臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
救命救急センターだより「病院前診療における脳卒中診断2」
空飛ぶ消化器内科医を夢見て日々奮闘しておりますnaoです、こんにちは。
前回の記事が中途半端で終わってしまいましたので、続きです。
病院前の脳卒中診断のためには「シンシナティ病院前脳卒中スケール」というのが有名かと思います。これは
- 顔面筋の左右差
- Barre徴候
- 構音障害
で脳卒中の可能性を判断するものです。
最近の脳卒中の病院前診療では、血栓回収の適応があるLarge Vessel Occlusion(LVO)を的確に見抜くことも大切になります。そこで日本医科大学から提唱されたのが、ELVO screen (Emergent Large Vessel Occlusion screen)です。これは
- 眼球変異のチェック
- 眼鏡や時計を見せて、これは何ですか?と質問する
- 4本の指を見せて、指は何本ありますか?と質問する
2は失語、3は視野欠損や半側空間無視に焦点を当てた質問だそうです。LVO予測としての感度は85%、特異度は72%と報告されています。
LVO screeningについては現在研究が活発に行われているようで、兵庫医科大学からJapan Urgent Stroke Triage score(JUST score)というものも発表されています。これで脳卒中の可能性だけでなく、LVOなのか、脳出血かSAHかといった病型まで分類できるといわれています。発表時21項目でしたが、より簡便性を高めるためにJUST-7 scoreといって7項目まで減っています。
OJTとしてヘリミッションで救急科Drにくっついていくと、指導医の先生たちは現場でこれは出血っぽいとか梗塞っぽいとか判断しているのですが、自分には脳卒中だろうというところ止まり、正直なところ病型の分類ができないので、JUST scoreを使いこなして病型分類にたどり着けるようになりたいと思っています。
現場活動では、なにかと経験が大切に感じますが、足りない経験は専門家の知恵を借りて補いましょう!笑
(Nao)
ドクヘリの格納庫内
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
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救命救急センターだより「病院前診療における脳卒中診断」
空飛ぶ消化器内科医を夢見て日々奮闘しておりますNaoです、こんにちは。
病院前診療において、ドクターカーとドクターヘリに求められる役割に少し違いがあります。(これは多分に私の個人的な意見が含まれるため、一部当センターの基本姿勢と相反する部分があるかもしれません)
本来的には病院前診療というものは病院到着前に迅速に医療介入することが主目的です。当院が水戸市と共同運航するドクターカーは患者搬送能力を持つ、いわゆる救急車方式ですが、病院・地域によってはラピッドレスポンスカーという、単に医療従事者を搬送するためだけの方式もあります。どちらにもメリット・デメリットがあるわけですが、単純にラピッドレスポンスカーって見た目が非常にかっこいい車が多くて憧れますよね(注:個人の感想です)。
つまり、ドクターカーの場合、病院への搬送能力だけで言った場合、救急車を超えることは全くないため搬送手段としてはドクターカーは不要です。あくまで現場への医療スタッフ派遣、あるいは搬送途上での医療スタッフ接触です。
極論では、ABCDの異常に対してのみドクターカーは価値を持ちます(ABCDの異常があっても救命救急士に許される特定行為は非常に限定的です)。
一方で、ドクターヘリは少し意味合いが変わってきます。というのは、搬送能力が(条件によっては逆転することもありますが)救急車よりも高いという点です。この場合の能力はあくまで搬送に要する時間という意味になります。
ですので、脳梗塞、特にLarge Vessel Occlusionではドクターヘリの搬送能力が求められることになります。脳梗塞疑いに対してドクターカーが出動する意味合いは低いが、ドクターヘリでは意味がある(私個人の意見ですが)と考えます。
かといって、脳卒中疑いの患者を何でもかんでも血管内治療可能な医療機関に運んでしまってはキャパシティオーバーとなってしまいます。もちろん、アメリカの脳卒中センターのように1日何十件でもかかってこい、という状況なら別ですが、日本の医療事情はだいぶ異なります。つまり、現場で脳梗塞なのか、脳出血なのか、脳梗塞なら血栓回収の適応がありそうかどうかなどを判断していく必要があります。
そこで役に立つのがELVO screeningなわけですが、今日は長くなってしまったので来週に続きます。タイトル詐欺みたいになってすみません。
(Nao)
ドクヘリに患者収容
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救命救急センターだより「鼠径ヘルニア嵌頓」
先日、鼠経ヘルニア嵌頓の患者さんが転院搬送されてきました。そこで今回は鼠経ヘルニアに対して用手還納を試みる際の注意点についてお話ししたいと思います。
鼠経ヘルニアについてはガイドラインが存在しますが、ガイドラインは基本的に外科的治療についての話が主体となっており、用手還納については基本的に言及がありません。ですので、私個人的な注意点という形になりますので、参考程度にとどめていただければと思います。
まず、ヘルニア嵌頓に対して用手還納を行ううえでどのような点に注意が必要でしょうか?
