臨床研修ブログ

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救命救急センターだより「頭部外傷とCT」

2023.02.18
カテゴリー: 救命救急センター

空を夢見る消化器内科医のNaoです。こんにちは。

 

皆さんは、放射線科の授業で「日本は世界でも非常に医療被曝の多い国である」という話をお聞きになられたことはあるでしょうか。日本は、世界で最もCTの設置台数が多いとされており、その影響もあって医療被曝が非常に多いといわれています。そのため自分では安易にCT撮影に頼らないように、と自制するように心がけています。

首相官邸からのアナウンス記事

 

ところが先日、こんなことがありました。

 

救急外来に前期高齢者の転倒による後頭部打撲の患者さんが受診しました。担当してくれた研修医の先生からCT検査を行う方針の提案を受け、その根拠について尋ねました。打撲部は軽度の皮下血種と擦過傷はあるものの、神経学的異常はありませんでしたが、硬い地面に受け身なく頭部を直接打撲していることなどを踏まえて、CT検査を行いたいとのことでした。

 

研修医の先生は2年目ですので2か月後には単独で当直業務を行うようになります。自分であればCTは行わないだろうと考え、その意見は伝えましたが、一人の当直医として、自分で責任を取らなければならないとしたらどうするか考えてもらい、結果的にCTを行うこととしました。

 

結果的には、軽度の外傷性SAH、軽度の硬膜外血種、頭頂骨の骨折が認められました。自分の想定以上の所見でしたので大変驚きましたが、担当してくれた研修医は受傷起点から高リスクであるとちゃんと判断してくれていました。

 

頭部外傷時のCTの適応については成人と小児とで違いますが、成人ではカナダ頭部CTルール、ニューオーリンズ基準が有名かと思います。

 

【カナダ頭部CTルール】

  • 受傷後2時間時点でGCS<15
  • 65歳以上
  • 2回以上の嘔吐
  • 頭蓋骨開放あるいは陥没骨折疑い
  • 頭蓋亭骨折疑い
  • 受傷30分以上前の記憶の消失
  • 危険な受傷起点

 

【ニューオーリンズ基準】

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 60歳以上
  • アルコールor薬物中毒
  • 前向性健忘の持続
  • 鎖骨よりも上部の明らかな外傷
  • 痙攣

 

どちらの分類も一つでも当てはまればCTを推奨しています。安易に年齢で区切るのではなく、臨床判断も必要であると個人的には考えます。大事なのは、今回の研修医の先生のようにちゃんと患者さんの話を聞き、そこから判断する姿勢だなと、反省の当直になりました。

(Nao)

ERでの一コマ

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