臨床研修ブログ

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心不全患者さんを診る時は・その3(誘因への介入)

2021.12.28
カテゴリー: カンファレンス循環器

前回までは心不全患者さんの問診や指導医へのプレゼンの際に押さえるべき2つのポイントのうち「基礎疾患」「誘因」について紹介しました。

 

「基礎疾患」を押さえることで治療の方針がある程度決まります。

 

では、なぜ「誘因」を押さえることが重要なのでしょうか?前回も少し触れましたが、今回はこの点を詳しく紹介したいと思います。

 

下の図は、心不全の経過についてです。ガイドラインにはもちろん、いろいろなところで目にしたことがあるかもしれません。

 

(ガイドラインより 心不全とそのリスクの進展ステージ) 

 

心不全は増悪・寛解を繰り返しながら、どんどん悪くなる症候群です。その心不全の重要な治療目標の一つに「心不全での入院を回避する」ことがあります。

 

心不全の治療では、利尿剤を静注すればサッと良くなって、すぐに退院できる人がいるのも事実ですが、よくなるから大丈夫という考えは間違いです。入院を繰り返す患者さんの予後は極めて不良なので、なんとか入院を回避したい。そのために「誘因」に対して介入する必要があります。

 

具体的には、

・感染を契機に悪化した人には予防注射(インフルエンザや肺炎球菌)を勧めます。

 

・内服を自己中断して悪化した人には、内服するタイミングを変更する、薬剤の錠数が多くて嫌だという人には合剤などを組み合わせて錠数を減らすなど工夫してみます。

 

・食事への介入は現実的には一番難しいのですが、週に何回かでも宅配のお弁当(減塩メニュー―があります)を利用したり、栄養指導を繰り返してみます。

 

誘因を把握し、可能な部分に介入することで、心不全の入院を回避することはすごく重要です。

また、さまざまな誘因で心不全が悪化してくるということは、別の病気で入院していた患者さんに心不全が合併してくる、ということも当然あります。

 

なので、特に心疾患の既往がある人や高齢の人では、入院中でも外来フォローであっても、「もしかしたら心不全を合併していないか?」と注意しておくことが大事です。

(編集長)

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心不全患者さんを診る時は・その2(誘因)

2021.12.25
カテゴリー: カンファレンス循環器

心不全患者さんを診る時に押さえるべき2つのポイントは「基礎疾患」「誘因」ですが、今回は「誘因」についてです。

 

心不全が悪化する時には「誘因」が隠れているはずです。

 

もちろん原疾患の進行(例えば大動脈弁狭窄症の進行)ということもありますが、なぜこの時期に悪化したのか?なぜこのタイミングなのか?と常に考えておく必要があります。

 

なぜ誘因をおさえることが重要なのかと言うと、それは基礎疾患だけ治療しても心不全をコントロールできないことがありますし、基礎疾患の治療ができないこともあるからです。

 

誘因の覚え方はFailureが有名です。

 

F:Fogot medicine

内服薬の中断・調節のことです。特に利尿薬の自己中断や自己調節は想像以上によくあることです。また医療機関でも熱中症対策と称して利尿剤が減量されていることもあります。β遮断薬が新たに追加された場合も誘因となることがありますが、循環器内科以外でβ遮断薬が処方されることはあまりないので、頻度は少ないかもしれません。

 

A:Anemia, Arrhythmia

貧血や発作性心房細動などの不整脈が心不全に誘因になることがあります。貧血は心不全だけでも進行してくることがありますが、消化管出血の有無は必ず確認が必要です。

 

I:Infection, Ischemia

感染と虚血は重要な誘因です。感染はこの時期に最も多いかもしれません。発熱→心臓の仕事量増加につながります。また急性冠症候群(ACS)などの虚血イベントの除外は、最初に行うべき最重要ポイントです。

 

