専門研修ブログ
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茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CLTI 治療(血行再建・1)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回までは評価および治療方針の決定プロセスについて紹介しました。今回から治療に関してです。
「治療方針の決定と管理は,多診療科・職種により構成された集学的治療チームにより行う」とガイドラインにも明記されていますが、CLTIの診療を担当するのは施設によって異なります。形成外科や循環器内科、血管外科が主体になることが多いと思いますが、水戸済生会では循環器内科がゲートキーパー役となり、形成外科や血管外科と相談しながら診療にあたっています。
当院の場合は、フットケアに関心のある看護師さんを中心にメンバーが集まりましたが、透析患者が多いため透析室のスタッフがチームに入ると対応が格段にスムーズになりました。リハビリも患者さんと一緒にいる時間が長いので、非常に有用な情報を持っています。そして院内のスタッフではないものの装具士さんも参加してくれたので、靴やインソール、義足のことなど実にいろいろなことを教えてもらい、すぐに診療に役立てることができたのは非常に良かったです。
さて、CLTI治療の2本柱は血行再建と創傷管理です。CLTIは虚血があるのが前提なので、血行再建はなにがしかの方法で必要になります。しかし血行再建さえやれば自然に傷が治る訳ではないので、ある程度創傷管理についても知っておき、タイミングを逃さずに形成外科にコンサルトすることが大事です。
その下肢の血行再建ですが、外科的バイパス術もしくは血管内治療(EVT)の2つがあります。どちらを選択するのかについては、施設によって偏ってしまうのはやむを得ないかもしれませんが、ガイドラインでは、患者リスク、創傷の状態、血管の病変部位を考慮して決めることが示されています。
【患者リスクでの考え方】
予後が2年以下と想定されるのであればEVTを、2年以上が想定されるのであれば外科的バイパス術を考慮します。患者リスクは,年齢,ADL,フレイリティ,栄養状態に加え治療抵抗性心血管病,糖尿病,透析,貧血,対側肢の状態から評価していきます。(ClassⅡa)
この他に、バイパスに使用できる自家静脈の有無が、EVTか外科的バイパスかを選択する判断材料になります(バイパスグラフトとしては3.0~3.5mm径の大伏在静脈が望ましい)。(ClassⅡa)
【創傷の状態による考え方】
平均的な患者リスクであれば、創傷範囲が小さい場合はEVTを、創傷範囲が広い場合は外科的バイパス術を考慮します。(ClassⅡa)
次回は血管病変部位による考え方を紹介します。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 方針決定のプロセス(PLANコンセプト)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回は解剖学的重症度を評価するGLASS分類の各項目について紹介しました。今回は治療方針決定についてです。
通常は腸骨動脈領域の病変のみではCLTIに至ることはありませんので、GLASS分類ではFPとIP領域での血管解剖からグレードを決め、さらに下記の表を用いてGLASSステージを決定します。
FP gradeとIP gradeの組み合わせによるGLASS stage
そして、下記の表を用いてGLASSステージとWIFIステージとでEVTを選択するのが良いのか、外科的バイパス手術を選択するのが良いのかを判断していきます。
さらに患者リスク評価を行って、周術期死亡5%以上で2年生存率が50%以下と想定される症例では高リスクと判定され,EVTが選択されます。この患者リスクの危険因子として,高齢,腎機能低下,冠動脈病変,うっ血性心不全,糖尿病,喫煙,脳血管障害,組織欠損,BMI,認知症,ADLがありますが、 さらにフレイルや維持透析がCLTIの重要な危険因子であることが分かっています。
ガイドラインではCLTIの治療方針を決める際には、今まで紹介してきたように下肢の状態(WIFI分類)と血管の状態(GLASS分類)に加えて、患者リスクを評価したうえで方針を決める、PLAN(Patients risk estimation, Limb Staging,ANatomic pattern of disease)コンセプトが提唱されています。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 評価(GLASS分類)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する5回目。前回までは下肢の重症度を評価するためのWiFi分類を紹介してきました。
