臨床研修ブログ

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心不全患者さんを診る時は・その5(初期治療の注意点)

2022.01.11
カテゴリー: カンファレンス循環器

前回はクリニカルシナリオ(CS)について紹介しました。虚血と大動脈弁狭窄症を除外できそうなら、基礎疾患の検索は後回しにして、患者さんの症状を早く取るために治療を開始するツールがCSでした。

 

CSに基づいて初期治療を開始するのはもちろんOKですが、当然ながら注意点もあります。

 

まず、CSは便宜的に収縮期血圧で分類しているので血圧だけで判断しないこと

 

例えば、胸水も下腿浮腫もある患者さんが、ERでの血圧が150mmHg あったとしましょう。CS1に該当し、NPPVと硝酸薬ということになります。でも、明らかに浮腫や胸水など体液貯留傾向があるなら、利尿剤を使う必要が出てきます。

 

心不全の治療はERの中だけではなく、特に高齢者の心不全では、いかにADLを低下させないように退院させ、外来加療に持ち込むか、という視点が重要になってきます。CSに囚われずに早く症状を改善し、退院につなげるようにしましょう。

 

また大動脈弁狭窄症(AS)は要注意です。

 

ASは重症なほど血圧が上がりません。とすると、CS2として硝酸薬と利尿剤を使いたくなりますが、急激に前負荷が低下するとびっくりするほど血圧が下がってしまいます。

 

何故かというと、ASは心臓の出口である大動脈弁が硬くなって開きが悪くなる病気ですから、前負荷を維持しておかないと心拍出量が維持できないのです。しかし硝酸薬と利尿剤を同時に使ってしまうと、急激に前負荷が低下して、心拍出量が低下し血圧が下がるのです。心拍出量が低下すると硬くなった大動脈弁を押し広げる力も低下してしまうので、血圧がなかなか上がらず、ハラハラしてしまうことになります。

 

対策としては、硝酸薬と利尿薬を同時に使わずに一方から開始して、急激な前負荷の低下を避けながら慎重に経過を見ることです。CS1とかCS2のように、利尿がついたらほぼ安心という訳には行かないので、心してかかりましょう。そして、循環器内科医や心臓血管外科医に相談し、早期に手術を考慮してもらいましょう。

(編集長)

TAVI中の一コマ

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