1.還納手技の際に腸管損傷をしてしまう(遅発的な間膜損傷の報告もあります)。
2.腸管壊死のため、結局嵌頓解除後に穿孔してしまう。
3.壊死腸管の急速な血流改善により、サイトカイン放出によるショック
などがあります。ですので、単純でよいので極力CT検査は行うことが望ましいです。
腹水や腸管浮腫などの(free airは論外ですが)、腸管壊死を疑う所見がないかをまず確認します。私は、加えて超音波を行い、腸管の血流を評価したり、ヘルニア門の位置を確認をしたりします。ヘルニア門と脱出臓器をしっかり確認することで還納がより確実になります。還納前に、腸管浮腫やヘルニア嚢内に腹水があるような症例では、用手還納後もできれば入院経過観察が望ましいと考えます。ルニア嵌頓は今後高齢化社会の中で増えてくるかもしれませんね。
(Nao)
水戸済生会のICU
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救命救急センターだより「ECMOとPCPS」
空飛ぶ消化器内科医を目指して救急科修行中のnaoです。こんにちは。
先日のドクターカー出動事案で実は初めての経験がありましたので、ご報告します。比較的若年の方のCPAで、目撃あり、バイスタンダーCPRありという救命を目指せる事案でした。初期波形はVFでDCを何度かかけ、その後PEA。現場で挿管し、ライン確保の上、自院へU turn搬送しました。直ちに救急外来直結のハイブリッドカテ室に搬入しPCPS導入しました。
以前にもお話ししたように当院はコロナに対してECMO対応していたため、呼吸状態悪化からのECMOは経験がありましたが、心肺停止患者さんに対してのPCPS導入に立ち会うのは今回が初めての経験でした。ほとんどAが全く触れない中で救急科Drたちの恐ろしい速さでのシース留置に驚きましたが、循環器Drがすぐに到着したため、そのまま循環器に引継ぎ、PCPS開始し併せて冠動脈造影に移行していただきました。
さて、今回あえてここまでECMOとPCPSという単語をごちゃまぜにして書いてみましたが、現場ではECMOという単語とPCPSという単語を使う人とに分かれていて、用語がわからないと話が通じないという状況になります。
ECMOはextracorporeal membrane oxygenationといい、体外式膜型人工肺と言われます。脱血管と送血管の留置の位置の違いでVV ECMOとVA ECMOと呼ばれます。
VV ECMOはrespiratory ECMOとも呼ばれ、重症の呼吸不全患者に対して適応になります。VA ECMOはcardiac ECMOとも呼ばれ、重症心不全患者に対して適応になります。
PCPSはPercutaneous cardio pulmonary supportといい、経皮的心配補助を指します。つまりV-A ECMOとほぼ同義です。ですので、今回の現場で言うECMOは(VA-)ECMOを指していたわけです。
ECMO導入は初めてで自分は救命士と交代でCPRしていただけという形でしたが、動きが少し理解できたので、次回からは自分のできる仕事の幅を広げていきたいと考えています。
ちなみに、この事案、実は最初に現場直近の中核病院に収容依頼をしたのですが、依頼中にROSCしたため当院へ搬送した事案になります。この時、僕のプレゼンがひどいもので、Hotに対応してくださった先生が、「復唱」という形で僕に簡潔明瞭なプレゼンを指導してくれた(ように感じた)ということで強く記憶に残った症例です。プレゼン力、大切ですね。
(Nao)
空飛ぶ消化器内科医
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救命救急センターだより「子育てとスマホ」
皆さんこんにちは。空を夢見る消化器内科医です。
当救命救急センターではInstagramをはじめました。「水戸済生会救命救急センター」でぜひ検索してください!