L:Life style

生活習慣で心不全の誘因になるのは、労作や過労、寒冷、そして食事(塩分過多)が多いと思います。労作や過労は旅行に行った後やお葬式などがきっかけなることが多い印象があり、できるだけ具体的に質問しないと分からないことがありま。編集長のTipsとして、特にお葬式は時期によっては寒冷負荷も加わるので必ず聞くようにしています。

 

また、この時期は寒いところでの作業などや自宅の環境にも注意です。自宅でも居間でしか暖房を入れていないことがあり、台所や廊下、トイレは外と同じ気温ということもホントにあります。住宅環境を聞いておくのも大事です。

 

そして日本人は塩分好きですから、食事の影響は大きいです。塩分を控えるために味噌汁をやめた代わりに、うどんを食べていた(しかも汁まで飲んでいた)とか、ラーメンは良くないと言われ、そばを食べていたという笑えない話も実際にあります。

 

U:Up-regulator

甲状腺疾患や妊娠などが、いわゆる高拍出性心不全の誘因になります。

 

R:Rheumatic valve, Renal insufficiency

リウマチ性弁膜症の進行、そして腎不全の悪化で体液量の調節が甘くなって心不全に至ることがあります。腎不全の悪化の要因としてはNSAIDSなどの薬剤がないか聞き出すことも大事です(高齢者では腰痛や膝痛で痛み止めを処方されます)。

 

E:Embolism

肺塞栓なども心不全の誘因になるので、鑑別の中に入れておきましょう。

 

誘因については、1回の問診だけではわからないこともあります。でも、その後の患者さんや家族との会話の中にヒントが隠されていることがほとんどですから、注意してみてください。

(編集長)

経食道心エコー中

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心不全患者さんを診る時は・その1(基礎疾患)

2021.12.23
カテゴリー: カンファレンス循環器

12月になってだいぶ冷え込むようになって来ました。寒くなると心不全患者さんが増えてきます。そこで今回は心不全に関して役立つポイントです。

 

心不全患者さんの問診や、指導医へのプレゼンの際に押さえるポイントは2つ、「基礎疾患」「誘因」です。

 

その前に、「そもそも心不全とはどういうもの?」と研修医に質問すると、「EFが低下している」とか「胸水がある」とか、ハズレではありませんが、あいまいな答えがほとんどです。

 

ここで、心不全の定義は大事なので確認しておきましょう。

 

日本循環器学会の心不全ガイドラインが2021年版としてアップデートされたばかりですが、その中で心不全の定義は以下のようになっています。

 

「心不全」とは「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」

 

症候群ということは、原因がいろいろあるということですので、基礎疾患を明らかにしておく必要があります。

 

例えば「陳旧性心筋梗塞」による心不全とか、「大動脈弁狭窄症」による心不全(心臓の構造的異常を伴う)、「甲状腺機能亢進症」による心不全(機能的異常による心不全)という感じです。

 

そして、基礎疾患が分かれば治療方針もある程度決まってきます。

 

具体的には・・・、

陳旧性心筋梗塞なら、新たな虚血が関与していないか?関与しているとすれば、その虚血を解除するために、冠動脈造影やPCIを考慮します。

 

弁膜症なら、内科的治療には限界があるので、手術適応がないのかを検討。

 

甲状腺機能亢進症なら、甲状腺に対する治療の効果が出るまでの間は内科的治療でねばる。

といった具合です。

 

あなたも患者さんから話を聞く時や、カルテから情報を探す時は、心不全の基礎疾患が何なのかに注意を払ってみてください。

 

次回は「誘因」について紹介します。

(編集長)

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狭心症の診断にはホルター?

2021.12.21
カテゴリー: カンファレンス循環器

60歳台の男性が外来に来ました。

 

他院で高血圧と糖尿病の治療を受けているそうです。数か月前から労作時に胸やけのような不快感を自覚するとのこと。症状を聞くと、どうやら安定狭心症らしい。

 

聴診は過剰心音も心雑音もない。心電図と胸部レントゲンは正常。安定狭心症の診断を進めるために、あなたは次に何の検査をしますか?

