専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

失敗の正しい対処法

2021.08.23
カテゴリー: 臨床研修ブログ ブログ

初期研修医のころとくらべて専攻医になると、いろいろ仕事を任されたり、カテや内視鏡などの手技もさせてもらえます。初期研修医や看護師さんからも頼りにされます。とは言っても、すぐに指導医クラスのようなレベルになる訳ではないので、病棟の仕事で失敗したり、カテや内視鏡がうまくできずに指導医に交替したりすることがあります。

 

もちろん、だんだん仕事の段取りもうまくなっていくし、手技も交代せずに最後までできるようになりますが、ちょっと思い返してみるといつも同じような間違いや失敗をしているなんてことはないでしょうか?

 

編集長もよく失敗するのですが、原田隆史という方が書いた「失敗の取り扱い方」という文章が参考になったのでシェアします。その原田先生によると、

 

人は失敗を

1.直視しない(向き合わない)

2.後回しにする

3.人のせいにする

4.忘れようとする

 

その結果

5.繰り返す

 

つまり「失敗をなかった」ことにする= 「あれは失敗ではなかった」としてしまうそうです。

 

この裏には、「失敗を認めたくない」、「失敗は悪である」、「失敗は無駄である」と捉えているから、こう考えてしまうのだそうです。失敗の原因と向き合い、分析し、自分を成長させるヒントにするのが正しい失敗の対処法で、無かったことにするのではなく、自分で向き合って、カタを付けるしかないと。

 

手技については比較的わかりやすいですが、やはり失敗の原因を自分なりに分析しないと上手くなりません。ただ、失敗を失敗と認識していないこともよくあります。

 

例えば、

・いつも同じようなパターンで診断を間違える。

・いつも同じオーダーを間違える。

・いつも看護師さんに同じことを言われる。

・いつも似たようなことで患者さんとトラブルになる。

 

あなたは、こんなことを無かったことにしていませんか?

             (編集長)

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【腎臓内科】ドライウェイトの話(3)

2021.08.16
カテゴリー: 腎臓内科

前回の続きです。

 

大事な点としては除水したくてもできない場合があります。低心機能の人(AS,ARを含む)、感染症など状態が悪くて血圧が低い人(血管透過性が亢進してる人)、肝硬変で腹水はあるけど血管内脱水の人、消化管出血で貧血の人などがその例で、血圧が容易に下がってしまいます。

 

慢性期で、も糖尿病や神経変性疾患で自律神経機能低下している人や重症下肢虚血があって透析中の疼痛がひどい人も、同様に調節は難しいです。うっ血性心不全で入院した人に関しては,DWの下方修正で血圧が1段階下がることが予想されるため,血圧が低めの時には降圧薬を一部中止してベースをあげてもらえた方が除水しやすい傾向にあります。

 

透析は状態が悪い患者さんにとっておそらく,みなさんが思っているよりも急変リスクが高く,循環動態としてはダイナミックな治療です。透析開始し沢山の血液が体外に出ることで循環血漿量が減り,本来であればそれを補うようにプラズマリフィリングといって血管内に水分が移動する調節機構が働きますが,上記のような原因があるとうまく働かない,もしくは調節しきれずに血圧が下がってしまいます。

 

そういった場合、除水のスピードをゆっくりにして長い時間をかける(臨時透析を入れて透析時間を増やす)とか、急性期であればCHDFにすることなどで対応します。透析は,途中でサボることができない治療ですが,血圧がどうしても下がってしまう,いわゆる透析困難症と言われるような方にとっては,透析のたびに血圧が下がって怖い思いをしたり,失神したりと,かなりハードな状況となります。辛い思いをさせながらどこまで透析を続けるのか,どこを体の限界と判断するのかという議論に関しては,とても難しい問題です。

(おもち)

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内視鏡の話(3)特殊光について

2021.08.09
カテゴリー: 消化器内科

内視鏡について語る第3弾です。相変わらず、いち消化器内科医の勝手な個人的な意見ですので、その点だけご了承お願いいたします。

 

