専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
心電図異常の陽性基準 ST変化
前回は運動負荷試験の中止基準について確認しました。今回は心電図異常の基準を確認していきます。
虚血性心疾患における運動負荷検査では、診断だけでなく病態の評価や予後予測、治療効果判定などの評価目的に心電図変化だけでなく、血圧増加反応の低下、心拍数上昇反応の低下、低運動耐容能なども指標にて判断していきます。心電図指標としてはST低下が有名ですが、それ以外の心電図指標の意味も頭に入れておく必要があります。
まずは虚血の判定基準は以下の通りです。
【確定基準】
・ST低下:水平ないし下降型で0.1mV以上低下(J点から0.06秒後ないし0.08秒後で測定)
・ST上昇:0.1mV以上(T波の増高に影響を受けないようにJ点付近で判定する)
・安静時からST低下がある場合:水平型ないし下降型で付加的な0.2mV以上のST低下
【虚血が疑わしい所見】
・0.1mV以上の上向型ST低下の中でもST部の傾きが小さい(≒水平型に近い 1mV/秒以下)の場合
・陽性U波の陰転化
・HR-STループが時計方向回転
【偽陽性を示唆する所見】
・HR-STループが反時計方向回転
・運動負荷中は上向型のST低下だが、負荷終了後に徐々に水平型、下降型に変化して長く続く場合(Hysteresis)
ST上昇について補足説明するとaVR以外で認めるST上昇は虚血の特徴的な所見ですが、心筋梗塞後の異常Q波がある誘導では必ずしも虚血を意味するものではありません。
HR-STループとは、横軸に心拍数を縦軸にST変位をとって、負荷開始から回復期にかけてのST変化と心拍数をグラフ化したもので、ループが反時計回転(傾きが小さい)場合には偽陽性の確率が高い、ループが時計回転(傾きが大きい)場合には陽性である確率が高いというものです。今は使われることはあまりありませんが、要は低い心拍数の時点からSTが低下してくる方が虚血の可能性が高いと覚えておけば良いと思います。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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