臨床研修ブログ

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攻めの問診

2019.10.01
カテゴリー: 初期研修

もともとADLの自立した高齢男性が、

起床時から腹痛、嘔吐を主訴に

外来を受診しました。

 

診察では心窩部痛を訴えており、

下痢もあるらしく、胃腸炎の診断で

整腸剤を処方して帰宅となりました。

 

ところが、その後も食事がとれず、

寝たきりのようになったということで、

2日後に再び受診しました。

 

採血してみたらCPK700、トロポニンが

強陽性と判明したので、循環器内科に

連絡がありました。

 

心電図を見てみると、ST上昇や

異常Q波は認めませんでしたが、

なんとも言えないST低下が

ありました。

 

いったい、何があったのでしょう?

診断は、非ST上昇型心筋梗塞

(NSTEMI)です。おそらく発症は

腹痛を自覚した時です。幸い、

ダメージを受けた範囲が小さく、

心不全などにならずに済んだのですが、

高齢者だったので、食欲が落ちて

寝たきり同様になってしまったのだと

考えられます。

 

実は、冬場などノロウイルスの流行

時期に、心筋梗塞が見落とされて

あとで判明したということを、編集長も

何度か経験しています。

このケースの場合、おそらく「下痢」

引っ張られたのだと思います。

 

心筋梗塞なら心窩部痛はあっても、

下痢は来ないはずですからね。

 

では、どうすればよかったのでしょう?

 

おそらく、下痢に関して、もっと踏み込んだ

攻めの問診をしていれば、何かおかしいと

気づけたかもしれません。

 

以前にも紹介しましたが、問診の際は

OPQRST-LAが大事です。

以前の記事はこちら

 

その中で、Pでは増悪/完解因子

つまり、どうすると症状が悪化したり、

改善したりするか、の確認をします。

 

このケースに戻ると、普通の胃腸炎

であれば、排便すれば一時的にでも

腹痛は軽減します。

 

でも、後から患者さんに確認してみると

下痢で排便した後も、心窩部痛は軽減

しなかったそうです。

 

つまり、下痢に関して一歩踏み込んだ

問診をして、下痢と腹痛が実は関係

なさそうだと気づければ、心筋梗塞を

鑑別疾患を挙げられたかもしれません。

 

あなたも問診の際には、

もう一歩踏み込んだ、攻めの問診

やってみてください。

(編集長)

追記1

攻めの問診は、当院にもお越しいただいて

いる山中克郎先生の大事な教えです。

 

追記2

このケースはNSTEMIなので、

診断は難しかったかもしれませんが、

「へそから上の症状では心電図を確認」

しておきましょう。

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