臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
新生児蘇生法(NCPR)
2022.12.20
カテゴリー: カンファレンス 小児科
先日、新生児蘇生法(NCPR)講習会に参加させていただく機会がありました。そこで学んだことについて皆さんと共有できたらと思い、ブログに書き留めてみました。
NCPRは新生児を対象とした蘇生法であり、決められたアルゴリズムに則って行われます。そのアルゴリズムは以下の通りです。
結論から言うとこれが全てなのですが、一見するとかなり複雑のように見えます。講習会では各stepの詳細や流れについて解説していただき、模型を通してシュミレーションで反復練習をするため、終わる頃には頭に流れが入るようになりました。
ここで全てを解説するのは難しいので一番大切なところだけお伝えします。
NCPRで一番大切なのは、ずばり人工呼吸です。
出生後色々と評価、処置をした後に、呼吸がないor脈拍100bpm以下の場合はまず人工呼吸を行います。しかも生まれてから60秒以内に行わなければいけません。なぜ人工呼吸が大切かというと、新生児仮死はバックマスクを用いた人工呼吸までの処置により90%以上は蘇生できるからです。胸骨圧迫以上の治療を要する生期産児は約0.1%に過ぎません。人工呼吸をしても状況の改善が認めない場合は胸骨圧迫も行いますが、比率としては胸骨圧迫:人工呼吸は3:1です。大人のBLSでの30:2と比較してもいかに人工呼吸が大切かが分かると思います。
では、具体的な人工呼吸の方法についてご説明します。
基本的にはバックマスクを用いて行います。まず、児の肩にタオルなどを敷き、頭部を後屈、下顎を挙上した姿勢(sniffing position)をとり気道確保することが大切です。その上で片手で児の下顎とマスクを固定し、他方の手でバックを加圧します。バックマスクには換気圧を表示するメーターがありますが、人工呼吸開始時には生期産児で30cmH2O程度(早産児で20-25cmH2O)の圧をかけます。換気回数としては40-60/分で1秒に1回を超えないことが大切です。
有効な人工呼吸ができているか確認する方法として以下の3つがあります。
①心拍の上昇
②胸部の上がり
③呼吸CO2の排出
これで有効な人工呼吸ができていないと判断された時は次の4点を確認してみましょう。
①マスクはきちんと密着できているか
②気道確保の姿勢は取れているか
③口腔、鼻腔内の吸引は十分か
④換気圧は適切か
これでも人工呼吸がうまくいかない場合はラリンジアルマスクや気管挿管などほかの人工呼吸法を考慮します。
以上、NCPRにおける人工呼吸の要点についてご説明しました。実際に文字で見てもなかなかイメージが湧かないと思います。私自身も講習会に参加する前はさっぱりでしたが、講習会を通して実際の器具に触れて実践することでイメージができるようになりました。
余談ですが講習会に参加後、タイムリーなことに新生児蘇生の現場に立ち会う機会がありました。私は記録係として外回りをしていたのですが、新生児科のドクターが人工呼吸までの処置を約20秒という早さで行なっており手早い動作にただただ驚かされました。ただ、勉強した甲斐もあり、先生たちがどのような意図で何を行なっているのかについて自分でも理解することができました。やはり何事にも準備は大切だと痛感しました。皆さんもぜひNCPRの講習会を受けてみてはいかがでしょうか。
(minimum)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆病院見学に来ませんか?
当院の研修医がどんなふうに仕事しているのか?どんな生活を送っているのか?あなたの目で確かめてみてください!
病院見学をご希望の方は、下のフォームからご連絡ください。
なお、病院見学がむずかしい時は、Zoomで個別説明会を行っていますので、下のフォームに「Zoom希望」と記入してご連絡ください。
↓
https://recruit-mito-saisei.jp/entry
◆専門研修ブログもご覧ください!
当院には基幹型内科専門研修プログラムがありますが、その強みは消化器内科、循環器内科、腎臓内科の診療体制です。あなたも最短で内科専門医、そして施設を異動することなくサブスペシャルティ専門医と関連する各種の資格を取得できます。そんな内科専門研修プログラムを紹介するブログもぜひご覧ください。
↓