
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
化学的と物理的・・・治療の2つの軸
70歳代の男性が発熱で入院しました。右のCVA叩打痛と尿所見から尿路感染症と診断しました。尿培養と血液培養を採取後に抗菌薬(CTRX)を開始。培養結果は、尿培養からも血液培養からも素直なE.coliが検出されました。感受性をみても抗菌薬は当たっているのですが、5病日目になっても解熱しないし、患者さんの右CVA叩打痛やCRPも良くなってきません。
こんな状況に遭遇したら、あなたはどうしますか?
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もし、あなたが「抗菌薬の変更」を考えていたのなら、残念ながら不正解です。
多くの人にとって感染症治療といえば抗菌薬の選択というイメージを持っていると思います。もちろん抗菌薬が重要な軸であるのは間違いないのですが、もう一つの重要な軸も忘れてはいけません。それが「物理的に除去する」ということです。
松永先生のレクチャーの中で「治療の2つの軸」として「化学的と物理的」が紹介されています。そもそも、抗菌薬の役割は微生物を「化学的に除去する」ことですが、用量が少なすぎたり、目的のところに十分到達しなければ効果は得られません。ドレナージや洗浄、切除(切断)、人工物の除去など「物理的に除去する」ことを外科医などと協力して治療を行うことを忘れてはいけません。
物理的に微生物を除去する対象には、具体的に以下のようなものがあります。
-膿瘍
-「うっ滞性」感染症
・胆石・腫瘍による胆道閉塞 ⇒ 胆管炎
・尿路結石による尿路閉塞 ⇒ 尿路感染症
-人工物
・中心静脈ライン
・動脈ライン
・人工呼吸器
・胃管
・尿カテ
・人工弁
・人工関節 など
-壊死組織
冒頭の症例は右尿管結石による水腎症があったことから、抗菌薬の点滴のみでは改善に乏しかった症例です。エコーで水腎症を認めたことから、泌尿器科で尿管ステントを留置してもらって水腎症を解除したところ速やかに改善が得られました。感染症治療の際は抗菌薬だけで安心しないで、物理的な治療の必要性も常に考えておきましょう。
(編集長)
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どこで?何が?・・・診断の2つの軸
90歳近くの高齢の患者さんが発熱を主訴に入院してきました。COPDと心筋梗塞の既往があって、ADLは一応自立していたけど、発熱と体動困難となり受診。胸部レントゲンで右肺に肺炎像を認め、肺炎の診断で抗菌薬を開始しました。ただ、入院を契機に経口摂取は難しいと判断し、高カロリー輸液で栄養管理を行っていました。幸い、発熱も酸素化も改善し、抗菌薬は効いているようです。
ところが抗菌薬を開始して7日を過ぎたころに再び高熱を来しました。
誤嚥のリスクは非常に高い人なので、誤嚥性肺炎と判断して抗菌薬を変更しましたが、この時採取した血液培養から、4本中4本からカンジダが検出されました。
カンジダ肺炎でしょうか?? あなたならどう対応しますか?
ここで「肺炎なのに血培からカンジダ?」と、あなたが違和感を感じたのならかなり臨床センスがありますね。
多くの人は「COPDもあるし、カンジダ肺炎か。カンジダだったら抗真菌薬に変更しなくては」としか考えません。
でも、ちょっと考えてみてください。いくら高齢でCOPDがある患者さんと言え、血液疾患や抗がん剤投与中でもないのにカンジダが肺炎の起炎菌になる得るのでしょうか?
松永先生のレクチャーで何度も登場してきますが、感染症診断の2つの軸は「どこで」、「何が」でした。
「どこで(=感染巣)」が分かると、起炎菌が絞れます。
「何が(=起炎菌」」が分かると、感染巣が絞れます。
血液疾患や抗がん剤投与中でもない患者さんで、血液培養からカンジダが検出された時には、まずカテーテル感染を疑います。抗真菌薬の投与だけでなく、カテーテルの抜去を考える必要があります。
培養結果は後日に結果が判明するものですが、必ず目を通して今までの経過と矛盾がないか、抗菌薬を開始した時のアセスメントが正しかったのかを振り返ってみてください。
(編集長)
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1か月が経ちました
J1のあなたが病棟にデビューして1か月が経ちますね。恐らく、あっという間だったと思います。学生時代と大きく環境が変わって、目の前のことを覚えるのが精いっぱいで、ろくに昼食もとれない。当直でも何をしてよいのか分からない。でも救急車のサイレンの音だけは耳に残って、つい気になってしまう・・・。でも1か月経って、ようやく昼食を食べるタイミングとか、それこそトイレに行くタイミングが分かってきたのではないでしょうか?
