です。
10.感染性膵壊死の介入を行う場合には、step-up approachを行う。
⇒ 超音波内視鏡の普及、技術確立により内科の治療選択幅の広がり、救命率の向上につながっている分野です。これは機会があれば別に触れます。
11.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎鎮静後、胆嚢摘出術を行う。
⇒ これはまぁそうですよね。
以上が急性膵炎のバンドルになりますが、項目が多いのでさらにまとめます。
膵炎の治療は、多くの先生がこだわりをもって行っておられると思われ、当院でも消化器内科的approachと救急科的approach(私は病院前診療のOJTを行っているので救急科の先生との交流も深いのです)に違いがあるなと感じています。ですので、私と意見が合わないなというエキスパートの先生がいらっしゃれば、私自身のアップグレードのためにも是非ご意見をご教授いただけたら嬉しいです。
さて、個人的なコアバンドルですが、急性膵炎の治療は
・初期のバイタルの安定
・心不全との戦い
・多臓器不全を起こさせない
・回復期の炎症のコントロール
がカギになります。
そのために
1.重症度の正しい評価
2.大量輸液
3.しっかりとした鎮痛
4.適切な抗生剤使用
5.早期からの腸管使用
が重要です。
引き続き、必要と思われる項目については各論で触れていきます。
(Nao)
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