臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
ERでSTMIに遭遇した時の対処法④
前回に続いて、PCIの準備ができるまでの少し時間で患者さんから情報を聞き出すポイントを紹介しています。
4.本人や家族への説明
患者さん本人はじっくり話を聞く余裕がありませんし、点滴されたり、薬を飲まされたり、フォーレを入れられたりと訳が分からない状況でしょう。そこで家族がいれば病状や治療の必要性を要領よく短時間で説明します。原則として同意書にサインをもらう必要もあります。
でも日常臨床では家族がいなかったり、救急車に同乗してきたのが高校生の孫で、あとから他の家族が自家用車で向かっているなどという状況があります。個々の事例で判断していくしかないと思いますが、筆者の個人的な考えとしてはSTEMIであれば「Time is Muscle (時は心筋なり)」と「虎穴に入らずんば虎児を得ず」を判断の基準にしています。つまり家族の到着を待たずにPCIをやらなければいけないことは実際にありますし、状態の悪い人ほどPCIが起死回生の決め手になり得ます。
また、カテ室に移動した後でもERに残ったあなたや看護師さんから家族に簡潔に状況を説明して安心してもらうことは重要だと思います。ドクターはPCIのことで頭がいっぱいになり、家族のことまで気が回らないことが多いでしょう。でも家族は一体どうなっているのか早く知りたいと思っています。仮に良くない結果になった場合、ここでのコミュニケーションが上手くいっていないとあらぬ疑いをかけられるかもしれません。あなたの冷静な状況判断と適切な対応が大きなカギを握っています。
5.カテ室へ移動する時は
AMI患者がERにいる場合、常に心電図モニターを見えるようにしておく必要があります。何故かというと、いきなり前触れなくVT(心室頻拍)やVF(心室細動)を起こすことがあるからです。
AMIで死亡する患者の大半が病院到着前に亡くなっていますが、これはVTやVFなどの致死性不整脈が原因です。再潅流性不整脈と呼ばれるもので、冠動脈が血栓で閉塞してAMIになりますが、血栓が自然に溶けて再び冠動脈に血液が流れ込む時にVTやVFが起こりやすいのです。当然こういったことがERにいる間にも起こり得ます。筆者の印象ですが、年に1例くらいは経験します。起こるかもしれないと心の準備があれば、慌てずに電気的除細動をすればすぐに戻ることが多いのですが、心の準備がないとかなり焦ってしまいますね。
なので、モニターをいつも見えるようにしておくこと、患者を一人きりにしないこと、カテ室に移動する時もできればAEDや除細動器と一緒に移動しましょう。特にエレベーター内で患者さんの具合が悪くなると編集長でもちょっとビビってしまいます。研修医の先生などでも構いませんから、この症例のように移動の際にもドクターがそばにいるのが望ましいです。
(編集長)
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