臨床研修ブログ

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全身性毛細血管漏出症候群(SCLS)【ケースで学ぶ初期対応】

2026.01.13
カテゴリー: 救命救急センター

こんにちは。ドタバタ研修医のテラメガネです。

前回の「入院患者がショックバイタルを示したとき、現場でどう対応するか?」の続きです。

 

前回はバイタルや所見からは敗血症性ショック+循環血液量減少性ショックが考えられるものの、Covid19以外で感染示唆する所見なく、輸液も十分にしているにもかかわらず、尿量が得られないという症例を紹介しました。ひとまず輸液と昇圧薬でバイタルは落ち着いたものの、ショックの鑑別を絞り切れないままICUへ転床したところ、某ICU長の先生がこんなことをおっしゃっていました。

 

「これSCLSじゃない?」

 

当時は何もわかりませんでしたが、調べるとそれっぽく、最終的にその診断となったのでSCLSについて紹介したいと思います

 

【全身性毛細血管漏出症候群(Systemic Capillary Leaking Syndrome ;SCLS)について】

 

SCLSは血管内皮バリア機能の一過性破綻を本態とし、血管内皮細胞間接着分子の機能障害や、患者血清中の可溶性因子による内皮透過性亢進が関与すると考えられている致死的疾患です。

 

古典的三徴は

①Hypotension(低血圧) 

②Hemoconcentration(血液濃縮) 

③Hypoalbuminemia(低Alb血症)

とされており、いずれも急速に進行します。

 

その一方で臨床症状は、発熱、倦怠感、筋肉痛と非特異的なため、よく敗血症性ショックや循環血症量減少性ショックと間違われるそうです。

 

SCLSは以下のような二相性の臨床経過を辿る疾患です。

漏出期:血漿が血管外へ大量に漏出

回復期:血管透過性が急速に正常化し、血管内に再分布

 

主な死因としては

漏出期→ショックによる多臓器不全

回復期→Refillingによる肺水腫→呼吸不全

 

この疾患は再発を繰り返し、因果関係は不明ですが80%程度の方でM蛋白陽性となります。

 

この疾患の本質は血管内皮細胞そのものの破壊や炎症ではなく、可逆的な血管透過性亢進です。つまり、血管炎とは違い、内皮細胞は保たれたまま細胞間結合が一過性に機能不全となっています。その結果、Alb含む血漿成分がすべて漏れる一方で赤血球など大きい物質は血管内に残ります。そのため、上記三徴や臨床経過を辿ります。

 

特にVE-cadherinの機能低下や、RhoA/Rac1経路を介した細胞骨格再編成が示唆されているようですが、特定の自己抗体は同定されておらず、病態は未だ完全には解明されていないそうです。

 

僕が経験した症例もSCLSを疑って、免疫グロブリンの投与を行ったところ、びっくりするくらい速やかに改善して、独歩退院できました。後日、M蛋白も検出されてSCLSと診断しましたが、初期対応から含めて、非常に印象に残る症例でした。

 

参考文献

Idiopathic systemic capillary leak syndrome (Clarkson disease)
Druey KM, Parikh SM.J Allergy Clin Immunol. 2017
より引用)

 (ドタバタ研修医のテラメガネ)

 

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入院患者がショックバイタル!現場でどう動く?【ケースで学ぶ初期対応】

2026.01.08
カテゴリー: 救命救急センター

こんにちは。

ドタバタ研修医のテラメガネです。

今回は「入院患者がショックバイタルを示したとき、現場でどう対応するか?」について、実際のケースをもとに反省の意も兼ねて解説させていただきます。

 

ある日の当直で…

ほぼ完徹だった当直、ひと段落した午前6時…

「入院中の患者さん、普段と様子は変わらないけど血圧が測定できない…」

そんな連絡がPHSにかかって来たら、あなたはどう動きますか?

 

まずは評価!

PHSのままで現在のバイタルを確認しましょう。

特にAirwayに異常が無いかは、PHS越しで確認しましょう。

 

電話では以下の内容がわかりました。

意識清明

HR108、RR24、SpO2 98%(RA)、BP測定不能

到着後、あなたはどうしますか?

 

一次評価のポイント

患者さんのところに到着したら、実際に自分でもABCDE評価しましょう!

