臨床研修ブログ

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何に注目するべきか?  経過観察の2つの軸

2019.07.04

だいぶ間が空いてしまいましたが、

4月末に開催された松永先生の

感染症カンファからです。

 

実は来週7月9日に、今年度2回目の

感染症カンファが開催されます。

その前に、感染症診療の基本を

おさえておきましょう。

 

前回までは感染症診療の流れとして

①感染症?それとも感染症以外?

②診断の2つの軸

③治療の2つの軸

④抗菌薬

を順に紹介してきました。

 

今回は⑤経過観察の2つの軸

ついて紹介します。

 

例えば、肺炎の患者さんに抗菌薬を

開始したけど、一向に熱が下がらない、

WBCやCRPが下がらない。

抗菌剤を代えた方がいいか?

 

なんて不安になることは

しばしば経験しますよね。

 

あなたはそんな時はどうしますか?

 

まず、抗菌剤を変更する前に、

感染症治療が上手くいっているかの

判断をする必要がありますが、

あなたは何を根拠に治療が

上手くいっているかを判断して

いますか?

 

たいていの人は

「発熱」が続いている、

「WBC」や「CRP」が下がらない、

と答えてくれます。

 

確かに、分かりやすく有用な指標

ですが、その特徴と限界を把握

しておく必要がありますね。

 

松永先生は「2つの指標」

よく理解する必要性を強調

しています。

 

それは

「身体全体の総体を表す指標」

「感染局所の病態を表す指標」

です。

 

「身体全体の総体を表す指標」とは、

体温、WBCやCRP、プロカルシトニン

などの炎症マーカー、そして

敗血症性ショックの治療に用いられる

ノルアドレナリンの用量、インスリンの

用量、乳酸値などを指します。

 

「感染局所の病態を表す指標」とは、

感染局所の症状、徴候、グラム染色

などの検査所見を指します。

 

例えば、肺炎の患者さんなら、

呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)

喀痰量などが感染局所の指標に

なります。

 

つまり、CRPが上昇していても、

呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)が

改善傾向なら抗菌薬を変更する必要は

ありません。

 

「検査値を治しているんじゃない!

患者を治しているんだ!」

というのが、松永先生のメッセージです。

 

具体的な感染局所の指標には・・・、

 

肺炎

症状(咳、痰、呼吸困難感)、

徴候(呼吸数、呼吸器の設定、痰の量・質)

検査(血液ガス、喀痰のグラム染色)  

 

尿路感染

症状(排尿困難、頻尿など)

徴候(腹部の圧痛、背部の叩打痛)

検査(尿中白血球数、尿グラム染色)

 

蜂窩織炎

症状(疼痛)、

徴候(発赤、腫脹、熱感、浸出液の量・質)

検査(浸出液のグラム染色)

 

心内膜炎

血液培養が検出されるまでの日数

血液培養の陰性化

 

 

感染症治療では発熱やCRPだけでなく、

感染局所の指標に注目して、

それを追いかけることが重要です。

 

これらの指標は診断する時点、治療を

開始する時点で、経過を見る指標を

決めていくことが大事です。

 

発熱とCRPに惑わされないで

頑張ってみてください。

(編集長)

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