臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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癌性髄膜炎
10月に開催された茨城県内科学会で、当院J1のちくわ先生が発表した症例からのシェアです。
70歳台男性が9日前から頭痛を自覚。さらに2日前から両側の難聴と全身の疼痛が出現し、入院となりました。意識はJCS I-3、GCS E4V4M6で項部硬直はなく、難聴以外の脳神経所見はなく、麻痺や病的反射もありませんでした。
頭部CTで出血や脳梗塞の所見はありませんでしたが、髄液検査で初圧の著しい上昇(>300mmH2O)と細胞数増多、糖低下を認めました。髄液の細胞診から印環細胞癌が、内視鏡で胃癌が見つかり、胃癌に伴う癌性髄膜炎の診断となった症例です。
癌性髄膜炎は遠隔部位の腫瘍から軟膜への癌細胞浸潤を指します。
発症機序としては
・脈絡叢や血管周囲腔への血行性拡散
・頚部リンパ節を介した直接伝達
・傍椎骨レベルでの神経根に沿った拡散
・神経周囲リンパ管や神経鞘に沿った逆行性播種
などが考えられています。
発症率はすべての癌患者のうちおおむね5%前後の報告が多く、疾患別に見ると固形癌では肺癌、メラノーマ、乳癌での発症が多く、それ以外ではALLで比較的高頻度に見られます。
消化管原発の癌ではがん性髄膜炎の発症は少なく、今回の患者と同じ胃癌からの発症は0.14%との報告がありました。全体としては診断精度の向上と癌治療進歩による余命延長から、発症率は増加傾向となっています。
この症例では急激に両側の難聴を来したことが特徴ですが、脳脊髄液は脳底槽や小脳橋角部に停滞しやすく、脳脊髄液中に浸潤した腫瘍細胞がその領域に広がりやすい特徴があるとされており、そこから内耳道に侵入した腫瘍細胞により蝸牛神経の軸索が破壊される説,蝸牛に到達した腫瘍細胞が、直接的に蝸牛の構造破壊を引き起こす説,内耳道に腫瘍が形成されることで内耳動脈が圧迫され、虚血性に蝸牛機能障害を生じる説などが考えられています。
(ちくわ)
なお、ちくわ先生は今回が初めての学会発表でしたが、落ち着いて聞き取りやすく話していたし、会場からの質問にも堂々と答えていて、なかなか立派でした♪
(編集長)
発表中のちくわ先生
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