
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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咳嗽失神
70歳台後半の女性が入院していました。ある日、病棟の看護師からあなたのところに連絡がありました。
「患者さんが気を失ったのですぐに来てください!」
あなたが病棟に行くと、患者さんの意識は戻っていて、受け答えも問題ありません。バイタルも問題なし。ベッド上にいたのですが、気を失う前には、立て続けに咳込んでいたそうです。そして、気を失ったときの心電図モニターには約10秒の洞停止が記録されていました。
あなたは不整脈(洞不全症候群)が原因の失神発作と考えて、一時ペーシング目的に循環器内科にコンサルトをしようとしました。でも、その後はまったく徐脈が出現していません。
さて、ホントに一時ペーシングが必要でしょうか?
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高齢患者で10秒の洞停止がとらえられているので、洞不全症候群による失神は当然鑑別にあがりますが、その後は全く徐脈は見られないとなると、この状況で考えることは「咳嗽失神」です。
「咳嗽失神」とは、日常動作の特定の状況で誘発される「状況失神」の一つです。中年の男性に多く、喫煙者やCOPD患者に多く発症するとされます。失神に至る機序としては、①胸腔内圧が上昇によるものと、②迷走神経反射によるものの二つがあるとされます。
①については、胸腔内圧が上昇することで静脈還流量が低下し、心拍出量の低下によって脳血流が低下することや、胸腔内圧上昇により脳脊髄圧が上昇して脳動脈を圧迫することによって脳血流を低下させることで失神を生じるとされています。
冒頭の症例は、約10秒の洞停止を来していることから、おそらく迷走神経反射に伴うものと考えていますが、その後は徐脈も症状も全く出現しませんでした。
治療としては、誘因となる咳嗽を減らす必要があり、禁煙や鎮咳薬、肺の基礎疾患の治療となります。
(編集長)
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