専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
外来心リハ
81歳の男性で、8年前に前壁の急性心筋梗塞に対してPCIを施行した既往があります。この時は最大CPKが12000Uまで上昇し、EFは30%程度で退院しました。しばらくは心不全や不整脈の出現もなく通院していましたが、徐々に労作時の息切れや心房細動が出現し、腎機能も悪化してきました。内服薬はARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬に加えてフロセミドもトルパプタンも全て服用してもらっている状況でした。心エコーもEFは全く改善なく、むしろ左室のリモデリングが進んでLVDd=60㎜と左室拡大をきたしています。
2回ほど心不全の増悪で入院歴があり、いつ心不全で入院するか分からないハイリスクの患者さんでしたが、あることを始めたら、その後は外来で利尿剤の調整などを要する程度の悪化はありましたが、心不全で入院することはなりました。この患者さんは何をはじめたのでしょう?
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答えは、外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)です。
心不全診療ガイドラインでは心不全患者の再入院の主な要因として、
1)管理不十分によるうっ血(体液貯留)の増悪
2)感染・腎不全・貧血・糖尿病・COPDなどの非心臓性併存疾患(noncardiac comorbidities)
3)薬物治療および非薬物治療に対するアドヒアランス不良(nonadherence)
が指摘されていますが、さらに高齢心不全患者の長期予後の規定因子としてサルコペニア・フレイルがあげられています。つまり再入院リスクの高い高齢で多臓器併存疾患を保有している心不全患者では、入院中だけでなく退院後にも「 QOL向上・運動耐容能向上」と「再入院防止・要介護化防止」を目指して、全身的な疾病管理とサルコペニア・フレイルを予防する運動介入の必要性が強調されています。
以前から心不全に対する多職種介入プログラム・疾病管理プログラムの有効性が多数報告されいて、心不全患者の再入院と総死亡率を有意に減少させることが示されていますが、近年では心不全患者が定期的に多職種チームによる観察・指導を受ける外来心リハが、セルフケア・生活習慣改善指導を受ける理想的な場であると認識されつつあります。
具体的には、医師・看護師・理学療法士らからなる多職種チームが
1)運動処方に基づく運動療法を退院後に週1~3程度の外来通院方式で継続
2)慢性心不全の治療アドヒアランス遵守・自己管理への動機づけとその具体的方法を指導
3)心不全増悪の早期兆候を発見し,心不全再入院を未然に防止する対策を実施する
施設ごとにやり方は異なると思いますが、外来診察室での安静時身体所見にくらべて、運動中の自覚症状・身体所見・心電図変化を観察することにより心不全増悪兆候をより早期に鋭敏に検出できる利点があります。当院では外来受診前に外来心リハをやってもらい、心リハ資格をもったリハビリスタッフの記録を確認しながら患者さんの診察をしています。
冒頭に提示した患者さんも、外来心リハを継続するなかで、自宅生活での問題点を把握し、介入できたことや早期に利尿剤等の調整を行えたことに加えて、リハビリによる運動耐容能が向上したことが、心不全入院を繰り返さなくなった大きな要因だったと考えています。
(引用:JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版)
(編集長)
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