専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

朴澤先生のEVTワークショップ

2023.06.26
カテゴリー: 循環器

当院の循環器内科では、虚血に対するPCIや不整脈に対するアブレーション治療はもちろん、大動脈弁狭窄症に対するTAVIや僧帽弁閉鎖不全に対するMitraclipなど、幅広く診療を行っています。

 

その中でも末梢動脈疾患(PAD)に対するカテーテル治療(EVT)は、県内有数の症例数を施行しています。PADはようやく疾患の認知度が高くなって来ましたが、下肢切断に至ることもある重篤な疾患です。特に透析患者さんは下肢切断に至ることが多く、EVT以外にも血管外科や形成外科、リハビリなど、多診療科・多職種での取り組みが必要です。

 

しかし、下肢切断の回避にEVTによる血行再建が重要なことは間違いなく、当院では循環器内科でレベルアップに積極的に取り組んでいます。

 

先日は、国内で下肢EVTのトップオペレーターの一人である、新東京病院の朴澤先生にお越しいただき、EVTを指導していただきました。その中には我々がEVTをやってガイドワイヤーは通過したけど、バルーンがどうしても通過できず断念した症例も含まれていたのですが、朴澤先生の粘りとテクニックで見事成功していました。

 

やはり上手な先生と一緒にEVTに入り、デバイスの選択や術中の判断など、そばで見ていないと分からないところを学べるのがワークショップの良いところです。水戸済生会の循環器内科ではEVTに限らず、院外の指導医を招聘しながら、診療のレベルアップに取り組んでいます。

(編集長)

あごマスクが気になるEVT中の朴澤先生

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大動脈弁狭窄症 (Low Flow, Low Gradient AS)

2023.06.19
カテゴリー: 循環器

今回は低流量低圧格差(low flow, low gradient)のASについてです。

 

ASの重症度を評価する時に、AVA<1.0㎠で、Vmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHgであれば、重症ASと診断は容易です。ところが、たとえ重症ASでもVmax<4.0、mPG<40mmHgの圧格差を示さないことがあります。

 

これは1回拍出量が低下している時に見られるもので、低流量低圧格差大動脈弁狭窄症(low flow, low gradient AS)と呼んでいます。この低圧格差を来す1回拍出量の低下には原因が2つあります。

 

①EFが低下している

②EFは低下していないが、左室肥大により左室内腔が狭小化することで流量が低下する

 

①のEFが低下してる場合には、真の重症ASの場合と、もともと中等症ASがあったけど、EFが低下したことで一回拍出量が低下し、大動脈弁が十分に開かなくなりAVAが小さく算出されてしまう場合(偽性重症AS)があります。

 

この鑑別にはドブタミン負荷心エコーが有用で、ドブタミン負荷後でもAVA<1.0㎠のままで、Vmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHgとなれば真の重症ASということになります。一方でAVA≧1.0㎠となった場合は偽性重症ASという診断になります。

 

しかしドブタミン負荷でも1回拍出量が増加しない場合は、収縮予備能の低下を意味するので、これ以上の鑑別は困難でCTでのカルシウムスコアなどを参考にした総合判断となります。

 

②のEFが低下していない場合は、奇異性低流量重症ASと呼ばれます。しかし、この奇異性低流量重症ASと診断するにはSViとAVAの計測に誤差要因がないかしっかり確認する必要があります。それは、左心室が小さい場合には左室流出路径が小さく、SViが低く、AVAが小さく算出される可能性があるためです。

 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

ガイドラインから一部改変

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肝性脳症にまつわる誤解 その②

2023.06.12
カテゴリー: 消化器内科

皆様こんにちは。消化器内科の蒼いRX2です。前回から肝性脳症にまつわる3つの誤解についてお話していますが、今回はその2回目となります。

 

誤解② 肝硬変患者の意識障害 ⇒ 肝性脳症!

