
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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SGLT2阻害薬の落とし穴(その1)
どうもはじめまして、研修医のマッコイです。
突然ですが、「無理なく痩せるならSGLT2ダイエット」なんて広告をあなたも⽬にしたことがあるのではないでしょうか? 今回は、昨今、糖尿病(DM)だけでなく慢性⼼不全や慢性腎臓病(CKD)に適応が広がっていたり、⾃由診療での適応外使⽤など様々な形で利⽤されているSGLT2阻害薬を服⽤されていた患者さんで意識障害があった時、どんなことを考えますか?そんな内容で記事を書かせて頂きます。
そもそもなぜ、この記事を書くことになったかと⾔いますと(余談ですがお付き合いください)…水戸済生会の研修医である私マッコイ(救急科志望)が総合内科をローテーション中にカンファレンスで指導医に問いかけられたことがきっかけでした。
指導医:「SGLT2阻害薬内服している⼈で意識障害起こして救急搬送されたら何に気を付ける?」
マッコイ:「えっとー…低⾎糖、尿路感染症とー…」
指導医:「ブログの記事書こうか^ ^」
はい、ということでこの度執筆の機会を預かる運びとなりました(笑)
この⼀年ローテーションしていて、当院の指導医の先⽣⽅に共通して本当にありがたいなと感じることなのですが、救急志望の僕なら例えばERでこうした背景のある患者さんが搬送された時にどんなことに注意するべきか、どんな検査を考慮しておくべきか、治療介⼊する上で気を付けることは、救急医のファーストタッチとアセスメント、専⾨科へのコンサルの仕⽅でどれだけ患者さんのその後の診療の質が変わるか、など、その先の進路を考慮した指導や問題提起をしてくださることです。指導医の親⼼のようなものに⽇々感謝しています。
さて、本題ですがSGLT2阻害薬内服中の患者で意識障害を起こしている場合に早めにルールアウトするべき疾患は糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)です。
しかも、この場合のDKAはeuDKA、euglycarmicなDKAだそうです。⾎糖値の上昇に乏しいDKA…FDAとEMAからも警告が出ています。症例報告を調べると稀なものってわけではなさそうです。
「は? じゃあ、そもそもどうやって初療で気付くんだ?」
「Primary survey(PS)やっている間に勘づくのは難しいそうだから、Secondarysurvey(SS)で内服薬の状況集めた時にやっと考慮することになるのかなぁ」
指導医や先輩医師の話を聞きながらそんな疑問を抱いたので、その部分も含めて書けたらと思います。
<SGLT2阻害薬とは何か?>
・⾎糖コントロール⽬的に、メトホルミン、SU剤、インスリンなどと併⽤され、第2-3選択薬として使⽤される
・2016年の英国では第2選択薬の14%、第3選択薬の27%を占めていた
・2019年の⽶国および欧州でのコンセンサスガイドラインでは、2型糖尿病かつ⼼臓⾎管疾患やCKDがある患者への使⽤がさらに推奨されている
・欧州や⽇本では、⾎糖コントロールを改善するためのインスリン補助役として承認されているGLT2阻害薬はほとんどない
・FDAは、1型糖尿病に対するSGLT2阻害薬使⽤はDKAのリスクが⾼いことから使⽤を推奨していない
・SGLT2阻害薬は膵島a細胞のSGLT2を阻害し、グルカゴン分泌を直接刺激。結果として内因性グルコース 産⽣・ケトン産⽣・脂肪酸の分解が促進される
・腎臓ではSGLT2阻害によりケトン再吸収を促進する
・腎臓の尿中からのブドウ糖排泄を促進することで⾎糖値を低下させる
・尿糖が増加し⾎糖値が下がることでインスリン分泌が減少
・インスリン:グルカゴン⽐が減少するため、肝臓でのケトン産⽣・遊離脂肪酸分解が阻害されなくなる
・尿糖による浸透圧利尿で脱⽔が誘発され、グルカゴン、コルチゾール、アドレナリンの分泌につながり、さらに脂肪酸分解とケトン産⽣が進⾏する
以上が、SGLT2阻害薬の特徴や薬効機序になります。
今回はここまで。次回に続きます。
(マッコイ)
ERでの一コマ
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