Wifi分類は下肢の重症度評価(=大切断のリスク評価)に用いられるものでしたが、今回は解剖学的重症度の評価に用いられるGALSS分類の紹介です。
改訂されたガイドラインでは、今まで用いられてきたTASCⅡ分類に代わってGALSS分類を用いることを提唱していますので、知っておきましょう。
Global Anatomic Staging System(GLASS分類)
【大腿膝窩動脈(FP:Femoropopliteal)領域】
0:軽度ないし有意でないSFA病変(狭窄度50%未満)
1:・SFA総病変長が<1/3(<10 cm)
・SFA起始部を含まない単独のSFA限局性閉塞(<5 cm)
・軽度あるいは有意でない膝窩動脈病変
2:・SFA総病変長が1/3~2/3(10~20 cm)
・SFA総閉塞長<1/3(10 cm)ただし,SFA起始部閉塞は含まない
・下腿3分岐に及ばない限局性膝窩動脈狭窄(< 2 cm)
3: ・SFA総病変長が>2/3(20 cm)
・SFA 起始部からのSFA閉塞(<20 cm)または起始部を含まないSFA閉塞(10~20 cm)
・下腿3分岐に及ばない短区間の膝窩動脈狭窄病変(2~ 5 cm)
4:・SFA総閉塞長が> 20cm
・膝窩動脈病変>5 cmまたは下腿3分岐に及ぶ膝窩動脈狭窄病変
・膝窩動脈閉塞
【膝下動脈(IP:Infrapopliteal)領域】
0:軽度あるいは有意でない治療対象動脈経路の病変
1:・狭窄病変長が対象動脈全長の1/3以下
・限局性閉塞(<3 cm)
・脛骨腓骨動脈幹あるいは下腿動脈の起始部を含まない病変
2:・狭窄病変長が対象動脈全長の1/3以下
・限局性閉塞(<3 cm)
・脛骨腓骨動脈幹あるいは下腿動脈の起始部を含まない病変
3:・病変長が動脈全長の2/3まで
・全長の1/3 に及ぶ閉塞病変(下腿動脈起始部を含んでよいが脛骨腓骨動脈幹は含まない)
4:・びまん性狭窄病変長が動脈全長の>2/3
・閉塞病変長が全長の>1/3(下腿動脈起始部を含むことあり)
・脛骨腓骨動脈幹の閉塞(前脛骨動脈が治療対象でない場合)
【足関節以下(IM:Infra-malleolar)領域】
P0:完全なpedal archを伴い,標的血管が足部まで開存
P1:pedal archは閉塞あるいは高度狭窄を有するが,標的血管が足部まで開存
P2:足部まで連なる標的血管なし
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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レジナビ~専門研修プログラム~にご参加いただき有難うございました!
レジナビFairオンライン2022 内科 ~専門研修プログラム~ が開催されていますが、9月13日に当院の説明会を行いました。少しづつですが、回を重ねるごとに参加者が増えてきて、今回は20名以上のご参加をいただきました。どうも有難うございました。
この企画は初期研修医が対象ですが、レジナビの担当者の話では医学生の参加も増えているようです。実際のところ当院の説明会では約半数が医学生だったので、考えていたよりずっと多くちょっと驚きでした。
レジナビのいつもパターンですが、前半は水戸済生会の内科専門プログラムについての紹介で、後半は現在専攻医2年目(卒後4年目)として頑張ってくれている消化器内科志望の目時先生も参加して、コメントしてもらいました。すでにレジナビのサイトに動画がアップされているので、是非ご覧ください。
内科の専門研修先を探しているあなたにとっては、この動画の情報だけでは足りないハズです。そこで今週9月21日(水)の夜にZoomでの説明会を開催しますので、ぜひご参加ください。申し込み方法などは下段のお知らせをご覧ください♪
おまけですが、今回レジナビでは初企画として専攻医への直撃インタビュー企画がありました。説明会の終了後に目時先生が司会者から専門プログラムを選ぶ時のポイントや、採用時の試験や面接のことなど、まだまだ情報として少ないことを質問されて、それに答えてくれました。こちらは動画の掲載は今のところないのですが、おそらくレジナビがどこかのタイミングで、今回の動画を掲載してくれる企画を考えているハズです。
(編集長)
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◆内科専門研修プログラム説明会@Zoomを開催します!
