
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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BNP/NT-proBNPの使いどころ(1)
気管支喘息で吸入薬(ICS/LABA)を継続している70歳台の男性患者さんが、休日のERを受診しました。
数日前から咳嗽がひどくなり、昨夜は眠れなかったと。発熱はなく、喀痰はいつもとあまり変わりないとのこと。喘息の中発作なのか、肺炎なのかと考えて、あなたは胸部レントゲンをオーダーしました。
レントゲンを見てみると、右下肺野に以前にはない陰影が出ていましたが、肺炎というか、胸水というか、微妙な影で判断が付きません。「臥位になるとひどくなる咳嗽」という訴えが気になり、もしかしたら心不全?と急に不安になりました。そんな時、あなたならどんな検査を追加しますか?
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こんな時に役に立つのがBNPまたはNT-proBNPです。今回から、このBNP/NT-proBNPの使いどころを紹介していきます。
【BNPについて】
まず、BNPはナトリウム利尿ペプチドと呼ばれるものの一つです。心室にて、壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し、速やかに生成・分泌されるため、壁応力が増大する心不全では、その重症度に応じて血中濃度が増加するという特徴があります。
主な作用は、ナトリウム利尿、血管拡張、アルドステロン分泌抑制などで、心不全の診断、治療効果の判定、予後予測に有用で、欧米のガイドラインでも、本邦のガイドラインでも取り上げられています。
なお、ナトリウム利尿ペプチドには、心房性(ANP)、脳性(BNP)、C型(CNP)の3つがあり、ANPは心房から97%、BNPは心室から90%、心房から10%分泌されています。BNPが心室から分泌されているのに、脳性ナトリウム利尿ペプチドとなっているのは、ブタの脳から単離精製されたためのようです。
【NT-proBNPについて】
一方NT-ProBNPは、BNP前駆体から分離された非活性型のペプチドで、BNPと等モルが分泌されます。
ANPは半減期が短く、検体採取後も不安定のため検査にあまり向いていません。3者の違いを以下の図にまとめてみました。BNPとNT-proBNPの検査の際には、血漿なのか血清なのか、検体の保存方法などの違いから、NT-proBNPを使う施設が多い印象です。NT-proBNPは血清を用いるので、通常の生化学検査をしていれば、あとから追加して検査できるのは大きなメリットだと思います。
また心不全で処方されるARNI(アルドステロン受容体ネプリライシン阻害薬:エンレスト®)は、BNPの分解を阻害しますので、服用開始から8~10週程度は高値になり、その後低下してくることを覚えておく必要があります。
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
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水戸済生会の内科研修プログラム説明会をZoomで開催します。
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日時:2025年9月26日(金)
19時開始(40~50分程度の予定です)
場所:Zoom
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④循環器内科の専門研修
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