
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
妊娠中のVTE予防
妊娠中の女性は、VTEのリスクが4~5倍増加し、産褥期は20倍に増加することが知られています。
当院には総合周産期母子医療センターがあるため、妊娠中から産褥期、さらにその後のVTE管理を行う機会が多くあります。どのような妊婦さんがハイリスクで、予防策を行うべきなのかは知っておくべき内容ですので、今回は妊娠中のVTE予防についてシェアします。
妊娠中のVTE予防の基本は理学的予防法(下肢の運動,弾性ストッキング,間欠的空気圧迫法)になります。さらにハイリスク妊婦に対して抗凝固療法を上乗せすることになります。
妊娠中のVTEのリスク分類と抗凝固療法の推奨については以下のようになりますが、第1群(高リスク群)には抗凝固療法を行い、第2群(中間リスク群)と第3群(低リスク群)に該当する症例の妊娠期間中の手術後には予防的抗凝固療法を行うかたちになります。
【第1群 妊娠中のVTE高リスク妊娠】
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中の抗凝固療法を行う
1)2回以上のVTE既往
2)1回のVTE既往,かつ以下のいずれかがあてはまる
a)血栓性素因がある
b)既往VTEはi)妊娠中,ii)エストロゲン服用中のいずれかで発症した
c)既往VTEは安静・脱水・手術などの一時的なリスク因子がなく発症した
d)第1度近親者にVTE既往がある
3)妊娠成立前よりVTE治療(予防)のための抗凝固療法が行われている
【第2群 妊娠中のVTE中間リスク】
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中の抗凝固療法を検討する
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中手術後には抗凝固療法を行う
1)1回のVTE既往があり,それが安静・脱水・手術など一時的リスク因子による
2)VTE既往がないが以下の条件にあてはまる
a)血栓性素因がある
b)妊娠期間中に以下の疾患(状態)が存在
心疾患,肺疾患,SLE(免疫抑制剤の使用中),悪性腫瘍,炎症性腸疾患,炎症性多発性関節症,
四肢麻痺,片麻痺等,ネフローゼ症候群,鎌状赤血球症(日本人にはまれ)
【第3群 妊娠中のVTE低リスク(リスク因子がない妊娠よりも危険性が高い)】
• 以下の因子を3つ以上有する女性は妊娠中の抗凝固療法を検討する
• 以下の因子を1つから2つ有する女性は妊娠中のVTE発症に留意する
VTE既往がないが以下の因子を有する
35歳以上,妊娠前BMI 25kg/m2以上,喫煙,第1度近親者にVTE既往歴,安静臥床,
長期間の旅行,脱水,表在性静脈瘤が顕著,全身感染症,妊娠中の手術,卵巣過剰刺激症候群,]
妊娠悪阻,多胎妊娠,妊娠高血圧腎症
(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)
(編集長)
Impellaのハンズオン
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