臨床研修ブログ

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多発性骨髄腫 その2

2024.07.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回に引き続き医学生のなお先生が書いてくれたレポートからのシェアです。総合内科で実習期間中に多発性骨髄腫の患者さんを担当してくれたので、骨髄腫のまとめを作ってもらいました。今回は治療に関してです。

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未治療の多発性骨髄腫に対する治療は、自家移植を行うかどうかで治療法が分かれる。自家移植を行えるのは、一般的に65〜70歳未満で重篤な感染症や肝・腎障害がなく、心肺機能も正常な人である。これらの患者に対しては、効果が迅速で深い奏功を期待でき、かつ自家造血幹細胞採取に悪影響を与えない導入療法を施行後、自家造血幹細胞移植を併用した大量MEL(メルラファン)療法を実施することが推奨される。

 

一方、自家移植を行えない場合には、化学療法が選択され、標準治療はDLd療法(DARA, LEN, 低容量DEX)またはD-MPB療法(DARA, MEL, PSL, BOR)である。今回の症例では、DLd療法を施行している。70歳以上であることから移植適応がないためである。

 

未治療で移植適応のある多発性骨髄腫の治療

(造血器腫瘍ガイドライン2023より)

 

 

未治療で移植適応のない多発性骨髄腫の治療

(造血器腫瘍ガイドライン2023より)

 

また、多発性骨髄腫では骨髄腫細胞が破骨細胞を活性化し、骨芽細胞を抑制しているために骨組織が破壊される。それによって骨病変や高カルシウム血症がみられているが、多発性骨髄腫に対する治療と並行して骨病変に対する支持療法も重要である。

 

治療薬としてはビスホスフォネート製剤(BP)が用いられ、中でもゾレドロン酸(第3世代BP)はクロドロネート(第1世代BP)に比べて骨関連事象の発生率を低下させるだけでなく、全生存期間の延長にも寄与すると報告されている。そのため、初発の多発性骨髄腫にはゾレドロン酸を併用することが重要だとされる。実際に、今回の症例では入院後、骨病変・高カルシウム血症への治療としてゾレドロン酸が使用された。

 

症例の感想

多発性骨髄腫の患者を目にしたことは今回が初めてであった。今回担当しはじめた時点では確定診断がついた上で治療も開始していた状態であった。実際に回診等でお話を聞き、カルテを記載し、治療に一部参加させていただけたことで、この疾患に対する理解が深まったように思う。また、Dara-Rd療法は通院でも可能であるとのことだったが、退院の際に自宅退院か施設退院とするかは決定していない。この症例に限らず、患者さんのゴールは必ずしも退院することにはないため、退院後どのような形で生活するのかなどの点に気を配ることは、今回の実習で学ぶことができた貴重な視点の一つであるように思う。

(なお)

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