専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
【循環器】大腿穿刺のトラブル その4
前回は穿刺部のトラブルを回避するための適切な穿刺部位を紹介しました。
安全な穿刺部位は、動脈触知が良好なことに加えて、
・動脈・静脈を同時に貫通しない。
→ 動脈と静脈が重なっていないで並走している
・確実な止血が行える
→ 背側に骨頭があって、圧迫する際の土台になる。
・近傍の分枝を傷つけない
→ 小さい枝だけでなく浅大腿動脈や深大腿動脈を穿刺せず、総大腿動脈を穿刺できる
こういった条件がそろってほしいところです。
前回紹介した古寺先生の文献によると、下図のように、透視で大腿骨頭を4等分したうちの一番下方の領域で穿刺すると
・動脈と静脈が重ならない
・背側に骨頭があり圧迫できる
・皮膚との距離が近い
・分枝を損傷しにくい
という条件を満たしていました。
逆に、それ以外の部位だと、下図のように動脈と静脈が重なることが多く、また分枝に当たりやすくなるなど、注意が必要になります。
実際には皮膚と血管までの距離が少しあるため、皮膚の刺入部は透視で見た大腿骨頭下縁にすることで、この領域で血管を貫くことができます。穿刺時にはこのようにペアンなどで目印を付けておくと良いでしょう。
ここで一つ注意は、浅大腿動脈(SFA)と深大腿動脈(DFA)との分岐レベルにかなり幅があることです。多くは大腿骨頭下縁から下方で分岐していますが、高位分岐と呼ばれる、上方で分岐することも比較的多く経験します。古寺先生の文献では、大腿骨頭下縁を基準として、上方40㎜から下方35㎜と75㎜の幅で分岐していたと報告しています。
SFAやDFAを穿刺してしまうと、圧迫止血に難渋する場合があるので、穿刺は避けたいところです。SFAとDFAが高位で分岐するタイプがあることに覚えておき、過去にCTを撮影しているのなら、分岐がどのレベルなのかをよく確認しておきましょう。
(Angiologist)
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