臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
FASTのコツ
Nao先生は当院の消化器内科医で、訪問診療にも関わっているので、このブログでも消化器関連の記事をいろいろ書いてくれています。
でも、実はもう一つの顔があって、ドクヘリに搭乗しているフライトドクターでもあります。そんなフットワークの良さがウリのNao先生が、外傷の初期評価に欠かせないFASTのコツについて記事を書いてくれました。ぜひご覧ください。
(ちなみにFASTについては、この動画の21分過ぎから見ることができます)
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研修医の先生方はFASTやっていますか?
いざ外傷の患者さんが運ばれてきました、FASTやってくださいというときに、もたもたしていたら使い物になりません。患者さんが救急搬送されてきたら、全例、隙間を見て当てて練習してください。スムーズにエコーをあてられること、そして、瞬時に陽性者を見分けること。それができるにはFAST陰性の人にエコーを当てて走査を覚えることと、陰性の人の「絵」を覚えることが肝要です。
FASTの細かな手技については本を見ていただくとして、今回は研修医の先生が実際にエコーを当てているのをみて。改善するとより良くなるなと考えている部分をお伝えしたいと思います。
まず、そもそもですがFASTの意味をご存じでしょうか。僕は正しく理解していなくて、先日救急科の先生に教わりました。
FAST= ”Focused Assessment with Sonography for Trauma”
かなり意訳になりますが、エコーによる外傷患者の迅速評価といった感じでしょうか。外傷患者さん以外ではFASTとは言わないのです。医師9年目にして初めて知りました(笑)。
さて、本題は非常に短いです。
1.とりあえずゼリーは多めに出す。
FASTは時間勝負です。とりあえず多すぎていいのでゼリーをびゅっと出しましょう。急がない患者さんで練習して、必要なゼリーの量を体感で覚えましょう。
2.しっかりと力を入れて当てる。
エコーのときふわっと当てている方が多いですがしっかりと押し込むようにあてる。特に心窩部横走査と骨盤部走査では重要です。
3.モリソン窩と脾腎境界の走査の際に肋骨の向きを確認する。
上図のような向きでエコーを当てている先生が多いように思います。この向きですと肋骨がかぶってしまい、シャドーが入るため評価が難しくなります。
下図のような向きでエコーを当ててみてください。実際に指で触って肋骨の走行を確認してみてもよいです。
なお、肋間観察は骨にプローブが当たるのと、浮遊肋骨を強く圧迫してしまうと痛いので、ここの部位は押しすぎ注意です。
エコーは原則的に患者さんに害のない検査です(腹痛の患者さんに長時間のエコーは禁物ですが)。ですので積極的にエコーをあてに行きましょう。以前、当院の研修医が胃腸炎症状で来院した10代女性にエコーを当てて、膵臓のまれな腫瘍を発見したという事例がありました。もし私が最初から診察していたら、問診だけで済ませてしまい、腫瘍は当面見つからなかったと思います。研修医の先生、ナイスプレーという症例でした。そういうことはまれだとは思いますが、積極的にエコー当てましょう!
(Nao)
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