私が内視鏡医になったとき、既にオリンパス社によるNBIという技術は一般に浸透し始めていました。その後、今から6年ほど前に、当院にフジフィルム社のカメラが入りました(今から見ると、一世代前のモデルになります)。このモデルにはBLIとLCIという二種類の特殊光モードが搭載され、BLIはNBIと類似モードであるので使い方はそこまで困りませんでしたが、LCIについては何が見れるモードなのか、よくわかんないモードというのが正直なところでした。現在では腸上皮仮性や萎縮性胃炎の中の腫瘍性病変の検索に際して力を発揮することがわかっており、ルーチンの検査でも積極的に活用しています。

 

特殊光については、さすがフィルム会社といいますか、フジフィルムの技術はすごいな、画質と併せて一歩抜きんでているな、と内心思っていましたが、現在のオリンパスの最新内視鏡には、AFIとIRIという新しいモードが作られました。特にIRIは大量出血の中でも、出血点の見極めをサポートしてくれ、ESDの時には威力を発揮してくれます。やはり処置系ではオリンパスが優位なのか、などと思います。

 

ただ、特殊光や拡大など、内視鏡の機能が増えてくるとそれをコントロールする操作系統の工夫が必要になる。そこに両社の考え方の違いがまた現れる、と。それはまた別の話とします。

 

他の会社の内視鏡は触ったことがないのでわかりませんが、オリンパスとフジフィルム作っているのは同じ内視鏡ですが、そこに込められる思想は明らかに違います(営業マンの姿勢も違いますが)。

 

それぞれの内視鏡は日本が世界に誇る技術者たちの知恵と技術の結晶であり、この違いを感じれば感じるほど、そこに込められた技術者の想いにオタク心がくすぐられます。二社の最新機種を触り放題な環境、きっとなかなかないですよ。まだ試しでしか使ったことないですが、今後はAIにも両社の違いは大きく表れてくるとおもわれ、技術の進化が楽しみで仕方ありません。

(Nao)

真剣そのもの!

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【腎臓内科】ドライウェイトの話(2)

2021.08.02
カテゴリー: 腎臓内科

DWが適切でないと気づくチャンスは他にも複数あります。

 

透析患者の血圧は体液量に依存(前負荷のコントロールが自分の体ではできないため)するため,高血圧がうっ血を疑うきっかけになることもあります。また,透析後半の血圧上昇は心不全傾向(除水で心機能が改善している)を示唆し,逆に透析後半に急激な血圧低下がある場合にはDWが下げ過ぎているかもしれません。除水のスピードが多い場合など(後からお話します)は血圧が下がってしまうので一概に判断はできませんが,血圧の動きは一つの大事な指標です。

 

他にDWの評価の仕方としては,症状/臨床所見/血圧だけでなく,胸部レントゲンやhANP(透析後採血, 馴染みがなければBNPでみてみるのもありです)やIVC径など総合的にみて評価します。施設によっては生体インピーダンス法という体脂肪率のように水分量を評価できるやり方や,HctやBUNなどの採血結果から計算する仕方もあるようですが,自分が評価し慣れた方法で総合的にみられれば使う必要はないと思います。

 

ついでにですが,心不全の対応をみているとたまに気になることがあります。しばしば見かけるのは心不全+低酸素の方に人に痰の吸引を頻回にしていることです.確かに心不全の時は,肺炎を合併しやすいのもあって痰の量は多いかもしれません。サクションやマスクを外すことによる<苦しい・痛い>の刺激で交感神経が刺激され,心不全症状がさらに悪くなることが予想されるので,気道閉塞がひどい場合以外はなるべく最小限にするのが良いかなと思います。

 

救急外来や病棟で透析準備が整うまで待っている間,低酸素でモニターアラームはなるし,苦しそうで何かやってあげたいという気持ちもあるでしょう。NPPVを必要であれば装着することは勿論ですが,苦しいことによる不穏で忍容性がなかったり,今のご時世だとCOVID-19抗原(-)だけでも確認しないと使いにくかったり(COVID-19感染者にNPPV使用するとそのNPPVは使用後破棄になってしまいます)すぐに使用できない状況な場合もあります。