さて、当救命救急センターで運用しておりますドクターカーですが、これは水戸市からの委託で水戸市消防と共同で運用しています。365日8時半ごろから17時ごろまで稼働しています。
ドクターカーの車両および2名の救急隊員は水戸市から、医師と看護師は当院のスタッフになります。そのため、出動の際には救急隊とコミュニケーションをとる機会にもなり、いろいろな情報を得る機会にもなります。
先日、小児の事案で出動した際に救急隊から言われた話で、はっとしたことがありましたので記事にさせていただきます。その日の要請内容は幼い子が遊具で遊んでいた際に転落し、頭部打撲で意識混濁とのことで覚知要請(119通報があった時点で要請内容から重症度が高いと判断しドクターカー出動)されました。実際には先着隊が軽症と判断してキャンセルとなりましたが、帰路に救命士と話している際に、一つ大切な話を聞いたので皆さんにもお伝えします。
その救命士さんも幼い子を持つ親であり、お子さんを公園に連れていく際などに周りの親御さんの様子で思うところがあったようです。というのも、最近はスマホの画面ばかり見ていて、お子さんが危険な行動をしていても全く見ていないというシーンが多く、スマホさえなければ防げる事故も多かろう、と日々思っておられるとのことでした。そのためその方は子守の時はスマホは家に置いて、通話にしか使えないガラケーを持って歩いているそうです。そのせいでスマホに子供の写真が少ないのが難点だ、とおっしゃっておられましたが・・・。
多くの場面でこの判断の仕方は大切だと思いました。自分は今何を最優先に行動すべきなのか、ちゃんとそれを考えていかなければならないな、と思った次第です。
(Nao)
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救命救急センターだより「スマートデバイスとこれからの医学」
皆さんはスマートウォッチなどを使用しておられるでしょうか?
原理を調べていないのですが、アップルウォッチが心電図のモニタリング機能を搭載するようになるなど、これまでは病院にしかなかった医療機器を、だれもが身に着ける時代になってきました。当院の救急外来にもスマートデバイスからの「指示」で救急外来を受診するケースが散見されるようになってきました。これからご紹介するケースは実例で、ご本人様にもブログで紹介させていただくことをご了承いただいたものになります。
50代の特別な既往のない、自立生活を営む女性が、起床時に息苦しさを自覚されました。アップルウォッチで経皮的血中酸素飽和度を測定したところ、普段は97-98%であるものが88%程度とのことで病院を受診されました。
病院でSpO2を測定したところやはり88%程度とのことで、急いで検査を始めました。担当してくれた研修医の先生もとても優秀で、しっかりと低酸素血症の鑑別を頭に入れながら検査を組み立ててくれました。
心電図やレントゲンでは特に問題は指摘されませんでしたが、採血でd-dimerが30程度と異常高値であり、CTにて肺動脈血栓塞栓症を指摘し、遅滞なく循環器内科へコンサルし治療に移ることができました。
「私ちゃんと考えて最初からd-dimer取ってましたから!」ドヤァと素敵な笑顔な研修医の先生でしたが、引き続きいろいろな経験をしながらより頼もしく成長してくれることを願っています。
当院の救急外来では研修医の先生たちが一生懸命勉強しながら地域医療を支える重要な戦力として頑張ってくれています。医学生の皆さんも当院で一緒にドヤ顔医療しませんか?医学生の皆さんの当院の救命センターの見学をお待ちしております!