来年度からの専門研修をどうするか?
医局はどうしたらいいのかお悩み中のあなた。
医局に属さずに消化器内科、腎臓内科、循環器内科の
サブスぺ資格を取得できる水戸済生会の内科専門研修
プログラムについて、下記日程で説明会を開催します。
J2が対象ですが、関心のあるJ1や医学生も参加可能です。
ぜひご参加ください!
日時:2022年9月21日(水)20時~(40分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略について
②消化器内科の専門研修について
③腎臓内科の専門研修について
④循環器内科の専門研修について
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CLTI 評価(Wifi分類3)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する4回目。CLTIの評価に用いられるWIFI(ワイファイ)分類の続きです。
WIFI分類はCLTI患者の患肢の重症度、つまり大切断のリスクを評価するツールで、創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化してステージングします。前回まで3つの項目のGradingを解説してきました。
各項目のGradingを算出したら、下の表に当てはめて最終的にステージングを行います。例えば拇趾に限局した潰瘍でWoundはGrade1、SPPは35mmHgでIschemiaがGrade2、感染兆候はないのでFIはGrade0とすると、Stage2ということになります。
Stage4になると1年後までの大切断のリスクは約30%(!)にもなってしまいます。
ここまででCLTIの下肢の重症度評価に用いられるWIFI分類を紹介してきましたが、実はこれだけでは不十分です。多くの合併症を有する高齢者が大多数を占めるCLTIの最適な治療方針を決定するためには、下肢の重症度に加えて、症例のリスクと血管病変の解剖学的複雑性を包括的に評価するPLANコンセプトが推奨されているので、次回以降で紹介していきます。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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【開催決定】水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会@Zoom
J2のあなたは来年の研修先をどこにするか、いろいろ悩み中と思います。当院のJ2も大学などの他の施設に見学に行ったり、いろいろリサーチの真っ最中ですね。
専門研修を始めるには、専門医機構に登録して、診療科と研修施設を決める作業が必要になりますが、専門医機構の登録開始はおそらく昨年同様に11月になりそうです(あくまで編集長の得られる範囲の情報です)。
また、あなたには今すぐに関係はありませんが、内科専門研修後のサブスペシャルティ領域のプログラム整備についても急展開を見せており、いろいろと慌ただしくなってきました。
さて、当院では基幹型の内科専門研修プログラムを有しており、特に腎臓内科、消化器内科、循環器内科は内科専門医を取得後に異動することなく各サブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できる施設です。
6月には院内で当院の内科専門研修プログラムの説明会を開催しましたが、このところお問い合わせいただくことが増えてきました。このため、院外で研修しているあなたを対象にZoomでの説明会を開催することにしました。
開催日時は以下の通りです。対象はJ2ですが、関心のある方なら医学生でもJ1でも参加可能です。
【水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会】
日 時:2022年9月21日(水) 20時~(40分程度を予定しています)
場 所:Zoom
内 容:①内科専門研修の概略について
②消化器内科の専門研修について
③腎臓内科の専門研修について
④循環器内科の専門研修について
申し込み方法
ZoomのURLをお知らせするために、お手数ですが下記お問い合わせフォームの「問い合わせ内容欄」に「専門プログラム説明会参加希望」と入力して送信してください。
また、事前に質問があれば、同様にフォームに入力して送信ください。可能な限り当日にお答えいたします。
あなたのご参加をお待ちしています!
