臨床研修ブログ

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Clinical Prediction Rule(CPR)を活用しよう!

2021.05.04
カテゴリー: 救命救急センター

めまいを主訴とする患者さんが夜のERを受診しました。

 

詳細に病歴を聴取して、丁寧に身体所見や神経所見を見て、どうやら、中枢性のめまいではなさそう。説明して、帰宅を指示しよう…と思っていたら患者さんがド派手に嘔吐!症状の訴えも強く、家族も心配そうに「大丈夫なのでしょうか?」と聞いてくるし、緊急でCT/MRIを撮ったほうが良いのか迷う…、こんな経験、研修医なら誰しもあるのではないでしょうか?

 

そんなふうに判断に迷うとき、Clinical Prediction Rule(CPR)が役に立つことがあります。CPRとは、臨床現場で得られる複数の情報を組み合わせて、ある疾病の有無や将来起こりうるイベントを予測するための指標です。有名どころでは、SOFA scoreやA-DROPシステムなどは国家試験でも頻出ですよね。

 

2021年3月に出版された舩越拓先生(東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門部長)の著書『救急検査ケースファイル』はそんなCPRの原則を勉強するのに最適な1冊です。15種類の判断に迷うケース(主訴)に対してそれぞれいくつかのCPRが紹介されています。

 

詳細はぜひ購入して読んでいただければと思いますが、上記の様なケースは「acute vestibular syndrome(AVS)」と呼ばれます。AVSのうち25%は脳血管障害を原因としていることが報告されていますが、めまい以外の神経症状を呈さないこともあり、ERでは必ず中枢性であることを否定しなくてはなりません。

 

では、ERでめまい患者(特にAVS)に対して全例MRIを撮るのか?少なくとも当院のERでは、そんなことをしていたら当直がまともに機能しません。そんな時に研修医の強い味方になってくれるのが「HINTS法」です。

 

HINTS法とは、Head Impulse Test(HIT)、Nystagmus、Test of Skew deviationを組み合わせてAVSにおける脳血管障害の有無を判別するためのCPRです。上記3項目の陰性が確認されれば、MRI拡散強調像よりも正確に(!)中枢性めまいを否定できるとされています。(HINTS法に聴力検査を組み合わせるとその感度は何と100%!)もちろん正しく手技が行えることが前提条件ですが、使いこなせるようになればベッドサイドでほんの数分でヤバイめまいがバッチリ鑑別できる様になること請け合いです。

 

この本の素晴らしいところは、主訴ごとのCPRを網羅的に紹介したのち、「そのCPRはどういう意味なのか?」「実臨床で(筆者・舩越先生が)どの様に活用しているのか?」が記されている点だと思います。

 

この世には数多のCPRが溢れているわけですが、その解釈や有用性に疑問が呈されているものも多く、間違った使い方をすると痛い目を見ることになる危険性もあります。(そうならないようにひとつひとつが徹底的に分析されていて、読むほど嘆息が漏れます。。。)「巨人の肩に『正しく』乗って」ERでの診療をテンポ良く安全に楽しんでいきたいなーと思いました。救急医療のフィールドを志す人にはおすすめの一冊です!

(Dr.K)

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