 

「先生、この意識障害の患者さんアンモニア測っておいたほうが良くないですか?」

 

救急外来で一度は耳にするやりとりですが、ちょっと掘り下げてみましょう。ざっくり結論を言ってしまうと、肝性脳症におけるアンモニアは、感染症におけるCRPみたいなものです。

 

「アンモニアが高いから肝性脳症」「アンモニアが正常だから肝性脳症ではない」「アンモニアが高いほど肝性脳症の重症度が高い」はい、これ全部間違いです。ただしアンモニアを測定することを全否定しているわけではなく、実際には「あくまで参考程度にチェックしておく」といった感じでしょうか。

 

肝性脳症の主病態は、肝臓の尿素サイクルの障害によりアンモニアが代謝されないことと習ったと思いますが、実は芳香族アミノ酸やGABAなどアンモニア以外の物質の関与も指摘されています。血中アンモニアが増加する要因は肝性脳症以外にも多数あり、重要なものだけ以下に挙げます。

 

 ・検体取扱い不良(すぐに冷却せず、長時間室温で放置)

 ・消化管出血 

 ・てんかん後

 ・薬剤:バルプロ酸、αGI、5-FU

 ・ウレアーゼ産生菌による尿路感染症

 

高アンモニア血症の有無と肝性脳症の有無が1:1対応でないことがお分かり頂けたと思います。では、どのように肝性脳症を診断するのでしょうか。

 

①他の意識障害の要因が除外されていること

②肝性脳症を来しうる要因があること(詳しくはPart3でお話しします)

これらの臨床的文脈を踏まえたうえでの総合判断となります。繰り返しになりますが、ア

ンモニアの測定が全く無意味というわけではなく、あくまで参考としてチェックします。

 

余談です。肝性脳症で有名な身体所見である羽ばたき振戦ですが、これも肝性脳症に特異的な所見ではありません。尿毒症などによる代謝性脳症でもみられることがあります。ところで皆様、羽ばたき振戦がどんな所見か、ご自身の身体を使って再現できますか?(流石に両手を広げて本当に羽ばたいてしまう方はいませんよね…?)自信がない方はYouTubeにたくさん動画が上がっていますので、是非チェックしておいてください。

 

今回も長くなってしまいました。次回でいよいよラストですので、もう少しだけお付き合いください。 

参考文献:1) Hospitalist vol.6 No.3 2018『肝胆膵』

(蒼いRX²)

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肝性脳症にまつわる誤解 その①

2023.06.05
カテゴリー: 消化器内科

皆様、はじめまして。消化器内科の蒼いRX²と申します。昨年度まで近くの研修病院の総合内科で勤務していました。初投稿の今回は、肝性脳症にまつわる3つの誤解を解いていきたいと思います。

 

誤解① 肝硬変患者の意識障害 ⇒ 肝性脳症!

誤解② 高アンモニア血症+意識障害 ⇒ 肝性脳症!

誤解③ とりあえずアミノレバン入れておけばOK!

 

誤解① 肝硬変患者の意識障害 ⇒ 肝性脳症!

「肝硬変の人が意識障害で救急搬送?どうせ肝性脳症でしょ!」と短絡的に考えてしまいがちですが、本当にそうでしょうか?

 

AASLDガイドラインでは、肝性脳症の診断において、意識障害の原因となる他疾患の除外を行うことを推奨しています。1)  まずはAIUEOTIPSの基本に立ち返って考えてみましょう。その中でも特に重要なのが、頭蓋内出血、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、アルコール性ケトアシドーシス(AKA)です。

 

アルコール性肝硬変では、頭蓋内出血のリスクは5倍に跳ね上がるとも言われています。2)

低血糖は意識障害において真っ先に除外すべきですし、鑑別から落としがちなのがDKA, AKAです。「肝性脳症っぽいな~」と思いつつも、まずは瞳孔と粗大な麻痺の評価をしつつ、血液ガスでアシドーシス、血糖異常、電解質異常はチェックしておいた方が良いでしょう。何事も基本が肝心です。

 

少々長くなってしまいました。誤解②と③は次の機会にお話ししましょう。

 

参考文献:

1) Hepatology. 2014;60(2):715-735

2) BMC Gastroenterol. 2008 May 24;8:16

3) Hospitalist vol.6 No.3 2018『肝胆膵』

 

(蒼いRX²)

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【お知らせ】内科専門研修プログラム説明会

2023.05.29
カテゴリー: ブログ

J2のあなたは来年の研修先をどこにするか、いろいろとリサーチ中かと思います。当院のJ2も、大学などの他の施設に見学に行き始めています。

 

