臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
救命救急センターだより「一酸化炭素中毒」
空に憧れている消化器内科医ことnaoです。こんにちは。ようやく涼しくなってきましたね。
いよいよ2024年から医師の働き方改革が本格化しますが、そのせいで時間外労働の厳しい制約があり救急科での診療にも制約が入ってしまっています。働きたいのに働けない、なんて嘆きも出てきますが、それくらい当院では時間外労働しっかり管理されておりますので、若手の先生はご心配なく当院で働いていただければと思います。
さて、意外と対応を慎重にしなければならない一酸化炭素中毒についてお話しさせていただきたいと思います。三次救急病院ですと、定期的に火事などで気道熱傷きたしたり、一酸化炭素中毒になったりという患者さんが搬送されてきます。
一酸化炭素中毒の症状ってどんな症状かご存じでしょうか。軽いと頭痛、めまい、嘔気、皮膚の紅潮程度で、重度になってくると呼吸困難に加えて呼吸抑制、意識障害、痙攣などをきたします。
症状だけを見たときに一酸化炭素中毒っぽいな、っていきなり思うことはないと思います。つまり、症状から鑑別に挙げる疾患ではなく、状況から鑑別にあげる必要があります。
では、一酸化炭素中毒をきたす状況ってどんなでしょう? 家事、練炭自殺、住居用でない地下施設での作業などが考えられます。そうです。わざわざ念を押されなくても最初から鑑別に上がりますよね。
でも、意外と鑑別に上がりにくいことがあります。
それは、特に自殺目的でもなんでもなく、日常のちょっとだけ特殊な事情で一酸化炭素中毒になることがあります。
最近は住宅が高気密化しています。それに伴い住宅の換気システムは向上していますが、換気シ
ステムが何らかの理由で作動していない状況で、家の中で焼き肉をした、とか。雪国ですと、寒い時期に車にエンジンをかけたまま仮眠をしていたら、マフラーの出口がふさがって、排気ガスが室内に逆流してきてというのは定期的にある事故です。また、ガレージで換気扇を回さずに車のエンジンをかけて作業していたなんて言う事例もあります。
多くの場合、救急隊が優秀ですのでしっかり現場のアセスメントをして伝えてくれますが、プレホスピタルの場合は自分が最先着隊の時もあります。その場合は自分が現場でそのアセスメントができなければなりません。それができないと、自分がむしろ危険にさらされる可能性すらあります。ですので、現場の状況把握、情報収集というのは非常に大切です。
ちなみに、ご存じだと思いますが、SpO2では酸素化ヘモグロビンとCO-Hbを区別することができませんので、SpO2が保たれていることと一酸化炭素中毒の軽症、重症は基本的に関係ありません。ですので一酸化炭素中毒は血ガス分析装置でCO-Hbを測定して判断していきます。ただ、タバコ吸いの人は5から最大10%程度くらいまではCO-Hbが含まれていることがありますので、CO-Hbがちょっとくらい高いからと言って慌てず、生活歴の聴取も重要です。
治療は軽症の場合は酸素投与です。CO-Hbが20%を超えてくるような場合は高圧酸素療法を検討したり、挿管管理が必要になることがあります。
10年以上医者をやっていても、病歴聴取が甘かった!と振り返ることがあります。研修医の先生がしっかり問診をとっているので、先に気づいてくれたりすることすらあります。基本って大事です。ではまた!
(Nao)
朝からバタつくERの一コマ
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