
臨床研修ブログ
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SGLT2阻害薬の落とし穴(その3)
今回も研修医のマッコイ先生の記事の続きです。
前回まではSGLT2阻害薬、DKA、euDKAについてシェアしてきましたが、今回はこれらを踏まえて、当初の疑問である「SGLT2阻害薬内服している⼈で意識障害を起こして救急搬送されたら何に気を付ける?」の答えとしてどこで疑って検査に進み、診断をつけたら良いかを考察したいと思います。
①PS(Primary Survey)での呼吸の評価
PSの段階可能であれば、それより前のInitial assessment での呼吸様式の異常でクスマウル⼤呼吸や頻呼吸など「深くて早い呼吸」でアンテナを⾼くすることが肝になりそうです。代謝性アシドーシスの存在を考えてDKAを鑑別にあげます。
呼吸の評価の奥の深さに様々な勉強会に出るたびに気付かされるのですが、回数だけでなく呼吸様式まできちんと評価してカルテ記載する。これは今後の臨床で必ず実施しようと思います。
②動脈⾎ガス評価
ここで注⽬するのは、まずはAGMAの有無かと思います。euDKAの存在を知った今だからこそ、⾎糖がそこまで⾼くないという理由で鑑別疾患から外さないことを⼼がけなければいけません。
③⾎清ケトン体の評価
代謝性アシドーシスを疑ったら、ガス+⾎清ケトンまでの評価で1セットここが今回の⼀番の学びのように感じます。ガス⾒ておしまいでは無い。肝に銘じました。
ちなみにもう⼀つポイントがありますが皆さん、お気づきでしょうか?それは検体の種類です。⾎清の検体でケトン体の⾎中濃度測定をする。これがポイントです。
<ケトンについて>
ケトン体とは、アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンを指します。3種類ありますが、尿検査ではβヒドロキシ酪酸を測定できません。DKAの時に上昇してくるケトン体はβヒドロキシ酪酸なので、尿検査だけだと⾒逃しが⽣じる可能性があります。
・通常の検査試験は、アセト酢酸>アセトンで感度良好であり、βヒドロキシ酪酸は検出できない。尿検査でケトン陰性は33%(6例/18例)
(Endocr Res. 2004 Aug; 30(3): 395-402.)
翻って考えると、尿検査でもしもケトン体陽性であれば診断に繋げてもよい。ポイントとなるのは、初療の段階では陰性となることがあるということ。
(Diabetes Care. 2009 Jul;32(7):1335-43.)
・重症DKAではβヒドロキシ酪酸:アセト酢酸=6:1 ⾎清βヒドロキシ酪酸でのDKA診断寄与 感度98%/特異度79%/陽性的中率34%(cutoff 1.5mmol/L)
(Diabetes Care. 2011 Apr; 34(4):852-4.)
つまり、ケトン⾎症を証明するのはβヒドロキシ酪酸がゴールドスタンダードということです。
(マッコイ)
ERでの一コマ
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