専門研修を始めるには、専門医機構に専攻医登録をして、診療科と研修施設を決める作業が必要になりますが、登録開始のスケジュールはまだ発表されていません。専門医機構と各学会だけでなく、都道府県との調整があるので意外と時間がかかります(昨年は11月から登録開始でした)。

 

さて、当院では基幹型の内科専門研修プログラムを有しており、特に腎臓内科、消化器内科、循環器内科は内科専門医を取得後に異動することなく各サブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できる施設です。

 

昨年は6月に院内向け、9月に院外向けの説明会を開催しましたが、今年は動きが前倒しになっている印象で、このところお問い合わせいただくことが増えてきました。今年も昨年同様に院内の初期研修医向けに説明会を下記の日程で開催しますが、院外からの参加も歓迎します。ご都合のつく方はぜひご参加ください。なお、J2が対象ですが、関心のある方なら医学生でもJ1でもご参加いただけます。

 

【水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会】

日 時:2022年6月26日(月)

    18時開始(40分程度の予定です)

場 所:本館3階 第一会議室

内 容:①内科専門研修の概略

    ②消化器内科の専門研修について

    ③腎臓内科の専門研修について

    ④循環器内科の専門研修について

申し込み方法:下記リンクの問い合わせフォームからお申し込みください。フォーム内の「お問い合わせ内容」欄に「内科専門研修プログラム説明会参加希望」と入力し、送信して下さい。

 

お申し込みはこちらから

 

あなたの参加をお待ちしています♪

(編集長)

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大動脈弁狭窄症(重症度分類)

2023.05.22
カテゴリー: 循環器

今回はASの重症度分類についてです。

 

まず、ASに基づくと考えられる自覚症状を有するか否かで、症候性と無症候性に分類されますが、症候性の場合は無症候性以上に予後不良であることが分かっています。つまり重症度がより高いと判断する必要があります。

 

そして通常では、ASの重症度評価は心エコーで行います。その際の指標は、大動脈弁口面積(AVA)と大動脈弁最大血流速度(Vmax)、大動脈弁平均圧格差(mPG)の3つを覚えればOKです。

 

まずAVAから。覚えておくべき数字は「1㎠」「0.6㎠」です。正常のAVAは3~4㎠ですが、≧1㎠なら軽症もしくは中等症<1㎠なら重症となります。さらに<0.6㎠を超重症と呼んでいます。なお、AVAを体表面積(BSA)で補正した値(AVAI)が<0.6㎠/㎡も重症と定義されますが。無理に覚えておかなくても構いません。

 

ここでAVAの弱点を押さえおく必要があります。AVAの求め方には。エコーで短軸画面をトレースする「プラニメトリー法」と、「連続の式」と呼ばれる左室流出路血流速から求める方法があります。プラニメトリー法は石灰化のため正確にトレースすることは困難で、わずかにトレースが異なるだけで、値が全然違ってきます。連続の式から求める方法はパルスドプラ法を用いますが、正確な流速の評価にはドプラビームと血流の方向が一致することが大事です。心尖部から計測することが多いものの、他の方向からもしっかり確認する必要があります。

 

次にVmaxとmPGについて。連続波ドプラ法によって大動脈弁最大血流速度、最大圧較差(maxPG)、mPGを求めます。ただし、計測が簡便なものの大動脈弁圧較差は弁通過血流量に依存するために、血流量低下(前負荷減少や左室サイズ減少および機能低下)により AS は高度であるにもかかわらず圧較差が少なかったり,血流量増加(甲状腺機能亢進・大動脈弁逆流の合併や貧血など)により AS は軽度であるにもかかわらず圧較差が大きかったりします。そこでAVAと合わせて評価する必要があります。

 

VmaxとmPGでおさえておくべき数字は、Vmaxの「4.0m/sec」と「5.0m/sec」mPGでは「40mmHg」と「60mmHg」です。重症ASはVmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHg、超重症ASはVmac≧5.0、mPG≧60と定義されます。

 

