
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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蕁麻疹の初期対応
先週になりますが、今年度2回目の水戸協同病院皮膚科の田口先生による皮膚科教育レクチャーを開催しました。今回のテーマは湿疹と蕁麻疹でしたが、レクチャーの中から一部をシェアします。
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あなたがER当直をしていると、30歳代の女性が皮疹とかゆみを主訴に来院しました。日中は何でもなく、帰宅後に夕食を食べて、スマホをいじっていたらかゆくなってきたということです。見ると、体幹部を中心に膨疹を認め、典型的な蕁麻疹でした。あなたは皮疹に対してステロイド外用薬を、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬を処方して帰宅としました。
さて、これは正しい対応だったでしょうか?
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蕁麻疹は真皮浅層に生じる限局性浮腫である膨疹と強いかゆみを伴う「掻痒性膨疹」です。数時間以内に消退と移動し、24時間以内には消えるのが特徴です。消退するので、患者さんにはスマホなどで写真を撮っておいてもらうのが良いでしょう。また、ER受診時に消失していたら、赤色皮膚描記症を確認すると、診断の補助になります。
誘因がはっきりしている場合(特定の食材、運動直後、入浴後など)もありますが、蕁麻疹の7割は原因不明の特発性なので、患者さんには「原因が分からないことが多い」ことを伝えます。アルコールや疲労、精神的ストレスも悪化因子となるため、生活リズムの調整が重要です 。
ERで蕁麻疹患者に遭遇したら、
①来院したら、まずバイタルの確認を行い、アナフィラキシーを見逃さない。
②第2世代の抗ヒスタミン薬の内服
でOKです。
日本皮膚科学会 2018 年版の治療アルゴリズムでは以下のようになっています。
1. Step 1:非鎮静性第 2 世代抗ヒスタミン薬(通常量)を開始。効果不十分なら倍量投与、あるいは他剤へのスイッチまたは 2 剤併用 。
2. Step 2:H₂受容体拮抗薬またはロイコトリエン拮抗薬を追加。
3. Step 3:副腎皮質ステロイド短期内服、オマリズマブ(月 1 回皮下注)、シクロスポリンなどを検討。
4. Step 4:試行的治療(漢方薬、Dapsone など)。
外用薬は基本的に無効であり、患者希望があっても効果説明のうえ処方しない方針が望ましく、ステロイド筋注は通常の蕁麻疹には不要。
具体的な処方としては、
・フェキソフェナジン60㎎錠 2錠/2×(効果不十分な場合は倍量投与)
・妊婦さんであれば、第1世代の抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン)を処方(眠気に注意)。
・H2受容体拮抗薬(ファモチジン10㎎錠 2錠/2×)あるいはロイコトリエン拮抗薬(モンテルカスト10㎎錠 1錠/1×)を追加までは、あなたもやって良いと思いますが、それでもコントロール困難な場合には皮膚科にコンサルトをしましょう。
ということで、冒頭のERでの対応は、ステロイド外用薬は不要で、抗ヒスタミン薬の内服のみでOKでした。
蕁麻疹は、ERを受診する皮膚科疾患の中で頻度が高く、当院の研修医も必ず遭遇していますが、蕁麻疹は「24 時間以内に消える掻痒性膨疹」というシンプルな定義を理解して、
①診断は臨床で決まる
②原因は 7 割が不明
③治療は第 2 世代抗ヒスタミン薬を基軸に段階的に強化
この 3 点を知っておくだけで、対応が怖くなくなります。
(編集長)
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