専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

IVLを導入しました

2023.12.11
カテゴリー: 循環器

あなたがPCIに関心があるならご存じかもしれませんが、PCIにおいて冠動脈の石灰化病変は残された大きな課題の一つです。石灰化病変は手技中の合併症や長期予後など、十分な成績とは言えないのが現状です。特に水戸済生会では透析の患者さんが多いこともあって、PCIに難渋する症例をしばしば経験します。

 

 

今までPCIで石灰化病変と言えばロータブレーター™のみという状況でしたが、このロータブレーターは施行時にSlow flowを生じてしまうことが問題でした。このSlow flowは全例に生じる訳ではありませんが、生じてしまうと血行動態が不安定になるなど、いろいろと大変になります。しかし、全く新しい機序で冠動脈の石灰化病変の治療を行うデバイスとして、IVLが1年前から国内で使用できるようになりました。

 

このIVLとはIntravascular Lithotripsyの略で、血管内リソトリプシー(破砕術)と呼ばれるものです。リソトリプシーは分かりやすく言うと腎結石を衝撃波で破砕するESWLと同じように、冠動脈の石灰化を衝撃波を加えて、小さいひび(Crackle)を形成するデバイスです。石灰化病変にステントを留置しても、十分な拡張が得られないことがありますが、ステント留置前にIVLを行うことで、良好な拡張が得られて成績の向上が期待されます。

 

しかも、IVLは衝撃波で石灰化病変に小さいひびを形成するだけなので、ロータブレーターと異なってSlow flowが起こらないというメリットがあります。

 

茨城県内での導入は当院が3番目だそうですが、先日当院での2症例を施行しました。IVLでは衝撃波を生じさせるためのバルーンを病変部まで持ち込む必要がありますが、問題なくバルーンを持ち込んで、最終的に良好なステント拡張を得て終了しました。

 

上述の通り、IVLでは目的の病変部までバルーンを通過させる必要があるので、逆に言えばバルーンが行かないところでは効果が発揮できません。全ての症例でIVLが有効な訳ではなく、ロータブレーター™との使い分けが重要になってきますが、間違いなく有力な手段になると思いました。

Shockwave Medical Japan社のサイトより

(編集長)

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