(Nao)
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救命救急センターだより「AIUEOTIPS(アイウエオチップス)」
実は空飛ぶ消化器内科医を目指す僕は県外の大学で大学生活をなんと8年もしています。そして何の縁か、大学時代のもとの学年の友人、つまり現在は2年先輩医師となった友人が同じ病院で働いています。その友人との会話。
友人脳外科医:「研修医になるとかかる病気があるんだよ。学生のうちは大丈夫なんだけど、学生のうちはあんなにちゃんとしてたのに、研修医になったら突然かかるんだよ。知ってっか?」
空を夢見る医師:「そんな病気あったか???」
友人脳外科医:「あるんだよ。『意識障害=脳卒中』病」
空を夢見る医師:「あぁ…」
友人脳外科医:「あぁ、じゃねーよ真面目な話だよ。お前意識障害の鑑別言えるか?」
空を夢見る医師:「えーと、脳出血とか、SAHとか…」
友人脳外科医:「待てよ。意識障害って言ったら、鑑別で覚える有名なやつあんだろ。いきなり脳出血からスタートするなよ。お前も同じ病気かかってんじゃねーのか?お前救急医になりてえんだろ?ちゃんとしろよ。」
意識障害の鑑別:AIUEOTIPS
A:alcohol(アルコール・ビタミンB1欠乏)
Apoplexy(脳卒中)
Acidosis(代謝性アシドーシス、循環不全)
I:Insulin(低血糖・高血糖→糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧性昏睡)
U:Uremia(尿毒症)
E:Encephalopathy (脳症→肝性脳症、副腎不全による二次性脳症、高血圧性脳症)
Encephalitis(脳炎)
Endocrinopathy(内分泌疾患→粘液水腫、甲状腺クリーゼ、副腎不全など)
Electrolytes(電解質→ Na,K,Ca,Mgの異常)
O:Opiate(麻薬)
Overdose(薬物中毒)
Oxygen(低酸素血症)
CO2(高二酸化炭素血症)
T:Trauma(頭部外傷→脳挫傷、急性硬膜外 血腫、慢性硬膜下血腫)
Temperature(高体温・低体温)
Tumor(脳腫瘍)
I:Infection(感染症)
P:Psychiatric(精神疾患)
Porphyria(ポルフィリア)
S:Stroke/SAH(脳血管障害)
Seizure(てんかん重積)
Syncope(失神)
Shock(ショック)
Senile(老年症候群)
(*他にもいろいろあるので、自分なりのAIUEOTIPSを作ってください)
皆さんは僕と同じ病気に罹患しないよう、しっかりとせっかくの知識を使ってくださいね。
(Nao)
ドクヘリの現場
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救命救急センターだより「基本の大切さ」
皆さんこんにちは。食欲の秋ですね。
空飛ぶ消化器内科医を目指している僕ですが、もともとの体重に加え、食欲の秋でさらに体重を増しそうな不安がありますが、ヘリの燃費にも間違いなくかかわってくるので、ダイエットを敢行しようと計画だけはいつもしています。
今回は、あまり医学的な話ではありませんが、研修医の先生と話題に上がったことをお話しします。
それは、意外と「サイドブレーキ引き忘れによる事故」が多いということです。サイドブレーキを引き忘れた結果、自身の車にひかれたり、サイドブレーキを引き忘れた友人の車に押しつぶされたりなど、「基本」を怠ったことによる事故が意外にもあります(最近の車は、そもそも「サイドブレーキ、パーキングブレーキ」がないものもありますが)。
しかし自分たちを振り返えってみると、届けられたインシデントレポートの内容には、リキャップをしない、本人確認を徹底する、オーダーを発行する前に間違いがないか確認をするなどの、基本的事項を怠ったことによる事故というのが大多数を占めていることが分かります。
技術が必要な部活動などを頑張ってこられた方はよくわかると思いますが、一部の天才などに例外はあるものの、何事にも型があり、安定した成果やより難易度の高いプレーなどには、基本的な型を徹底できていることが重要です。
「慣れ」というのは、緊張感を取り、安定して仕事に取り組むためにある程度大切なことだとは思いますが、何事も基本の上に成り立つということを忘れないように気を付けたいなと思いました。
(Nao)
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◆内科専門研修プログラム説明会@Zoomを開催します!
来年度からの専門研修をどうするか? 医局はどうしたらいいのかお悩み中のあなた。
医局に属さずに消化器内科、腎臓内科、循環器内科のサブスぺ資格を取得できる
水戸済生会の内科専門研修プログラムについて、下記日程で説明会を開催します。
J2が対象ですが、関心のあるJ1や医学生も参加可能です。ぜひご参加ください。
日時:2022年9月21日(水)20時~(40分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略について
②消化器内科の専門研修について
③腎臓内科の専門研修について
④循環器内科の専門研修について
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救命救急センターだより「腹臥位療法」