約半数以上の研修医は心エコーとホルター心電図と答えました。ホントに狭心症の診断にはホルター心電図で良いでしょうか?

 

ワシントンマニュアル(36版)を見ると、安定狭心症の診断には

 

  • 運動負荷心電図、
  • 運動負荷心筋シンチ、
  • 薬剤負荷心筋シンチ
  • 運動負荷心エコー、
  • 薬剤負荷心エコー
  • 薬剤負荷MRI

と書いてあります。

 

いずれも運動や薬剤負荷をかけることで虚血の有無と予後判定に役立つ情報が得られます。そのうえで「冠動脈CTや冠動脈造影」など解剖学的な評価に進みます。

 

ホルター心電図では狭心症を疑うことはできますが、診断には力不足です。また負荷をかけない、ただの心エコーでは弁膜症などの他の器質的疾患は分かりますが、負荷をかけないと狭心症の診断はできません(EFが良いから狭心症ではないと言えません)。

 

何となく検査するのではなく、何のために検査をするのか?その病気の診断には何が必要なのか?こういった点を整理しておきましょう。

(編集長)

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言えますか?急性心筋梗塞の診断基準

2021.08.21
カテゴリー: カンファレンス循環器

ERに搬送されて来た70歳代の男性。主訴は胸痛。発症から約3時間で来院しました。心電図は下壁誘導でST上昇あり。緊急PCIで右冠動脈の閉塞を認めてステント留置で再灌流成功と、よくあるSTEMIの症例です。ところがPCI終了後にERで対応した研修医からこんな質問がありました。

 

「来院時の採血でWBCもCPKもLDHもトロポニンも全く正常でしたけど、こんなことってあるんですか?」

 

答えはもちろん、「あり」です。STEMIでも発症から早ければ血液検査が正常ということは当然あります。

 

でも現場でやっていると、「WBCも何も上昇していない、いいのかな?」とか「循環器の先生を呼んじゃったけど良かったのかな?」などと、急に不安になった経験があなたにもあるはずです。後から考えれば何てことないのですが、臨床とはそういうものです。なので心配しなくて大丈夫です。

 

でも、自分なりに症例を振り返り、次に同じような状況に遭遇した時に自信をもって対応できるように経験を積み上げていくことが大事です。

 

では、この症例に関連して質問です。急性心筋梗塞の診断基準は何でしょう?

意外とこの質問に自信をもって答えられる研修医は少ないですね。なので、この機会に是非とも覚えてください。

 

急性心筋梗塞の診断基準は2012年に欧州心臓病学会と米国心臓病学会からUniversal definitionなるガイドラインが出されています。

これには、トロポニン上昇に加えて、

  1. 心筋虚血による症状
  2. 心電図による新たなST-T変化、新たな左脚ブロックの出現
  3. 心電図にて異常Q波出現
  4. 画像診断にて新たな心筋のバイアビリティ喪失、新た壁運動異常
  5. 冠動脈血管造影や剖検での冠動脈内の血栓の同定 

上記5つのうち1つ以上を満たすと定義されています。

このUniversal definitionが覚えにくいもしくは覚えたくない、という場合は以前に用いられていたWHOの診断基準が簡単です

 

それは

・虚血による胸部症状

・心筋梗塞に合致する心電図変化

・心筋逸脱酵素の上昇

このうち2つ以上あれば急性心筋梗塞と診断します。

 

疾患概念や疾患の定義、診断基準は変わるものですが、自分の不得意な領域でも、現場で経験した時に確認してみると頭に入りやすくなりますよ。

(編集長)

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心尖部肥大型心筋症(Apical HCM)

2021.07.17
カテゴリー: カンファレンス循環器

J1のSakura先生が記事を書いてくれました。既往症の中にあった疾患ですが、そのままスルーしないでまとめてくれました。こんな感じで症例をベースに勉強していくのが一番効率が良いように思います。