働き方改革のおかげで労働環境が整ってきたとはいえ、あなたにとっては非常にストレスフルな環境であることに間違いありません。そんな状況の時だからこそ、体調管理に気を付けていきましょう。
月並みですが、以下の3つのポイントを確認してみてください。実際にやれていないことが多いのではないでしょうか?
・朝食をしっかり食べる
たとえ当直明けでも、何か食べないと力も出ないし、頭も回りません。タイミングによっては昼食が摂れるとは限りません。しっかり食べましょう。
・睡眠時間をしっかりとる
医学部を卒業したあなたにとって、睡眠時間を削って勉強することはそれほど苦痛ではないかもしれません。人より多く勉強するにはそれくらいのことは当然と思っているかもしれません。
でも、いくら若いあなたでも睡眠不足だと間違いなくパフォーマンスが落ちます。ミスにつながり、患者さんや看護師さんに迷惑がかかる事態になります。当直の時はやむを得ませんが、それ以外の日は睡眠時間をしっかり確保しましょう。
・体を動かす
まだまだペースがつかめないということは、常に緊張して張り詰めたままということです。ほんの15分でも20分でもいいので、体を動かす時間を週に何度か確保しましょう。運動することで仕事の緊張がほぐれます。時間の使い方もうまくなります。決して食べることでストレスを解消する癖をつけないように!
あなたのような真面目な研修医は、あれもこれもやらないと!と思いがちですが、それと同じくらい体調管理に気を配る必要があります。まだ始まったばかりですから焦らずにいきましょう。
(編集長)
総合内科の朝カンファ
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感染症診療を始める時は
あなたが研修医外来に出ていると、消化器外科から内科宛のコンサルトが回ってきました。
70歳台の男性で約半年前に消化器外科で大腸の手術を行い、本日は定期外来のための受診。本人は特に症状もなかったのですが、ルーチンの血液検査でCRPが8.6㎎/dlと上昇していました。
外科の担当医からは「CRPが上がっているので感染だと思うんだけど、どの診療科にお願いしたらいいのか分からないし、抗菌薬は何にしたらいいのかな?」ということで研修医外来に回って来たようです。
こんな時は外科の先生よりも、各科をローテーションしている研修医が力を発揮できる場面ですが、あなたならどうしますか? ちょっと考えてみてください。
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先日開催された松永先生の感染症レクチャーのテーマが「感染症診療の基本」でしたが、この中で松永先生は「感染症診療を学ぶ時は、抗菌薬の使い方よりも感染症診療の流れを把握することが重要」と繰り返されていました。
松永先生の言う「感染症診療の流れ」とは、以下の6つのポイントです。
①感染症? 感染症以外?
②診断の2つの軸
③治療の2つの軸
④抗菌薬
⑤経過観察の2つの軸
⑥投与期間の決定
感染症のよくある誤解に、
発熱=感染症 CRP上昇=感染症 発熱=抗菌剤 抗菌剤=解熱剤
というのがありますが、これは全て間違いです。
正しくは、
発熱≠感染症 CRP上昇≠感染症 発熱≠抗菌剤 抗菌剤≠解熱剤
です。
冒頭の症例に戻ると、CRPが高値で症状がないのであれば、まずはホントに感染症なのか?ホントに抗菌薬が必要なのか?と疑ってかかることから始めましょう。
そして感染のフォーカスを探しです。
「感染症ならば必ず燃え盛っている現場があるので、そこを探すことに尽きる」
と松永先生が繰り返していました。もちろんフォーカスを探しに行くのも型があります。
まずは 3か所(肺、腹部、尿路)+α で考えます。具体的には、肺、腹部、尿路の3か所、そして人工物(CVカテーテル)や皮膚(創部)さらに中枢神経系(髄液) です。
もちろん感染部位が分からないこともありますが、その時の型としては、
・全身性疾患 HIV、マラリア、リケッチ etc
・深部の膿瘍
・深部の人工物感染
・副鼻腔炎(特に胃管留置患者)
・腎盂腎炎(特に高齢者)
一緒に見落としやすいものも覚えておきましょう。
・腎盂腎炎
・胆道系感染症
・前立腺炎
・皮膚・軟部組織感染症
・カテーテル関連菌血症
・偽膜性腸炎
・浅部の人工物感染 ペースメーカー、CVポート
・ダニ媒介性疾患
・心内膜炎
(編集長)
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