臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
患者さんがすべてを語ってくれる
今回は消化器内科のNao先生の記事です。Nao先生は若手~中堅(?)の消化器内科の重要なスタッフの一人ですが、自身の反省を踏まえての記事を寄せてくれました。
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「最近の若手は検査ばっかりで患者さんを見ていない。」みなさんも一度くらいそう言われたことがあるのではないでしょうか。
私は消化器内科医ですが、週に一日在宅診療に携わっています。私が在宅医療に携わりたいと考えるようになったのは、人が「生きる」ということを最期までサポートできるのは在宅診療であり、患者さんに対して、より人として最期まで向き合えると思ったからです。
しかし在宅で使える検査機器は、エコー、レントゲン、採血くらいです。あとは診察力が物を言います。
先日のことでした。90歳台の男性、消化器系のがんに対してBSCで在宅で見ている方の定期訪問に行きました。いつもなら「先生はいっつも元気だね!声がよく聞こえるよ。」と応じてくれるおじいちゃんですが、診察中終始傾眠傾向。転倒して皮膚が向けてしまっており浸出液も多いのでその処置をしましたが、いつもなら痛がって逃げるのに全く動かず。しかも時折無呼吸になってしまう。
途中心配で何度も声をかけるが、声をかければ返事をしてくれる。明らかな四肢麻痺はないな。 急ではあるけれどいよいよ状態が悪くなってきたか…
ご家族に「状態が悪くなって傾眠傾向です。原因ははっきりしませんが、年も年だし、胆のうがんの状況があるので何があってもおかしくないと考えます。このまま様子見るので何かあったら診療所に連絡ください。」とお話しして、ご家族としても特に病院での精査や治療など希望されず帰院しました。
常勤の先生方にその患者さんの変化を報告し、心肺停止時の対応をお願いしました。そうしたら常勤の先生たちから、
「麻痺はあったの?」
「・・・・なかったです。」
「瞳孔はどうだった?」
「・・・・見てないです。」
「構音障害は?」
「・・・明らかにはないですが、傾眠傾向だったのでちゃんと評価していません。」
「腱反射は?知覚低下はないの?」
「いや…担癌患者さんでBSCであっても、評価くらいはしてあげましょうよ」
と言われました。
そこで担当看護師に常勤の先生と私、事務スタッフと大所帯で再訪問。たまたま遊びに来ていた近所の方もびっくりしておられましたが、事情をお話しして再度お部屋に上がらせていただくと、「おう、先生どうしたの?」とそこにはいつもと変りない患者さんの姿が…
改めて再度全身診察。神経学的異常はない。そこで、ここ最近の様子を含めて確認すると…
実は前日までショートステイに行っており、そこでほとんど寝ることができず眠くて仕方なかったのだと!!昼間の訪問時は単に「寝ていた!」ので一眠りして元気になったおじいちゃんはいつもの姿に戻っていたのです。
高齢だからと言ってすぐにあきらめないでほしい。患者さんの状態変化を見たら、まず基本に立ち返って診察をしてほしい。救急外来で気になる患者さんがいたら、後日自分の再診などに来てもらうようにして必ずフォローしてほしい。僕と同じ過ちをしないためにも、皆さんぜひよろしくお願いします。
ちなみに、この後で常勤の先生からは、「私たちが研修医だったころは、脳梗塞疑いなだけじゃなく、脳のどこの梗塞が疑われるというところまで診察で突き止めないとCT取らせてもらえなかったのよ。CTで変化がなくても患者さんがすべてを語ってくれるものよ。」と言われ、心に刺さりました。
(Nao)
ベッドサイドで真面目に診察中
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