ただし、AVA<1.0㎠でもVmax<4.0、mPG<40mmHgの低圧格差を示す低流量低圧格差(low flow, low gradient)のASがあり、ここが混乱してしまうところです。この点については次回に紹介します。 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

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大動脈弁狭窄症(病因・頻度・自然歴)

2023.05.15
カテゴリー: 循環器

大動脈弁狭窄症(AS)は高齢者に多く、内科的治療には限界があって、最終的にはTAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)もしくは外科的弁置換(SAVR)が必要な疾患ですが、手術のタイミングが問題になる疾患です。

 

水戸済生会ではASに対するTAVIを行っていますが、開心術をためらうような高齢の患者さんにとって非常に有効な治療になります。しかし、出来るからと言って何でもTAVIという訳でもありませんし、ASの診断は意外と難しいところがあります。

水戸済生会 循環器内科のサイトもご覧ください

 

そこで今回から、当院での経験も織り交ぜながら、ガイドラインをベースにASについてまとめてみようと思います。

 

【病因・頻度】

ASの病因としては、リウマチ性や加齢に伴う変性性、先天性などがありますが、本邦では加齢に伴う変性性が大部分を占めています。先天性には一尖弁、二尖弁、四尖弁とあり、二尖弁が最多で、一尖弁と四尖弁は稀です。有病率は全人口の0.5~2%で,男女比は3:1と男性に多く、二尖弁のASに遭遇するのは決して稀ではありません。

 

ASの頻度は70歳未満では1%未満ですが、80歳以上なら7%程度(約15人に1人)と言われています。これは日常診療でASに遭遇する頻度と実感として合致しています。

 

【病態】

ASの病態は大動脈弁の狭窄に伴う慢性的な左室への圧負荷です。圧負荷の結果として左室肥大の進行,左室線維化の亢進などが生じ、左室機能障害(つまりEFの低下)を生じるという流れです。ASの手術適応を決めるうえでEFは重要ですが、中等症以下のASの時点からEFが低下し始めて、その後急速に50%未満まで低下することを認識しておく必要があります。

 

大動脈弁自体の経時的な変化は、当初は弁狭窄を伴わない大動脈弁硬化ですが,その後は大動脈弁尖の肥厚、線維化、石灰化が生じ,ASに至ります。この弁の変性を促進させる因子はいろいろ検討されていて、動脈硬化と重なるとも言われますが、それを否定するデータもあって、現状では動脈硬化とは別物と考えられています。 

 

【自然歴】

AS患者の自然歴としては心不全、失神、胸痛などの自覚症状が出現すると平均余命は2~3年というは有名です。他にも有症状となった後の重症AS患者の予後は手術を拒否した患者の平均余命は、狭心痛出現後が45ヵ月、失神後が27ヵ月、心不全後が11ヵ月という報告もあり、有症候性の重症AS患者の予後が不良であることは間違いありません。無症候性の重症ASも同様に予後は不良ですが、突然死のリスクは年1%程度とされ,無症状のままAVRを受けることなく経過をみることができた場合の5年生存率は93%という報告もあるようです。

 

なお、先天性の場合は、大動脈拡大や大動脈解離を伴いやすいとされていますが、それを否定するデータもあるようです。

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

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右室梗塞

2023.05.08
カテゴリー: 循環器

STEMIが来た時は、患者さんを急いでカテ室に搬入し、さっさと再潅流を得たいところです。でも、STEMIは刻々と状況が変わりやすく、ERで待っている間にVTやVfを来すことがあります。そんな時は当然除細動ですし、もし心源性ショック、肺水腫となっていれば、先に挿管が必要になります。こう言った命に直結するイベントに適切に対処して、患者さんが元気になるのが循環器医の醍醐味の一つです。今回はSTEMIの中でも、取扱いに注意が必要な右室梗塞についてまとめてみようと思います。

 

右室梗塞は右冠動脈の心筋梗塞のことではありません。右冠動脈の近位部が閉塞することで、左室の下壁領域が壊死に至るだけでなく、右室の壁運動が障害された結果、右室から肺動脈への拍出が出来なくなり、左室への潅流が減って血圧低下に至るものです。下壁や後壁梗塞の25%~50%に合併するとされています。

 