 

A:会話可能か。いびきあるか。胸郭の運動は正常か。吸気に狭窄音無いか。

B:陥没呼吸あるか。呼吸回数(簡単に速いか 規則的か)、SpO2

C:脈は中枢と末梢で触れるか。CRT 皮膚色 BP 心電図波形

D:GCS 瞳孔

E:体温、皮疹など。

 

実際の評価は以下の通りでした。

A:会話可能 

B:呼吸音清でSpO2保たれている 

C:橈骨動脈触れず冷感あり 
  モニター波形変化なし、BP60/45程度
D:GCS E4V5M6、

E:BT37.8 全身に皮疹ないが四肢に軽度浮腫認める。自覚症状は倦怠感のみ

 

→代償破綻したショック

では次になにをしますか?

 

評価をもとに介入!

評価が終わったらそれに合わせた対応をしましょう。

今回は血圧を安定させるために以下の介入が検討されると思います。

 

1. 人を集める
2. モニター・酸素・救急カートを準備
3. 動脈ガス採取
4. 輸液ライン2ルート確保(全開投与)
5. 昇圧剤準備

 

私が評価している間に、ERのお姉さん方が心配して様子を見に来てくださいました。そのためコードブルーはせずに、一緒に当直をしていた上級医の先生だけ呼んでいただきました。

 

今振り返るとバイタルの安定と同時並行でショックの原因精査をするために人をもっと集めるべきだったかもしれません。

 

介入後の評価、介入

浮腫が強く2ルート確保できず、CV挿入し輸液全開で投与。
生食全開で投与するも反応なし
末梢からノルアドレナリン0.03γで開始してBPやや改善

→ひとまずバイタルはこれ以上崩れることはなさそう。

 

ショックの鑑別と二次評価

バイタルへの介入がおわったら次は原因精査です。

(繰り返しになりますが、本来は同時に行うべきです)

 

SAMPLE聴取 カルテ確認、血液ガス、レントゲン、エコー(rush exam)などで原因精査しましょう

 

情報をまとめると70代女性、ADL自立されていた方でCKD+感染症による腎前性AKIで三日前に緊急入院となった方。陳旧性心筋梗塞やコントロール不良のDMの既往歴があり、1500ml/dayの輸液で治療されていたが無尿。連日のL/DではHb19HCT55程度、WBC20000、CRP8程度となっていました。

 

静脈ガスのデータは (動脈血ガスを取るつもりでしたが・・・)

pH7.20程度pO2 40 PCO2 30 HCO3- 10.8 、Na127 K5.75 Cl-98.0 Lactate 8程度

血糖値は225 Hb17.6  でした。

 

Rush examでは (詳細は偉大な先輩がまとめてくれたこちらをご覧ください

pump:心嚢液貯留なくEF50%以上はありそう D shepeもなさそう

tank : IVC 虚脱

Pipe : CV挿入優先し評価せず。

胸部Xp:肺炎像、心拡大なし。

 

上記の情報から、あなたはどんなショックを想起しますか?

当時の僕は以下のことを考えました。

 

鑑別

・WBC CRP高値+輸液反応性乏しい qSOFA 2点 

→血流分布異常性ショック、その中でも敗血症性ショックか。

感染のフォーカスは同定できず、強いて言えば尿路感染症か。

 

・Hb HCT高値でIVCも虚脱

→循環血漿量減少性ショック
1500ml/day +食事で脱水になり得るのか? 心原性ショックや閉塞性ショックは積極的に疑わず

 

まとめると、バイタルや所見からは敗血症性ショック+循環血液量減少性ショックが考えられるものの、Covid19以外で感染示唆する所見なく、inも十分にある一方でoutはないことが気持ち悪い。

 

介入とその後

ノルアドレナリン投与、血液培養・MEPN投与しCT撮影するも明らかな膿瘍はわからず。カテコラミン投与下でMAP 60mmHg程度、輸液後も頚静脈虚脱、四肢に浮腫出現

 

ICUに入室すると某先生が次のようなことを話していました・・・・次回に続きます!

(ドタバタ研修医のテラメガネ)

 

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胸部外傷の時は「TAFな3X」

2025.12.25
カテゴリー: 救命救急センター

年末にER当番をしていたら、バイクの単独事故の患者さんが搬送されてきました。橈骨動脈は蝕知できるけど、脈が速く、皮膚は冷たくしっとりしていて、意識もイマイチです。何より呼吸がおかしいことに、あなたも一目見て分かりました。聴診すると胸部で呼吸音に左右差があります。そのうちに橈骨動脈も触れなくなってきました。

 

何が起こったのでしょう?