(編集長)
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CLTI 評価(Wifi分類2)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する3回目。CLTIの評価に用いられるWIFI(ワイファイ)分類の続きです。
WIFI分類はCLTI患者の患肢を創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化して重症度をステージングするもので、前回はWound Gradingを紹介しましたが、今回は虚血(Ischemia)と感染(Foot Infection)の評価です。
CLTIは虚血があること前提で、各種の血行動態検査の値からグレードを判断します。ちなみにもともとのWIFI分類の文献には日本で普及しているSPP(皮膚還流圧)値は定義されていませんでした。しかしガイドラインでは日常診療で使い安いように、目安となる数値を提唱しています。
Foot Infection Gradingについてのガイドラインの記載は細かいのですが、編集長的に簡略化すると以下のようになります。
もう少し細かく書くと、
Grade1では、下記の少なくとも2つの兆候を有する限局性感染
・局所の腫脹や硬結
・潰瘍周囲の発赤(0.5~ 2 cm)
・局所の圧痛や痛み
・局所の熱感
・膿汁の排泄(濃い濁った白色または血性混じりの浸出液)
Grade2では、広範な局所感染(発赤>2 cm)、あるいは皮膚・皮下より深部の構造物を巻き込む感染(膿瘍,骨髄炎,敗血症性関節炎,筋膜炎)でSIRSの兆候を伴わないもの
Grade3では、下記の2つ以上を有する全身性炎症兆候
・体温> 38 ℃または< 36 ℃
・心拍数>90回/分
・呼吸数>20回/分またはPaCO2<32 mmHg
・白血球数>12,000 または<4,000 cells/mm3 または10%を超える幼若球の出現
実際のところは全身性の炎症兆候として、血圧低下や意識障害、低血糖などいろいろな形で現れることがあるので、患者さんの状態をよく見ることが重要です。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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【お知らせ】県企画 エコーハンズオントレーニングを開催します
茨城県地域医療支援センター主催のエコーハンズオントレーニングを11月26日(土)に当院で開催します。
このハンズオントレーニングは、県内の若手医師を対象に県の主催で毎年当院で開催されているものです。講師は当院副院長の仁平先生。
仁平先生は超音波学会の指導医をもっており、なんでもエコーで見て、なんでも診断してしまうレジェンドです。
参加費用が1万円かかりますが、定員9名と少人数で、ボランティアに実際にプローブを当てて、レジェンドからエコーのコツを教えてもらえる、またとない機会ですので、あなたもぜひご参加ください!
申し込み方法は、イバラキドクターズライフのサイトにある申し込みフォームからです。
ただし、申し込み開始が9月5日からですので、忘れずにお申し込みください!
(編集長)
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CLTI 評価(Wifi分類1)
下肢動脈疾患(LEAD)の中でCLTIと呼ばれる状態は極めて予後不良な集団があります。このCLTIを早く拾い上げて、早く専門施設につなげることが下肢の切断回避だけでなく、生命予後の点でも重要です。
水戸済生会では10年以上前からLEADに対する血管内治療(EVT)に取り組んでおり、多い時で年に約160例、コロナの影響を受けた昨年も約120例ほど施行しています。そして当院は透析症例が多いという背景からEVT施行例の約7割がこのCLTI患者さんです。
今回はCLTI患者さんを見つけた時、もしくはCLTIかもしれないと思った時の評価について紹介します。
CLTIの評価にはWIFI(ワイファイ)分類が用いられます。このWIFI分類は2014年に米国血管外科学会から発表されたものですが、CLTI患者の患肢を創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化して重症度をステージングするものです。発表されてまだ日が浅いものの、その後有用性についていろいろと評価がなされ、今では最新の海外のガイドラインでも採用されています。
このWIfI分類で評価して出てくるWIfI ステージは大切断の予測に有用であることが分かっていますが、これに加えて、血管病変の複雑性を反映したGlobal Anatomic Staging System(GLASS)分類や患者リスクなどを組み合わせて、至適な治療方針を決定することが提唱されています。