 

そんな時はキチンとベットでずり落ちている体勢から整えてhead upさせて,酸素を十分投与するだけでも多少安楽なる場合も多々あるので(大体苦しくて不穏で整えても頻回に直さないといけないことになることが多いです),研修医の先生は看護師さんがパパッと何気なくやっていることを一緒にやってみると良いかもしれません。

(おもち)

腎生検は無事終了♪

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【腎臓内科】ドライウェイトの話(1)

2021.07.26
カテゴリー: 腎臓内科

こんにちは,おもちです。

 

以前に水戸済生会の臨床研修ブログに記事を書いた時には初期研修医でしたが,月日が流れるのは早いもので、当院の内科専攻医、腎臓内科医になりました。今回から,少し腎臓内科らしく、透析の特にドライウェイト(DW)の設定について何度かに分けてお話します。

 

透析患者さんは,体の水分調節が自力ではうまくできません。これは,尿が少なくなり水分排泄ができなくなるからです。体の水分バランスを保つために透析で除水を行いますが,ドライウェイト(DW)とは<透析が終わった後,何kgになっていればその人にとってちょうど良い水分量か>を考えて決めた,目標の除水量を決める透析後目標体重のことを指します。例えば,透析前体重が64kgでDWが62kgであれば除水量は64kg-62kg+0.2kg(透析回路のプライミング分)の2.2kg除水すれば透析後に62kgになり,ちょうど良い水分バランスで患者さんが過ごせる、といった具合に使います。

 

DWは適切でないと困ります。DWが少なすぎる=水分量が足りない場合,脱水になっていることや血圧低下が起きやすいことから、脳梗塞や心筋梗塞,シャント閉塞などの血栓症のリスクが上昇します。患者さんも,透析が終わった後,倦怠感が強く出てることで日常に支障が出たり,足が攣ったり,フラフラしてしまったりといった症状として出ます。

 

DWが多すぎる場合、言わずもがな心不全になります。心不全が爆発すると喘鳴や起座呼吸のように誰が見ても一発でわかる症状が出ますが,その前にも夜間に咳嗽が出るようになったり,食欲不振や下痢(腸管浮腫)として症状が出たり,胸の違和感や喉の違和感などGERDや虚血性心疾患と同様な症状を訴える患者さんもいます。透析患者さんとして特有かなと思うのは,シャント肢のむくみとして症状が現れる人もいます。

 

前に経験したのは,虚血性心疾患の既往のある方で,病棟で頻回にミオコールスプレーを使いたいとおっしゃる方がいました。もちろん,虚血性心疾患を疑いましたが胸部違和感があるときに心電図変化はなく,SPECTまでやってもらいましたが特に新規病変を疑う所見はありませんでした。<前にも同じ事があって体重調整してもらった>との患者さんの一言で,DWを下げたところ胸部違和感はすっかり消失しました。胸部違和感は心不全の症状で,ミオコールスプレー=前負荷が軽減された事で一時的に症状も良くなっていたんだなと、結論的には理解できましたが心不全の症状を見つけるの難しいなとつくづく感じた一例でした。

 

心不全は症状が顕著になる前に,なんらかの不調を患者さんは感じている場合が多いと思います.不定愁訴として見逃されてしまうことや,別の理由でDWが下げられないこと(後でお話する)もありますが,爆発する前に見つけてどうにかしてあげたいなと思いますよね。

(おもち)

 

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内視鏡の話(2)上部消化管内視鏡

2021.07.19
カテゴリー: 消化器内科

内視鏡について無責任に語る第2弾です。今回は上部消化管内視鏡についてお話しします。ただし、今回もあくまでいち内視鏡医としての意見を無責任に語っております。当院や当科の公式の見解ではありませんのでご了承いただけますと幸いです。

 

さて、皆さんは上部消化管内視鏡のスコープ選択について重視されることは何でしょうか?