今回は胸部外傷の患者に遭遇した時の対応についてです。外傷患者でもABCDEが基本となりますが、B(Breathing & Breast)の評価には「呼吸・頸部の評価と致命的な胸部外傷の処置」が含まれます。

 

モニターで酸素飽和度や呼吸回数の変化に注意を払いながら、胸部では

・外傷性出血は?

・胸郭挙上は?

・左右差は無いか?

・奇異呼吸は?

・呼吸音の左右差は?

・胸郭の動揺は?

・圧痛は?

・皮下気腫は?

・頸静脈の怒張は?

・呼吸補助筋の使用は?

・気管の偏位は?

 

これらを素早く評価して、すぐに処置をしないと致命的な疾患を見逃さないようにします。致命的な胸部外傷を疑う状況では「TAFな3X」が役立ちます。

 

TAFな3X(タフなスリーエックス)とは、

 

T:Tamponade Cardiac 心タンポナーデ

A:Air way obstruction 気道閉塞

F:Flail chest フレイルチェスト

X:Open pneumothorax 開放性気胸

X:Tension pneumothorax 緊張性気胸

X:Massive hemothorax 大量血胸

 

これらはABCの異常がオーバーラップしているので生命に直結してきます。ERで行う処置は、気道確保、人工呼吸、陽圧換気、胸腔ドレナージですが、複数を併発していることもあるので、繰り返しの評価も重要になります。

 

冒頭の症例は、緊張性気胸を起こしていたため血圧低下を来していましたが、ドレナージで改善できた症例です。外傷患者では素早い評価と対応が重要です。

(編集長)

水戸医学生セミナーでの一コマ

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巨人の肩に乗る・・・舩越先生のレクチャー

2025.08.26
カテゴリー: 救命救急センター

昨日のことですが、東京ベイ浦安市川医療センターの救命救急センター長の舩越拓先生にZoomでレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログで何度も紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。

 

今回は「巨人の肩に乗る」というテーマで、CPRについてレクチャーしていただきました。ただし、CPRと言っても心肺蘇生法(Cardiopulmonary Resuscitation)のことではありません。今回の話は臨床予測ルール(Clinical Prediction Rule)の方のCPRです。

 

具体的には、

・小児の頭部外傷でCTを撮影するかを判断するときのPRCARN

・成人の頭部外傷でCTを撮影するかを判断するときのNew Orleans CriteriaCanadian CT Head rule

・成人の膝関節や足関節外傷でレントゲン撮影をするかを判断するときのOttawa Knee ruleOttawa anckle rule

といったものが、今回のレクチャーで取り上げられていました。

 

さて、「巨人の肩に乗る」という話ですが、臨床判断は経験を積んだベテランになるほど良くなるというデータがあるそうです。とは言っても一人で経験する症例には限りがあります。例えば、小児の頭部外傷も一人の救急医が見るのは、数百人とかせいぜい千人台と言ったところではないでしょうか。

 

でも上述のPECARNは4万人以上のデータから作られたものなので、はるかに精度が高くなります。当然、使わない手はありません。これが「巨人の肩に乗る」ということ。うまくCPRを使うことで、未熟な経験を先人に補ってもらう、疲れた夜間でも判断がぶれないという利点があります。

 

注意点としては、対象患者(除外されている患者)は誰なのか?何をアウトカムとしているのか?を確認する必要があると舩越先生は強調していました。

 

あなたもさっそく次のER当直からCPRを用いて、信頼性の高い診療につなげてみてください。

(編集長)

 

 

追伸

ちなみに舩越先生はこのCPRについての著書もあります。

「救急検査ケースファイル:Clinical Prediction ruleのオモテウラ」

分かりやすいので、ご覧になってみてください♪

 

 

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心停止時の鑑別は?・・・6H6T

2025.06.19
カテゴリー: 救命救急センター

募集していた「第24回水戸医学生セミナー」ですが、おかけ様で定員に達しましたので、お申し込みを締め切らせていただきました。ご応募いただき有難うございました。この2日間が有意義な時間になるよう準備を進めてまいりますので、セミナーまで少々お待ちください!