さて、実際の評価項目を見ていきましょう。まずは下肢の創部の評価(Wound grading)を行います。
上図はガイドラインに掲載されているものを簡略化しています。実際にはどのグレードの点数をつけるのが良いのか迷うことがありますが、各グレードのところに「臨床的描写」が書かれていますので、それを参考にして点数を付けます。
Grade0では、虚血性安静時痛で創なし(ischemic grade 3に加えて典型的症状を必要とする)
Grade1では、小組織欠損,足趾(2本以内)の切断または植皮にて救肢可能な状態
Grade2では、大組織欠損.足趾(3本以上)の切断または標準的TMA切断±植皮にて救肢可能な状態
Grade3では、広範組織欠損.複雑な足部形成術(非古典的中足骨切断,ショパールまたはリスフラン切断)や皮弁被覆あるいは複雑な創管理を行うことでのみ救済可能な状態
次回は虚血の評価について紹介します。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
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CLTI 疾患概念・予後
末梢動脈疾患(PAD)ガイドラインが今年春に改訂されました。PADといってもピンとこないと思いますが、PADとは冠動脈疾患と大動脈疾患以外の動脈硬化性疾患を指します。PADの中で大部分を占めるのが下肢動脈疾患ですが、他に頸動脈・椎骨動脈疾患や上肢動脈疾患、腎動脈疾患なども含むので、最近のガイドラインでは下肢動脈疾患(LEAD)と呼んでいます。これは従来、下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO)と言われていたものと同義と考えてください。
最近ではこのLEADという疾患の認知度も上がってきたのですが、重篤な疾患を想起させる胸痛といった症状と異なり、下肢の症状はあまり積極的に拾い上げられていない、いざ見つけたとしても、どこに相談したら良いのか分からないので、整形外科や皮膚科や形成外科に紹介されているというケースがまだまだ多いのが実情ではないでしょうか?確かにLEADの主たる症状である間歇性跛行は通常急速に悪化するものではありませんし、大部分の症例では、何年もそのまま悪化することなく経過していきます。
しかしLEADの中でもCLTIと呼ばれる状態は極めて予後不良ですので、このCLTIについては早く拾い上げて、早く専門施設につなげることがとても重要なので、ぜひあなたにも知っておいてもらいたいと思います。
水戸済生会では10年以上前からLEADに対する血管内治療(EVT)に取り組んでおり、多い時で年に約160例、コロナの影響を受けた昨年も約120例ほど施行しています。そして当院は透析症例が多いという背景からEVT施行例の約7割がこのCLTI患者さんです。今回から改訂されたガイドラインをベースに、当院の経験も交えてCLTIについて紹介していきます。
まず、先ほどから登場しているCLTI(シーエルティーアイ)ですが、Chronic Limb-Threatening Ischemiaの略で、日本語では「包括的高度慢性下肢虚血」と訳されています。
下肢虚血,組織欠損,神経障害,感染などの肢切断リスクをもち,治療介入が必要な下肢を総称する概念で、虚血による安静時痛や下肢潰瘍,壊死が少なくとも2週間以上改善せず持続するものを指します。
もしかしたら、今までCLIという言葉を聞いたことがあるかもしれません。これはCritical Limb Ischemiaの略で、日本語で「重症下肢虚血」と呼んでいました。ところがCLIだと虚血の程度でしか評価していませんでしたが、虚血に加えて,創の部位や大きさ,感染が下肢の予後を大きく左右する要因になっていることが分かり、より的確に下肢切断リスクを反映する概念としてCLTIが出てきました。
このCLTIは血行再建を行わなければ1年以内の下肢切断率が20~30%、さらに1年死亡率も約20%という非常に予後の悪い集団です。ちなみにここでの下肢切断とは、踵がなくなる下腿レベルでの切断のことを指しており、大切断と呼んでいます。
また死亡率に関しては、ステージⅢの胃がんでは1年生存率が約80%、つまり1年死亡率が約20%ですから、どのくらい予後が悪いかが分かってもらえると思います。
もう一つ重要なことはCLTIで切断に至っても、大切断をうけた術後30日死亡率が4~22%、周術期死亡を免れても1年の死亡率は30~50%と非常に高いことです。
ですので、早期にCLTIを発見し、創治癒を得て、下肢切断を回避することが生命予後的にも極めて重要になることをぜひ知っておいてください。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
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