臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
特発性気腹症
今回も修学生の集いで発表した内容からのシェアです。ネギトロ先生は外科研修中に経験した症例を発表しましたが、その内容をもとにブログ記事まで書いてくれました♪ 役に立つ内容ですので、ぜひ読んでみてください。
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救急外来で急性腹症の方が来院したとき、鑑別すべき疾患はさまざまですが、単純X線やCTで腹腔内遊離ガス(free air)をみたときにはまず消化管穿孔を第一に考えると思います。
腹腔内には通常空気は存在しないため、
腹腔内にairがある=腸管に穴が開いて腸管内容物が腹腔内に流出している
と考えられるわけです。
消化管穿孔とひとくちに言っても穿孔部位によって対応は異なり、上部消化管穿孔の場合には絶食・補液、胃管挿入、PPI投与で保存的に加療されることが多いです。一方で、下部消化管穿孔の場合には、汎発性腹膜炎をきたすため、基本的には緊急で手術の方針となります。
ですが、外科をローテーション中に部消化管穿孔が疑われたにもかかわらず、穿孔部位が同定できなかった症例を経験したので、それに関して調べたことについてご紹介したいと思います。
原因の同定できない腹腔内遊離ガス像のことを「特発性気腹症」と呼びます。
その原因は、ガスの流入経路から大きく5つに分類されます。(Gantt CB Jr et al: Am J Surg 1977; 134: 411-414)
- 胸腔内(気胸、縦隔気腫、閉塞性換気障害、肺炎、胸部外傷など)
- 腹腔内(空腸憩室症、呑気症など)
- 産婦人科的疾患(急性卵巣炎、卵管脱出、分娩後の運動など)
- 医原性(卵管通気法、開腹術、腹膜透析など)
- その他
特に、消化管由来の腹腔内遊離ガスの原因としては、
・腸管内圧の上昇に伴いガスのみが流出するような粘膜の脆弱性の存在
・ガスのみが流出するような微小穿孔の存在
などが考えられています。
特発性気腹症に関してはしばしば保存的治療を選択することもあり、その条件としては
① 腹膜刺激症状がない
② 意思疎通が良好で腹部症状の経時的変化を評価できる
③ 炎症反応が軽度
④ CTで腹膜炎、腹水等の所見、その他器質的疾患を認めない
などが考えられています(国友ら: 日腹部救急医会誌 2018; 38: 1163-1165)。
また、特発性気腹症と考えられた症例でも、腹痛があること、炎症反応が高いこと、腹水が存在していることなどが手術の選択に関与しているといった報告もあります(佐藤ら:日臨外会誌 2013; 74: 346-351)。
つまり、検査所見も重要ですが、身体所見を正確にとることが手術を選択するかどうかにおいて非常に重要ということです。緊急性を要する場面でも適切に必要な身体所見をとれるようにしていきましょう。
(ねぎとろ)
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なぜ3週間もかかったのか?
元旦と2日と年が明けて立て続けに心痛む災害や事故が発生しています。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。1日でも早くもとの生活に戻れるようお祈りいたします。
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さて、先月開催された茨城県の修学生の集いで、当院のJ2が優秀賞を3名もいただきましたが、その発表からのシェアです。今回は内田先生の発表から。内田先生は地域研修として常陸大宮済生会病院で2か月間の研修を行った際に経験した症例からでした。
症例は70歳台の直腸がん患者。遠隔転移はないのですが、手術をすればストマ造設となる症例でした。診断もついて手術のはずが、実際に手術が行われたのは、入院してから3週間後でした。
なぜ3週間もかかったのでしょう?
実はこの患者さんは、障害者福祉施設に入所していました。手術後にストマを造設すると、術後のストマ管理は入所していた障害者福祉施設では対応できないため、新たな療養先は介護施設に移る必要がありました。
ご家族の居住地も施設から離れていたため、この患者さんの手術までに下記の手続きが必要だったそうです。
・障害者福祉施設の退所手続き
・住所変更 (現在の自治体からの転出続き+世話をするご家族の自治体への転入手続き)
・介護保険の申請、医療保険の手続き
・ストマ助成の手続き
ここで介護と福祉の違いをあなたは言えるでしょうか?(編集長も良く分かっていませんでした)
介護とは、日常生活を送るうえで歩行・排泄・食事・入浴など必要な便宜を供与すること。つまり、その人に「直接」働きかけること
社会福祉とは、社会生活を送るうえで児童、母子、心身障害者、高齢者などに公的な支援を行うことで、社会的制度や環境を整えることを意味するそうです。
単に「直腸がんだし、ストマ造設は仕方ないね」と思わずに、退院後の生活をイメージして患者さんの抱える課題を理解し、MSWなどの専門家と一緒に行動することはとても大事です。症例を通して、このような地域・社会資源の「課題」=「ニーズ」に気づいた内田先生は素晴らしいですね。あなたも、このような視点を意識できる医師になって欲しいと思います。
(編集長)
表彰式での内田先生
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新年のご挨拶
昨日発生した能登半島での大地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被害の全貌はまだまだ分かっていない段階ですが、東日本大震災を経験した編集長としては、地震と津波で大変なことになっているのはリアルに想像できるので心が痛みます。当院としても、編集長個人としても、できることをやっていきたいと考えています。
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ブログ読者のみなさま
新年明けましておめでとうございます。本年もこのブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年最初のブログでは、キャリアなどの将来計画に関するネタを紹介してきました(ちなみに昨年はキャリアのVSOP論でした)。
キャリアに関して紹介してきたポイントは2つあって、一つ目は自分が40~50歳になった時に、どこで、どんな仕事をしているかをイメージしてみる、つまり「到達目標の設定の必要性」。もう一つは、臨床のスキルを身に付けるだけでなく、医学以外のことにも関心をもって大きな変化に対応できるようになる、つまり「変化することを怖がらずに行動する」ことでした。
さて、今年はここからです。上記のことを意識して、あなたも目標を考えてみて欲しいのですが、その考えた目標を実行に移す方法について紹介します。
まず、考えた目標をノートに書いてみましょう。もちろんノートでなくとも手帳でもOKです。できればキーボードで入力よりも、自分で手書きで書くのがイイと思います。これは頭で考えただけでなく、文字に起こすことで、より目標が明確になり、あなたの意識に残りやすくなるからです。
そして大事なことは、実行することです。このコツは、最初の小さい一歩を決めること。Small stepとかBaby stepとも言いますが、目標をプロセスに分解して具体的なアクションをイメージしていくことが大事で、その最初の一歩は絶対にできることにしましょう。昨年よく取り上げられていた大谷選手の目標達成シートみたいな感じです。
大谷選手の目標達成シート
元プロアイスホッケー選手のウェイン・グレツキーの有名な言葉で
打たないシュートは100%外れる
というのがあります。あれこれ考えてばかり、コメンテーターみたなことばかり言わないで、ぜひ行動してみる。今年はあなたが実行する年になってください。
そして今年もこのブログでは、当院の魅力とや研修医たちの活躍や成長を発信していきたいと考えていますので、ぜひご期待ください。
改めまして、本年もよろしくお願い申し上げます。
(編集長)
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