専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
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PTEの治療は外来でOKか?

2025.06.23
カテゴリー: 循環器

この春に行われたVTEガイドライン改定では、DOAC導入後の治療の変化について多く触れられています。その中でも肺血栓塞栓症(PTE)の治療に関して、DOACを用いて外来での治療が記載されているので紹介します。

 

PTEの死亡率は、診断されず未治療の症例では約30%と高いのですが、適切な治療を実施すれば2~8%まで低下します。そして致死的PTEの75%は発症から1時間以内に、残りの25%は発症48時間以内に死亡するとされているので、迅速な治療開始が重要です。

 

そして急性PTEの治療ターゲットは、①肺血管床の減少により惹起される右心不全および呼吸不全に対する急性期の治療と、②血栓源であるDVTからの再発性PTEの予防の2つがあります。①については治療の基本はもちろん抗凝固療法ですが、VA-ECMOや血栓溶解療法などが該当します。②は抗凝固療法ですが、場合によりIVCフィルターも使用されます。

 

<急性PTEの重症度別治療戦略>

 

 

さて、PTEの外来治療に関してですが、従来は急性PTEの治療は入院での慎重な管理が基本でした。しかしDOACが広く使用できるようになった影響もあり、早期退院に加えて外来治療が可能となっています。

 

ここで重要になるのが、外来治療が可能な患者を選択するための急性期の予後リスクスコアです。外来治療に適切な患者の選択を主眼として開発されHestiaスコアは,患者背景に加えて外来治療に適する社環境の有無を項目として取り入れており,これまでに複数の研究でその有用性が報告されているそうです。

 

しかし、PESI/sPESIスコアもこの目的で用いられているようです(注:PESI/sPESIスコアは次回の記事で紹介します)。PESI/sPESIスコアはもともと急性期の30日死亡を層別化するためのリスクスコアとして開発されたものですが、PESIにより適切に選された低リスク患者は外来治療が可能であり、sPESIスコアについては日本人で行われた急性期予後に関する検証結果では、スコアが0の患者における30日の死亡率は0.5%であり,スコア1以上の患者と比較して有意低かったと報告されています。

 

残存DVTの評価などPTE再発時のリスクなどに十分注意する必要性や、がん患者に偶発的に軽症のPTEが見つかった場合の扱いなど、患者選択に関しては議論の余地がまだまだありますが、併存疾患を含めた患者背景に問題がなく、急性PTEの重症度の詳細な判定に低リスクと判断され、加えて外来治療に適した社会背景有する患者では、DOACを用いた外来治療も妥当な選択肢としています。

 

(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)

(編集長)

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