STEMIの時に血圧低下に至るのは、通常は左室の収縮が低下して肺うっ血を来すパターン(心原性ショック)が多いのですが、右室梗塞では肺動脈への血流が低下するので、肺うっ血を来さずに、頸静脈の怒張を来します。

 

と言うことで、もしあなたが下壁の心筋梗塞患者に遭遇した時に、

①血圧が低く

②SatO2が下がっていない(=肺うっ血がない)

この2つがあれば、右室梗塞を疑いましょう。

 

身体所見としては、頸静脈怒張の有無を短時間で確認し、心電図では下壁梗塞(Ⅱ、Ⅲ、aVF)でのST上昇を確認したら、次にV1のST上昇がないかを確認します。V1のST上昇は右冠動脈近位部の閉塞を示すからです。さらにV4の電極を、胸骨を挟んで反対側に付け替えて(V4Rと言います)心電図を記録し、ST上昇があれば確実です。

 

さて、混乱しやすいのは治療です。

心筋梗塞ですから、速やかにPCIなど再灌流療法を行うのは言うまでもありませんが、心筋梗塞なら硝酸薬とか、肺うっ血を伴っていれば利尿剤を使いたくなりますよね。しかし右室梗塞では利尿薬や硝酸薬、モルヒネを使用するのはアブナイです。前負荷が低下すると、さらに血圧が下がるからです。逆に生理食塩水などで輸液をどんどん入れる必要があります。そして右室から肺動脈への拍出を増加させる目的でカテコラミン(ドパミン、ドブタミン)を使用します。(閉塞性ショックの対応)

 

初期対応を間違えずに行えば、PCI後には比較的速やかに血圧が落ち着くことがほとんどですが、遷延する時はIABPやECMOの使用を考えます。

(編集長)

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病院見学のススメ・・・専門研修編

2023.05.01
カテゴリー: ブログ

新年度になってあっという間に1か月が過ぎました。新型コロナも時々遭遇しますが、昨年や一昨年と比べたら平和になりましたね。

 

さて、J2のあなたは来年度からの専門研修プログラムをどうするか、どこに、いつ見学に行くべきかをそろそろ考えていると思います。もしかしたら、そもそもどの診療科にしようかと決めかねているかもしれませんが、見学に行こうと思えば夏休みとかを気にせずに、有休をとっていつでも行けます。専門研修プログラムを決めるのは、専門医機構が次年度の専攻医登録を開始する秋(2022年は11月から開始でした)ですが、まだ時間があると思わないで、少しずつでも情報収集を始めるのが良いと思います。

 

水戸済生会には基幹型の内科専門研修プログラムがあり、おかげさまで昨年度は定員いっぱいの4名に来ていただくことができました。今年度も既に病院見学にお越しいただいた方もいて、年々前倒ししている印象です。そこで、当院に限った話ではなく、専門研修プログラムを決めるときのポイントを紹介します。

 

①各施設のプログラムに目を通しましょう。

各領域の基幹学会が専門研修プログラムを取りまとめてWebで見れるようにしています。どれも「研修の理念」とかで始まるので、ぱっと見で読みにくい印象ですが、待遇などのところは毎年見直しが入っているので、チェックしておくのが良いです。また基本的に1つの施設だけで研修する訳ではないので、ローテーション可能な施設もここから知ることができます。参考までに、内科学会のサイトのリンクを貼っておきます。

内科学会の研修施設、プログラムのページ

 

②気になる病院には、可能な限り病院見学に行くべきです。

最近ではレジナビなどのイベントでも専門研修プログラムを紹介するものが増えてきました。でも、なかなか参加できるわけではありませんので、情報収集はまだまだ口コミや先輩のツテというのが多いようです。だとすればなおさら、気になる病院や候補の病院には可能な限り病院見学に行ってください。

 

さらに大学の医局も各種イベントに力を入れるところが増えています。医局の先生達や研究内容などを知れるチャンスですので、できるだけ参加しましょう。

 