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さて、今回は医学生セミナーでも扱う内容の復習です。

ある夜にあなたがERをやっていたところ、救急要請が飛び込んできました。

 

「50歳台の男性のCPA(心肺停止)症例です。自宅で胸痛を訴えたあとに突然意識を失いました。」

 

10分かからないうちに救急車は病院に到着しました。救急隊員が車内で点滴ルートを確保してくれて、胸骨圧迫を続けいていますが、まだ自己心拍は再開していません。あなたもERの看護師さんらとともに、手際よく胸骨圧迫を代ったり、薬剤投与を行います。

 

でも、この時にあなたには、もう一つやらなければいけないことがあります。

それは何でしょう?

それはCPAの原因を探ることです。なぜCPAに至ったのか、その原因がわからなければ同じことを繰り返してしまい、せっかくROSC(自己心拍再開)しても、その心拍をつなぎ留めておくことができなくなってしまいます。

 

蘇生と同時に、蘇生する先の「なぜ」を探る必要がありますその鑑別が「6H6T」です(5H5Tと言われることもあります)。

 

6H6Tとは、

 

Hypovolemia(循環血液量減少)

Hypoxia(低酸素)

Hydrogen ion(アシドーシス)

Hypo/Hyperkalemia(カリウム異常)

Hypoglycemia(低血糖)

Hypothermia(低体温)

 

Tamponade(心タンポナーデ)

Toxins(毒)

Tension pneumothorax(緊張性気胸)

Thrombosis coronary(冠動脈疾患)

Thrombosis pulmonary(肺動脈血栓)

Trauma(外傷)

 

この鑑別を常に頭の中に入れ、心肺蘇生法を行いながら、採血、レントゲン、エコーを隙間を縫いつつ行っていきます。蘇生の先を見据えて行動することで、救命~社会復帰を手繰り寄せることができるのです。

 

なお、冒頭の症例はROSC後に冠動脈造影を行い、左冠動脈主幹部の閉塞を認めて急性心筋梗塞と診断されました。PCIとECMO+Impella管理で改善し、無事退院して社会復帰できました。

(編集長)

 

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舩越先生のZoomレクチャー2025・・・ER診療における大原則

2025.05.13
カテゴリー: 救命救急センター

5月7日に東京ベイ浦安市川医療センターの救命救急センター長の舩越拓先生にZoomでレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログで何度も紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。

 

編集長とはIVRつながりから兄弟子、弟弟子という関係で、コロナ前からレクチャーをお願いしていました。昨年に引き続き、今年度も4~5回はレクチャーをしていただく約束を取り付けて、今回のレクチャーとなりました。

 

毎年のことですが、年度初めは「ER診療における大原則」というテーマでお話いただきました。昨年もこのブログで内容をシェアしましたが、聞くたびに味が出る話(?)なので、今回もシェアしたいと思います。

 

ER診療の特徴を整理すると以下の4つになります。

 

①⼀般病棟と違うところ → Problem searching

 ERは患者の何が問題なのかを明らかにする場

 

②専⾨医と違うところ → Rule out worst scenario

 ERでは診断に固執せず、最悪のシナリオを除外する

 

③⼀般外来と違うところ → Vital sign

 バイタルサインは裏切らない、バイタルに異常がある患者は安易に帰宅させない

 

④⽇中とちがうところ → Egalitarian(平等主義者)

 救急患者のすべてが緊急性を要しない。通常の医療システムから抜けた患者が緊急の顔で来ているだけ。相⼿の事情をまずは理解してなにかできないか考える

 

編集長的には④に関しては、ぜひあなたにも考えてもらいたいポイントでした。夜の微妙な時間に受診する患者さんに対して、モヤモヤしてしまうのは当然のことです。

 

でも、その患者さんは日中の仕事を休めなかった、もし休んだら解雇されていたかもしれない。日中はご家族の世話があって、自分の体調が悪くとも受診できなかったかもしれない。そんなことをあなたも少しでも想像する必要があります。

 

そして、あなたにはそんな医療システムから抜けた患者さんに対して、医療システム(もしくは病院)の代表として振る舞ってほしいと思います。

 

次回の舩越先生のレクチャーは8月に開催することで調整していますので、またご紹介します♪

 

(編集長)

 

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TAFな3X

2025.01.07
カテゴリー: 救命救急センター

年明け早々にER当番をしていたら、バイクの単独事故の患者さんが搬送されてきました。橈骨動脈は蝕知できるけど、脈が速く、皮膚は冷たくしっとりしていて、意識もイマイチです。何より呼吸がおかしいことに、あなたも一目見て分かりました。聴診すると胸部で呼吸音に左右差があります。そのうちに橈骨動脈も触れなくなってきました。

 

何が起こったのでしょう?

