臨床研修ブログ

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尿中肺炎球菌抗原

2020.11.17
カテゴリー: カンファレンス 内科

80歳台の男性

ADLは自立し、何とか自宅で生活

していました。今回は食欲低下と

体動困難を主訴に救急要請し、

当院に搬送となりました。

 

体温38.6度、呼吸回数22回という

以外はバイタルに問題なく、SpO2は

室内気で92%でした。

 

胸部レントゲンでは、右中肺野に

肺炎像を認め、尿中肺炎球菌抗原

検査は陽性であったことから、

肺炎球菌性肺炎による発熱、

体動困難、低酸素血症と診断しました。

 

ここで家族に検査結果等を説明して

いたら、実はちょうど1か月前に、

肺炎と診断され、かかりつけ医で経口

抗菌薬を処方されていたことが分かり

ました。その時の抗菌薬が何かは不明。

 

となると、今回の尿中肺炎球菌抗原が

陽性というのは、どう解釈したらよいの

でしょうか?

尿中肺炎球菌抗原検査はよく使われる

検査なので、ここでまとめておきます。

 

肺炎球菌の莢膜多糖を検出する

検査で、感度は70~80%,特異度は

94~99%程度

 

抗原を見ているので、抗菌薬開始後

でも診断に使えます。

 

尿中で検出されるのは、発症から3日目

以降とされ、発症直後は陽性にならない

場合があります。逆に、いったん陽性に

なると数週間から数か月にわたって

陽性が持続します。

 

他の微生物と交差反応性はありません

が、共通抗原をもつ Streptococcus mitis 

による偽陽性があります。

 

小児では、鼻咽頭に保菌している場合、

症状がなくとも陽性になることが知られ

ており、有用性は低くなります。

 

肺炎球菌ワクチン接種後の数日間は

陽性になることがあります。

 

冒頭の症例では、1か月前の肺炎が

肺炎球菌性肺炎であったかは不明ですが、

検査結果の解釈には注意が必要です。

この場合は、尿中抗原検査だけに頼らず、

喀痰のグラム染色を確認することが

鑑別に役立ちます。

 

グラム染色で陽性球菌がみられたら、

肺炎球菌と考えてOKですが、はっきりしない

場合は他の起炎菌も考慮する必要が

あります。

(編集長)

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