 

一般的に差が出てくるのは、操作部の扱いやすさ、太さ、画質、拡大の有無、送水ラインの有無、特殊光であろうと考えます。

 

当院で採用している経口スコープは両社(オリンパス、フジノン)とも拡大スコープで、送水ラインがあり、太さも10mm程度でほぼ同じです。経鼻スコープも太さはほとんど同じです。差は経口も経鼻も特殊光、画質、操作部の違いあたりになると思います。

 

オリンパスの操作部はしっかりとした感触で、さながらドイツ車に乗っているような堅牢感があります。長きにわたり多くの先生たちに愛されてきた、確実な操作性を新しい機種になっても必ず維持しています。

 

フジノンの内視鏡は操作部が一回り小さく感じられ、手の小さい人でも扱いやすく工夫されているように感じます。また、非常に高画質であることが特徴です。特に経鼻内視鏡の画質には目を見張るものがあり、さすがに現役の経口内視鏡には劣りますが、ひと世代前の経口内視鏡と遜色ない高画質です。フジノンの経鼻内視鏡におけるネガは、拡大がないことと送気送水が経口に比べて劣るくらいで、患者さんの苦痛を考えると拡大内視鏡が必要な精密検査以外のすべての内視鏡検査を経鼻内視鏡で行ってもいいのではないかと思うほどです。

 

私は時に検査の内容に応じて機種を指定したりすることもあります。これも、2社の内視鏡があるからこそできることです。あなたも、両社の内視鏡を使いこなせるようになりませんか?(あれ?内視鏡医、内視鏡を選ばず?)

(Nao)

 

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内視鏡の話(1)

2021.07.12
カテゴリー: 消化器内科

久しぶりに内視鏡ネタでNao先生が記事を書いてくれました。内視鏡医の中でも、いろいろ好みやこだわり、意見が異なるところだと思いますが、そういった違いを分かって、議論できるのが専門医の楽しいところだと編集長は思っています。

 

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今回は疾患についてではなく、内視鏡についてちょっと語ってみたいと思います。

 

水戸済生会では、オリンパス社と富士フィルム社の最新内視鏡を診療で使用しています。具体的にはオリンパス社の拡大経口内視鏡、経鼻内視鏡、十二指腸鏡、拡大下部消化管内視鏡。富士フィルム社の拡大経口内視鏡、経鼻内視鏡、拡大下部消化管内視鏡、コンベックス型超音波内視鏡、ラジアル型超音波内視鏡、ダブルバルーン内視鏡を使用しています。

 

今回は両社の社風の違いをお話ししてみたいと思います。ただし、病院としての意見でも、科の意見でも何でもない、あくまでも一消化器内科の個人的な意見ですので、「そんな感じなのかな」程度に聞いていただければと思います。

 

私のイメージとしては、オリンパスは内視鏡界における絶対的王者としてこれまでの技術をしっかり継承し、目新しい技術に飛びつくよりも、実績を重視しながら堅実なモノづくりをしている。車でいうとトヨタのクラウンのような存在。

 

富士フィルム社は、内視鏡界の黒船としてオリンパスの牙城を崩すべく、とにかく新しい考え方と技術で内視鏡を向上させまくっている。車で言うと、テスラのような存在かもしれません。

 

昔はオリンパスだけあればいい時代もあったと思いますが、今はこの二社のうち、どちらかがあればいいという状態にはなっていません。

 

当院では二社の特徴を実際に使用して感じれます。そして当院では二社の癖をとらえて使いこなせます。弘法筆を選ばず・・・・。

 

あなたもどんな内視鏡も使いこなせる弘法のような内視鏡医になりませんか?自分自身の癖がついてしまう前に、少しでも多くの内視鏡に触れていることはあなたの技術をより向上させます。 

(Nao)

次回に続きます

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ものの見方・・・ローテーションはなぜ必要か?