今回は胸部外傷の患者に遭遇した時の対応についてです。外傷患者でもABCDEが基本となりますが、B(Breathing & Breast)の評価には「呼吸・頸部の評価と致命的な胸部外傷の処置」が含まれます。

 

モニターで酸素飽和度や呼吸回数の変化に注意を払いながら、胸部では

・外傷性出血は?

・胸郭挙上は?

・左右差は無いか?

・奇異呼吸は?

・呼吸音の左右差は?

・胸郭の動揺は?

・圧痛は?

・皮下気腫は?

・頸静脈の怒張は?

・呼吸補助筋の使用は?

・気管の偏位は?

 

これらを素早く評価して、すぐに処置をしないと致命的な疾患を見逃さないようにします。

致命的な胸部外傷を疑う状況では「TAFな3X」が役立ちます。

 

TAFな3X(タフなスリーエックス)とは、

 

T:Tamponade Cardiac 心タンポナーデ

A:Air way obstruction 気道閉塞

F:Flail chest フレイルチェスト

X:Open pneumothorax 開放性気胸

X:Tension pneumothorax 緊張性気胸

X:Massive hemothorax 大量血胸

 

これらはABCの異常がオーバーラップしているので生命に直結してきます。

ERで行う処置は、気道確保、人工呼吸、陽圧換気、胸腔ドレナージですが、複数を併発していることもあるので、繰り返しの評価も重要になります。

 

冒頭の症例は、緊張性気胸を起こしていたため血圧低下を来していましたが、ドレナージで改善できた症例です。外傷患者では素早い評価と対応が重要ですね。

(編集長)

ERで申し送り中

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心停止の鑑別・・・6H6T

2025.01.04
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あなたが年始からER当番をやっていたところ、救急要請が飛び込んできました。

 

「70歳台の男性のCPA(心肺停止)症例です。自宅で胸痛を訴えたあとに突然意識を失いました。」

 

10分かからないうちに救急車は病院に到着しました。救急隊員が車内で点滴ルートを確保してくれて、胸骨圧迫を続けいていますが、まだ自己心拍は再開していません。あなたもERの看護師さんらとともに、手際よく胸骨圧迫を代ったり、薬剤投与を行います。

 

でも、この時にあなたには、もう一つやらなければいけないことがあります。それは何でしょう?

それはCPAの原因を探ることです。なぜCPAに至ったのか、その原因がわからなければ同じことを繰り返してしまい、せっかくROSC(自己心拍再開)しても、その心拍をつなぎ留めておくことができなくなってしまいます。

 

蘇生と同時に、蘇生する先の「なぜ」を探る必要がありますその鑑別が「6H6T」です(5H5Tと言われることもあります)。

 

6H6Tとは、

 

Hypovolemia(循環血液量減少)

Hypoxia(低酸素

Hydrogen ion(アシドーシス)

Hypo/Hyperkalemia(カリウム異常)

Hypoglycemia(低血糖)

Hypothermia(低体温)

 

Tamponade(心タンポナーデ)

Toxins(毒)

Tension pneumothorax(緊張性気胸)

Thrombosis coronary(冠動脈疾患)

Thrombosis pulmonary(肺動脈血栓)

Trauma(外傷)

 

この鑑別を常に頭の中に入れ、心肺蘇生法を行いながら、採血、レントゲン、エコーを隙間を縫いつつ行っていきます。蘇生の先を見据えて行動することで、救命~社会復帰を手繰り寄せることができるのです。

 

なお、冒頭の症例はROSC後に造影CTで急性肺動脈塞栓症と診断されました。ECMO管理で改善し、無事退院となった症例です。

(編集長)

慌ただしい年始のER

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舩越先生のZoomレクチャー2024・・・治療方針の決め方

2024.09.19
カテゴリー: 救命救急センター

9月18日に東京ベイ浦安市川医療センター救命救急センター長の舩越拓先生に今年度2回目のZoomレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログで何度も紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。編集長とはIVRつながりで、兄弟子、弟弟子という関係で、コロナ前からレクチャーをお願いしていました。

 

今回は「治療方針の決め方」というテーマでお話いただきましたので、その中から一部をシェアします。

 

治療の甲斐なく患者さんが悪くなっていくことがありますが、そんな時に挿管してECMOまでやるのか?挿管はやらない?カテコラミンは?という感じに、どこまでの治療を行うか決める場面にあなたも遭遇したことがあるはずです。

 

患者さんの考えを尊重して、どこまでの治療を行うかの方針を決めるのが理想ですが、現実には「挿管しますか?」「胸骨圧迫をしますか?」「カテコラミンを使いますか?」「ECMOを装着しますか?」といった感じで話が進んでいるのではないでしょうか?