(編集長)

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今回受け持った患者さんに心尖部肥大型心筋症(Apical HCM)という肥大型心筋症(HCM)の亜型の方がいらっしゃったので、調べてみました。

 

このApical HCMは日本人ではHCMの約15%に見られるとされています。HCMと言えば致死的不整脈、突然死、左室流出路閉塞などのワードが浮かんでくるかと思います。しかしこのApical HCMでは左室流出路閉塞を持っていないことが多く、(狭心症、心不全、心筋梗塞、AFなどの報告はありますが)症状もほとんどない、または軽度であることが多いとされています。

 

特徴としては

・左心室拡張障害を反映しIV音を聴取および触知する

・心電図での巨大陰性T波(“Giant”negative T)が特に左前胸部誘導でみられる

  (*巨大陰性T波とは、深さが1mV(10mm)以上の陰性Tのことです)

・画像所見で拡張末期の左心室腔のスペードのような形態を認める(心尖部肥大型心筋症 画像で検索してみてください。)

・壁運動低下および動脈瘤形成を含む心尖部壁運動異常がみられる

が挙げられます。

 

治療アプローチはほとんどのHCMと同様に症候性の患者に対しては特に治療が必要になりますが、一般に心室性頻脈性不整脈や心臓突然死のリスクは低く、一時予防のためにICDを装着する必要はほとんどないと言われています。

 

死亡率の予後は良好でありますが、心房細動や心筋梗塞といった重要な心イベントの発生率は比較的高いため注意が必要です。ちなみに巨大陰性T波の鑑別は非Q波心筋梗塞やApical HCMの頻度が高いですが、鑑別診断として脳血管障害を見逃さないことも大事です!

(Sakura)

胸部誘導の巨大陰性T波(深さが10mm以上!)

心房細動もあります

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エコーガイド穿刺の落とし穴

2021.02.16
カテゴリー: カンファレンス循環器

CVやPICC、透析用のカテーテルなどを挿入する時に、あなたもエコーガイドで穿刺していると思います。今はエコーガイドが当たり前で、エコーガイドでやれば安全という風潮ですが、エコーガイド穿刺にも落とし穴があるのを知っていますか?

 

実はエコーガイド穿刺でも、重大な合併症を生じた事案が多く報告されており、平成29年の時点で、日本医療安全調査機構というところから、再発防止のための提言も出ています。

日本医療安全調査機構・中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析

 

もちろんエコーガイド穿刺は有用な手法ですから、あなたも習得しておかないといけません。同時に落とし穴についてもよく理解して、トレーニングしておく必要があります。

 

エコーガイド穿刺の最大の落とし穴は、「エコーで見えているところよりも、針は先に進んでいることが多い」ことです。

 

どういうことかというと、下の図のようにエコーの断面に真の針先が入っていないと誤って認識してしまうのです。

 

 

これはエコーを実際に持って、真の針先をしっかり同定できるように繰り返し練習する必要があります。消化器内科の先生方は、エコーガイド穿刺が上手な人が多いですから、よくその手元を見て真似してみてください。

   (編集長)

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補充収縮 その2

2020.11.24
カテゴリー: カンファレンス循環器

前回の記事で、補充収縮(Escape 

contraction)は、予定の収縮タイミング

よりも遅く収縮した不整脈のことだと

紹介しました。

 

ここで復習ですが、心筋の一部には

規則的な興奮を自動的に発生させる

性質をもっており、この性質を自動能と

呼んでいます。

 

この自動能を持つのが、洞結節や

房室結節とHis束の接合部、His束、

プルキンエ線維などです。

 

興奮の発生頻度(つまり心拍数)は、

上位(つまり洞結節)ほど速く、下位に

行くほど遅くなります。なので、

通常は洞結節からの興奮が心臓の

リズムを支配しています。

 