当院の研修医は本当に優秀で、自分が研修医時代に同僚じゃなくてよかったと心から思っていますが、あっという間に抜かれてしまうのだろうと戦々恐々としています。
今日はドクヘリ当番♪
さて、僕は空飛ぶ消化器内科医を目指して修行中ですが、当院のコロナチームの立ち上げメンバーであります。当院は呼吸器内科不在ですが、心臓血管外科、循環器内科がひじょーに活発ですので日ごろからECMOを回しており、社会的責務として当院は重症コロナを診なければならなくなる、と思いコロナチームで少しでも力になりたいと思い入りました。実際、当院ではたくさんの重症コロナ患者さんを治療し、ECMOも回してきました(たくさん嫌な思いもして大変でしたが…)。
そこで救急科医師との距離が縮まり、わがままを言って2021年5月から救急科の仲間に入れていただきました。以来、空飛ぶ消化器内科医に必要な技術と知識を実戦の中で教えてもらっています。
救命センターでは救急車が来ない時間帯には研修医たちが勉強してきたことを持ち寄って講義してくれたりします。人に伝えることが一番の勉強にもなりますからね。
この週末はチェストドレーンバッグ、呼吸器のAPRVモードや腹臥位療法について学びました。チェストドレーンバッグについて学んだ直後に高度の気胸の患者さんにドレーンを留置したのでとっても学びになりました。
前置きが長くなりましたが、腹臥位療法がなぜ良いのか、について教えてもらったことを分かち合いたいと思います。
ずっと臥位で治療を続けていると青丸の肺領域は広がっていきますが、重力の問題で、黒丸の領域は肺が縮んで無気肺気味になってしまいます。
これを腹臥位にすることにより、黒丸の領域に空気が入るようになるため肺胞が均一に使えるようになるため呼吸状態を改善しやすくなります。また人工呼吸器関連肺障害を回避するためにも有効な手立てと言われています。
しかし、実際腹臥位療法を行うと、腹臥位にした瞬間からどんどんと呼吸状態が改善するのを経験します。これは血流不均衡の改善によるものです。
背臥位では重力的に肺がつぶれている領域に多く血流が分布します。そのためガス交換の効率が低下しています。
これを腹臥位にすると、血流の分布が適正化されるため腹臥位にして間もなくから呼吸状態が改善すると考えられます。
あんまり原理をわからずに、腹臥位が良いといわれて腹臥位にしていましたが、こういう理論的裏付けがあったのだと今更ながら知りました。
(Nao)
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J2が対象ですが、関心のあるJ1や医学生も参加可能です。ぜひご参加ください。
日時:2022年9月21日(水)20時~(40分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略について
②消化器内科の専門研修について
③腎臓内科の専門研修について
④循環器内科の専門研修について
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救命救急センターだより「救急外来でのエコー」
たびたび当ブログで取り上げている、救急外来でエコーを積極的に当てよう、という話ですが、皆さん実践しておられるでしょうか?
まだ学生だよ、という皆さんは病院の見学の際にぜひエコーを当てさせてもらってください。
意外と当院の研修医の先生がこの記事を読んでくれて、「あの腹痛できた患者さん、採血結果出るまでエコー当て見てもいいですか?」と積極的にエコーを当てて勉強してくれている姿にとてもうれしく、誇りに思ってみています。
今回は何人かの研修医の先生にエコーを実際に当ててもらった際に伝えたことをブログでも書かせていただこうと思います。
以前の記事でも肋骨を避けてエコーを当てる、という点をコツとしてお伝えしたのですが、肝臓や腎臓を診るときに避けて通れないのが肋骨や胸骨です。
そのような部位を観察するときは、大きく吸気してもらい、深吸気で息を止めてもらいます。その時に、エコープローブを骨の下に潜り込ませるような気持ちで倒しこんでみると肝臓が良く見えます。
実際にこれをやってみると気付くのですが、エコーを潜り込ませるようにしっかり当てるには、かなりの力でプローブを患者さんに押さえつける必要があります。なので、患者さんの状態によっては痛みを伴います。
ということで、コツは2点。
・深呼気や深吸気などの呼吸の協力をお願いする。
・しっかりプローブを押し付けて、観察する。
この点を心がけてやってみてください。また気づいたことがあればお伝えしようと思います。
ところで番外編なのですが、先日胸痛、冷汗で救急搬送されてきた患者さんがいました。心電図で今一つ虚血と診断するに乏しい所見でしたが、心エコーで前壁の壁運動の低下が認められたため循環器内科に相談しました。
実は症状出現から3時間程度だったので、相談後に結果の出た採血でも心筋逸脱酵素の上昇には乏しい所見でしたが、カテで前下行枝の閉塞認め、そのままPCIでうまく治療できました。
僕の専門は消化器内科で、あまり良い研修医でなかったこともあり、これまで心エコーをしっかり勉強してきていませんでした。空飛ぶ消化器内科医を目指すにあたり、救急外来でチャンスがあるたびに心エコーを繰り返し行ってだんだんと所見が取れるようになってきました。
僕も修行中ですので、皆さんも恥ずかしがらず、まず積極的に当ててみるところから始めてください。
(Nao)
格納庫の中!
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