 

こんな時に役立つのが「3 step approach」です。

 

Stage1:Sharing knowledge

 多職種で患者がどのような状態か判断し、内容を決める。患者に説明する

 

Stage2:Clarifying goal of care

 ケアのゴールを明確にする。患者が大事にしていたり、避けたい状態などがあるのか

 

Stage3:Negotiating treatment options

 治療方針の決定、インフォームドコンセント

 

ここで大事になるのがStage2です。患者さんの価値観を聞き出して、どのような治療が良いのか、どのような最後を迎えたいのかを、患者さんに話してもらうことに時間を使います。患者さん自身から聞き出せない場合なら、家族など患者さんを良く知る人に「患者さんなら何と言うでしょうか?」「患者さんなら、どうしたいと言いますかね?」というように患者さんの価値観を探る質問をするのがポイントです。

 

 

そのうえで治療方針を決めますが、目指すゴールを明確にすることで、治療のオプションが決まってきます。例えば、挿管しない方針なら、胸骨圧迫はする必要はありませんよね。

 

参加した研修医はこのような判断を求められる状況に何度も遭遇しているので、レクチャー後に舩越先生に積極的に質問して盛り上がっていました。いろいろと心に刺さる舩越先生のお話だったと思います。

 

初期研修中に直接自分が話すことは無いかもしれませんが、初期研修を終えたとたんに自分で話すことになります。あなたも今から自分事として考えてみてください。

(編集長)

 

今回の内容に関連して、

こちらの本もおススメです

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舩越先生のZoomレクチャー2024・・・ER診療の大原則

2024.06.08
カテゴリー: 救命救急センター

6月5日に東京ベイ浦安市川医療センター救急集中治療科(救急外来部門)部長の舩越拓先生にZoomでレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログで何度も紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。

 

編集長とはIVRつながりから兄弟子、弟弟子という関係で、コロナ前からレクチャーをお願いしていました。昨年に引き続き、今年度も4,5回はレクチャーをしていただく約束を取り付けて、今回のレクチャーとなりました。

 

今回は年度初めでしたので、「ER診療における大原則」というテーマでお話いただきました。その中から内容を少しシェアしたいと思います。

 

ER診療の特徴を整理すると以下の4つになります。

 

①⼀般病棟と違うところ → Problem searching

 ERは患者の何が問題なのかを明らかにする場

 

②専⾨医と違うところ → Rule out worst scenario

 ERでは診断に固執せず、最悪のシナリオを除外する

 

③⼀般外来と違うところ → Vital sign

 バイタルサインは裏切らない、バイタルに異常がある患者は安易に帰宅させない

 

④⽇中とちがうところ → Egalitarian(平等主義者)

 救急患者のすべてが緊急性を要しない。通常の医療システムから抜けた患者が緊急の顔で来ているだけ。相⼿の事情をまずは理解してなにかできないか考える

 

なるほどですよね。そして研修医は①のProblem searchingがなかなか上手くいかないことが多いのですが、そのTipsも紹介してくれました。

 

問題解決のためのTipsは、とにかくΔ(デルタ)をはっきりさせる ことです。

 

“ここ最近で急に調⼦が悪くなって”で終わらせない
 ・そもそもどういう状態なのか(もともと歩けていた? 寝たきり?)
 ・いつからそれが損なわれたのか(何日前? 何週間前? 何か月前? 何年前?)

 ・それに対してどうなっていたのか(悪化している? 不変? 改善傾向?)
 ・なんで今、ここに来たのか
 ・そもそも、その情報信頼できますか(本人? 同居家族から? 非同居家族から?)

 

ぜひあなたもこの点を意識しながら患者さんの話を聞いて、問題点を明らかにしてみてください。

(編集長) 

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