臨床研修ブログ

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超音波によるショックの鑑別

2024.11.14
カテゴリー: カンファレンス循環器
研修医1年目のT.Nです。今回は、私が循環器内科を回ったときに学んだことを紹介します。
研修が始まり間もない頃、指導医の先生にこのようなことを聞かれました。
「ショックってどうやって鑑別する?」
 
4つのショックの鑑別ポイントをまとめた表は、よく見かけるような…、でも心拍出量とか末梢血管抵抗とか中心静脈圧とか、いまいちピンと来ないし。たしかにどうやって鑑別するのだろうと思いました。
 
答えはエコーでした。「RUSH exam」という方法を教えていただいたのですが、RUSHとはRapid US for Shock and Hypotensionの頭文字で、この方法ではエコーだけで心臓の状態、循環血液量、血管の状態を一度にスクリーニングすることができます。
 
RUSH examでは、①Pump(心臓)  ②Tank(循環血液量)  ③Pipe(血管)の3つのカテゴリーごとに所見を取ります。
 
①Pump
・心嚢液貯留の有無
・左室径/収縮能
・右室径/収縮能
・左室径と右室径の比、右心系による左心系圧排の有無
②Tank
・E-FAST
・肺エコー
・IVC径/呼吸性変動
③Pipe
・大動脈解離/大動脈瘤の有無
・DVTの有無
(肺エコー: 肋骨に対して直行する向きで肺にプローブを当てます。肺水腫があるとBlineと呼ばれる高輝度の陰影を認めます。)
 
すべての所見を揃えることは難しいですが、一つ一つがショックの原因を探り初期対応につなげる上で、とても有益です。
 
ここからは、私が経験した症例を一つご紹介します。
90歳男性、血圧低下と心不全疑いの方です。胸部レントゲンで、心拡大と両側肺野の透過性低下を認めたため左心不全が疑われました。そのため、以下のように治療方針を立ました。
 
①ノルアドレナリンで血圧を維持
②フロセミドで溢水を解除
③NPPVで呼吸のサポートと左室の前負荷軽減
 
治療を開始して、しばらく経過観察しましたが、血圧は上昇せず、利尿薬への反応も悪く、なかなか改善は見込めませんでした。
この患者さんに何が起きているんだろう?と思い、まずエコーを当ててみました。すると、心室の収縮能は左室よりもむしろ右室の方が低下していました。また、IVCから腎静脈にかけての拡張も認め、静脈灌流が滞っていることもわかりました。
まとめると、この方は左心不全に右心不全も合併しており、またNPPVの作用も相まって閉塞性ショックのような病態も重なっていました。それによってなかなか血圧が上がらず、腎血流低下からの乏尿も生じていたと考えています。
そのため、NPPVを一度NHFに変更してみたところ、静脈系に滞っていた血流が解除され、血圧は上昇し尿量も増え、急性期は乗り越えることができました。
 
早急な初期対応が求められるショック状態では、素早い病態把握が重要となります。その点で、エコーは迅速に多くの情報を得ることができるので、とても便利だなと感じました。
まだまだ修練が必要だなと痛感する日々ですが、うまく使いこなせるようになることを目指して、これからも頑張りたいと思います!

(T.N)

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