③病院見学に行った際のポイントは・・・、

指導医クラス(大学の医局なら医局長)の話は、半分程度に聞いておけばOKです。なぜかと言えば、基本的にイイことしか言わないからです。何とか先輩になる専攻医から直接話を聞きましょう。病院見学の際にはコンタクトをとれなくとも、指導医に紹介してもらうなどして、後日でも実際に働いている専攻医とコンタクトをとる努力をしてください。そしてあなたの知りたいことを質問してみましょう。待遇や他施設のローテーション状況など、プログラムに書かれていない情報を得ることができます。また内科であればJ-OSLERの進み具合やサポートなども聞いておくと役に立つと思います。

 

そしてカテ室や内視鏡室、エコー室など、実際に案内してもらい、専攻医たちの元気の良さや看護師さんや技師さんたちの雰囲気にも注目してみると良いと思います。

 

④できるだけ複数回行きましょう。

専攻医を採用する時に、定員越えで選抜する施設は少ないと思いますが、気になっている病院には複数回見学に行くことをおススメします。なぜかと言えば、先輩となる専攻医と話すチャンスが増えて、あなたのイメージしている専門研修とのギャップを少なくできるはずです。さらにあなたの存在が相手の記憶にも残りやすくなります。初期研修医の採用はマッチングという、手だしできないシステムが介在していますが、専門研修ではそのようなシステムはありませんので。

 

⑤水戸済生会に見学に来ていただいた時は

・希望診療科の専攻医について、できるだけ内視鏡やカテなどに一緒に入ってもらうようしています。

・昼食時に専攻医や指導医と話をする時間が確保しています。ここで、聞きたいことを全部聞くことができるはずです。

・あなたと同じJ2の研修医とも情報交換できるようにしています。

 

忙しい仕事の合間に見学に行くのは大変ですが、悔いのないように情報収集をしてください。

水戸済生会では専門研修プログラムのための病院見学を随時受け付けていますので、下のリンクからお申し込みください!

病院見学の申し込みはこちら

(編集長)

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ピロリ菌除菌について

2023.04.24
カテゴリー: 消化器内科

H.pylori感染では胃粘膜の慢性炎症を背景として胃・十二指腸潰瘍, 胃癌をはじめとしたH.pylori関連疾患を引き起こし, 胃酸分泌能など胃機能への影響や消化管以外の疾患との関連性も指摘されています. 

 

『H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版』では, H.pylori除菌が強く勧められる疾患として, H.pylori感染胃炎, 胃・十二指腸潰瘍, 早期胃癌に対する内視鏡治療後胃, 胃MALTリンパ腫, 胃過形成性ポリープ, 機能性ディスペプシア, 胃食道逆流症, 免疫性血小板減少性紫斑病, 鉄欠乏性貧血が挙げられています.

 

実際には, 上部消化管内視鏡検査で前述のH.pylori感染関連疾患を認める場合, H.pylori感染診断検査を行います. 当院では血清抗H.pylori抗体測定で感染診断を行うことが多いです. 他に, 迅速ウレアーゼ試験, 鏡検法, 培養法(内視鏡による生検組織を用いる), 尿素呼気試験, 便中抗原測定法などがあります.

 

感染診断検査で陽性の場合, 1次除菌としてアンピシリン+クラリスロマイシン+PPIを7日間内服します. 1次除菌の成功率は75-90%で, 飲み忘れや中断なく内服すること, 除菌中の喫煙を避けることで除菌成功率が高まります. 除菌薬終了後4週以降に除菌判定検査を行います. このときは除菌前の影響を受けない尿素呼気試験(抗菌薬やPPI内服中は偽陰性となり得る), もしくは便中抗原検査(PPIの影響を受けにくい)を行います.

 

1次除菌失敗の場合, 2次除菌としてアンピシリン+メトロニダゾール+PPIを7日間内服し, 終了後4週以降で再び除菌判定検査を行います. 2次除菌も失敗の場合, 3次除菌へ進みますが, 3次除菌以降は保険適応外となります. ペニシリンアレルギーや腎機能低下のある患者さんでは, 抗菌薬の変更や減量が必要です.

 

除菌によって胃癌リスクは低下しますが, 除菌後長期経過後の胃癌発症も報告があり, 基本的には除菌後も1年ごとの上部内視鏡検査をお勧めしています.

 

参考文献:H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016年度版 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会

(やまガール)

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