臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。

CPC報告 赤痢アメーバ(2)

2022.10.06

CPCからのシェアの続きです。

 

症例は50歳台の独身男性。主訴は下痢、腹痛でした。近医で加療を受けたものの症状改善なく、腎機能も悪化したため当院に紹介となった患者さんで、約1か月の経過で腸管穿孔、汎発性腹膜炎、多臓器不全となり亡くなったケースです。

 

<赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)>

 

【重症化リスク】

糖尿病、アルコール中毒、悪性腫瘍、妊娠、ステロイド投与、免疫不全状態など

 

【診断】

・糞便検査で原虫(嚢子or栄養体)を検出 → 栄養体は速やかに検鏡することが重要

・内視鏡検査:多発する潰瘍病変、潰瘍間の粘膜は正常であることが多い

・E.histolycaに対する血清抗体検査も有用であったが2019年3月時点で試薬製造が中止された。

 →現在はE.histolycaの抗原検出法やPCR法による検出は一部の施設に依頼可能である。

 

【治療】

・メトロニダゾール内服が第一選択

・治療効果判定 → 治療終了1-2週間後に糞便検査で赤痢アメーバの陰性化を確認する。

・メトロニダゾール治療後に嚢子に対する治療として、パロモマイシンによる根治治療が推奨される。

 

この症例の反省点は、渡航歴や性交歴の確認ができていなかったため、赤痢アメーバを鑑別に挙げられていなかったことに尽きます。独居の独身男性のため性行為感染症(STI)も鑑別に入れるべきで、もし把握できていれば鑑別に挙げることは比較的容易であった可能性が高いです。しかし一般的に、性行為感染症(STI)の鑑別に性交歴を聞き出すのは、ある程度患者さんとのコミュニケーションが取れていないと聴取は困難ですし、家族も把握していないのは当然です。この症例のように急速に病状が悪化する時は、さらに聞き出すのは困難になります。当院に入院した時点で重症化していたので、結果は変わらなかったかもしれませんが、もしかしたら助けられた症例であったと思うと悔しいですね。

 

今回は赤痢アメーバによる重症腸炎の症例でしたが、良く分からない症例ほど病歴を詳細に聴取することがとても大事で、聴取した病歴からいろいろな可能性を考えて鑑別疾患を挙げていくことができます。良く分からないときは患者さんのところに行ってみると大きなヒントが隠されています。

(編集長)

赤痢アメーバの栄養型

(大腸病変部の固定標本)

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CPC報告 赤痢アメーバ(1)

2022.10.04

先月のことですが、院内でCPCが開催されました。CPCでは2症例が提示されましたが、そのうちのJ2の2人が発表してくれた赤痢アメーバによる重症大腸炎の症例を2回に分けてシェアします。

 

症例は50歳台の独身男性。主訴は下痢、腹痛でした。近医で加療を受けたものの症状改善なく、腎機能も悪化したため当院に紹介となった患者さんで、約1か月の経過で腸管穿孔、汎発性腹膜炎、多臓器不全となり亡くなったケースです。

 

ちなみに、この症例の診断のキモは問診でした(次回に紹介します♪)。

 

<赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)>

【感染経路】

感染者の糞便に排泄されるシスト(嚢子)の経口感染による。発展途上国では汚染された水や飲食物を介して感染が起き、本邦では同性間・異性間性的接触(口腔・肛門性交)で感染する

 

【流行地域】

発展途上国を中心に世界中で流行。本邦では流行地域への渡航・滞在、男性同性愛者間、知的障害者施設入所者に多い

 

【発生頻度】

日本では年間800件ほどで、9割が男性

 

【潜伏期間】

通常2-4週間が潜伏期間だが数か月~数年に及ぶ場合もある。

 

【症状、検査所見】

感染者のうち5-10%が発症。

イチゴゼリー状の粘血便、下痢、テネスムス、排便時の下腹部痛、体重減少など(発熱に至る例は肝膿瘍を認めることが多い、基本的には稀)。盲腸~上行結腸、S状結腸~直腸など大腸に病変が多い。時に肉芽腫様病変や潰瘍部が壊死性に穿孔することがある。

(編集長)

矢頭はS状結腸壁の菲薄化・大きな穿孔

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救命救急センターだより「スマートデバイスとこれからの医学」

2022.10.01
カテゴリー: 救命救急センター

皆さんはスマートウォッチなどを使用しておられるでしょうか?

 

原理を調べていないのですが、アップルウォッチが心電図のモニタリング機能を搭載するようになるなど、これまでは病院にしかなかった医療機器を、だれもが身に着ける時代になってきました。当院の救急外来にもスマートデバイスからの「指示」で救急外来を受診するケースが散見されるようになってきました。これからご紹介するケースは実例で、ご本人様にもブログで紹介させていただくことをご了承いただいたものになります。

 

50代の特別な既往のない、自立生活を営む女性が、起床時に息苦しさを自覚されました。アップルウォッチで経皮的血中酸素飽和度を測定したところ、普段は97-98%であるものが88%程度とのことで病院を受診されました。

 

病院でSpO2を測定したところやはり88%程度とのことで、急いで検査を始めました。担当してくれた研修医の先生もとても優秀で、しっかりと低酸素血症の鑑別を頭に入れながら検査を組み立ててくれました。

 

心電図やレントゲンでは特に問題は指摘されませんでしたが、採血でd-dimerが30程度と異常高値であり、CTにて肺動脈血栓塞栓症を指摘し、遅滞なく循環器内科へコンサルし治療に移ることができました。

 

「私ちゃんと考えて最初からd-dimer取ってましたから!」ドヤァと素敵な笑顔な研修医の先生でしたが、引き続きいろいろな経験をしながらより頼もしく成長してくれることを願っています。

 

当院の救急外来では研修医の先生たちが一生懸命勉強しながら地域医療を支える重要な戦力として頑張ってくれています。医学生の皆さんも当院で一緒にドヤ顔医療しませんか?医学生の皆さんの当院の救命センターの見学をお待ちしております!

(Nao)

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