2021.07.05
カテゴリー: ブログ

編集長が先日読んだある記事にこんなことが書いてありました。

 

「もしあなたが金槌しか持っていなけれ全ての問題は釘に見えるだろう」

(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)

 

いきなり何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことだと思います。

患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、

・消化器内科医は消化器内科の観点で

・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で

・看護師なら看護師の視点で

解決策を考えます。

 

つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。

 

「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。

 

しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。

 

これを日常臨床に当てはめると、患者さんの問題を解決するためにカンファレンスなどで他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合う場が必要ということです。

 

内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションすることが求められます。もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違いますが、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。

 

自分が手にしているのは、多くの場合金槌である

 

ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?

(編集長)

消化器内科外科カンファの一コマ

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【循環器】大腿穿刺部トラブル その13(高位分岐)

2021.06.28
カテゴリー: 循環器

穿刺部のトラブルを減らすために知っておくべきことを紹介してきましたが、今回は高位分岐です。

 

このシリーズの「その3」(安全な穿刺とは)で説明しましたが、トラブルを減らす穿刺の条件は、

・動脈・静脈を同時に貫通しない。

・確実な止血が行える(背側に骨構造がある)。

・近傍の分枝を傷つけない

ということで、下図の位置が適切だと紹介しました。

 

しかし、浅大腿動脈(SFA)と深大腿動脈(DFA)が分岐する位置が、通常よりも頭側にずれていると、SFAやDFAを穿刺することになり、止血時のトラブルにつながります。

 

高位分岐は体表からでは分かりませんので、患者さんの過去のCTやエコーなど、画像から確認するしかありません。あまり穿刺部のことをCTで確認することはないかもしれませんが、やはり準備が大事です。

 

CT画像で説明すると、通常は大腿骨頭より足側でSFAとDFAに分岐します。

 

ところが、高位分岐では、大腿骨頭が写っているレベルでSFAとDFAに分岐します。

 

 

これに気づいていれば穿刺部のトラブルを減らすことにつながります。ぜひカテ前の準備でチェックしてみてください。

(編集長)

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【循環器】大腿穿刺部トラブル その12(ガイドワイヤーの特徴)

2021.06.21
カテゴリー: 循環器

穿刺部のトラブルを減らすには、使っている道具の特徴を理解しておくことも重要です。

穿刺の際に使われるシースキットにはガイドワイヤーが付属していますが、このガイドワイヤーには大きく2種類あります。

 

一つは、コアワイヤーにプラスティックをカバーしたタイプで、ラジフォーカス®が代表的なものです。

 

もう一つが、ステンレスコアに細いワイヤを巻きつけてあるスプリングワイヤー

 

ラジフォーカスタイプは滑りが良く、屈曲や蛇行が強くても挿入できますが、どこでも進んでしまうので、分枝に先端が迷入してしまう危険性があります。透視のない状況で、挿入時の手ごたえだけでは、どこに進んでいるのか全く判断できません。それだけと血管損傷のリスクが高くなります。

 

一方で、スプリングワイヤーは滑りはそれほどでもなく、高度に屈曲していると通過困難なこともあります。しかし、多くの製品が先端形状がJ型になっていることもあり、分枝に迷入しにくいワイヤーです。挿入時のワイヤーの抵抗がなくスムーズに挿入できれば、分枝損傷の危険は小さいと判断できます。逆に何らかの抵抗を感じるのであれば、それ以上挿入の手技をやめて、透視などで確認しないと、トラブル必発と言えます。

 

前回の記事で触れましたが、どうしても透視なしで大腿動脈穿刺をしなくてはいけない時には、編集長だったらシースに付属のワイヤーがどちらのタイプかを確認し、あえてスプリングワイヤーを用いてやります。特にERの現場で重症患者に鼠経部から動脈や静脈にシースを入れることがありますが、穿刺部のトラブルを起こして、かえってヤバいことにならないように慎重にすべきです。

(編集長)

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