ところが、何らかの理由で洞結節の

興奮が発生しないと、下位からの

興奮が心臓のリズムを支配すること

になりま、この現象を補充収縮と

呼んでいます。

 

ちなみに下位からの興奮が1回だけ

なら「補充収縮」ですが、2回以上の

興奮がある時には「補充調律」と呼び

ます。

 

順番で行くと、洞結節の興奮が起こらな

ければ、次に興奮頻度が高いのが

房室結節とHis束の接合部で、これを

房室接合部収縮(Junctional contraction)

と呼びます。

 

房室接合部収縮は、QRSの形も正常

波形と同じになります。

 

ところが、より下位のプルキンエ線維

(つまり心室)からの補充収縮であれば、

QRSが幅広くなります。

 

循環器の先生は、よく「接合部由来の

補充収縮だ」とか、「心室由来の補充収縮」

といったことを気にするのですが、これは

接合部なら、心拍数もそれほど落ちる

ことも少なく、徐脈にともなう症状も

ないことが多いので、一時ペーシングなど

までは慌てて考える必要がない、という

ことです。

 

一方で、心室由来の補充収縮が頻回に

みられているなら、心臓の基礎疾患を

確認したり、薬剤の影響がないか、

一時ペーシングを入れた方がいいか、

といったことを考えながら、患者情報を

収集します。

 

あなたも、補充収縮を見た時には

接合部なのか? 心室なのか?

そして、一時ペーシングを入れた方が

良い状況なのかを確認してから、

循環器医に相談してみてください。

(編集長)

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ERで内頚静脈からのCV挿入

(アイシールドを忘れてますよ)

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補充収縮 その1

2020.11.19
カテゴリー: カンファレンス循環器

質問です。この2つの心電図所見を

それぞれ考えてください。

 

これは今年2月にアップした、

期外収縮の記事で使ったものです。

期外収縮の記事はこちら

 

上の心電図は心室期外収縮

下の心電図は補充収縮です。

 

期外収縮は、次に来るべき収縮

タイミングよりも早く収縮した不整脈

のこと。

 

一方、補充収縮は、Escape contraction

と言いますが、予定の収縮タイミング

よりも遅く収縮した不整脈のことです。

 

本来、収縮が起こるはずのタイミングを

矢印で示すと、下の図のように補充収縮

では、だいぶ遅れて収縮しているのが

分かります。

補充収縮の時には、よく「ジャンクション」

由来とか、「心室」由来といった用語が

出てきます。

 

あなたも循環器の先生らが、

「ジャンクションだね」とか言っているのを

耳にしたことはないでしょうか?

 

そのあたりの会話を聞いても

何のこと言ってるの?とならないように

あなたにも補充収縮のことをちょっと

だけ覚えてもらいます。

 

「不整脈と言えば期外収縮しか知らない」

から、一歩抜け出しましょう。

(編集長)

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コレステロール塞栓症(CCE) その3

2020.10.06
カテゴリー: カンファレンス循環器

CCEのまとめの最後です。

今回は治療に関してです。

 

⭐️期待される治療
治療介入には2つのポイントが

あります。

①免疫学的反応の抑制
②塞栓源からの飛散を抑制

①免疫学的反応の抑制
コレステリン 結晶が末梢動脈に長期

残存する為に引き起こされる局所の

炎症や、免疫学的機序を介した血管炎

であるとの推察があり、ステロイドの

有効性に関し, いくつかの報告が

なされている。

②塞栓源からの飛散を抑制
塞栓源からの断続的なコレステリン

結晶の飛散を抑制するには、
大動脈内プラークの安定化が病態悪化

の抑制につながると考え、スタチン投与、

さらにより積極的な治療としてLDL

アフェレーシス が挙げられる.
特に進行性に腎機能が悪化す る症例

では,LDL-アフェレーシスが有用と考え

られる. LDL-アフェレーシスは LDL-

コレステロールの除去だけでなく, 

炎症性サイトカインの除去,血流の

改善を目的として 行われる。

CCEは動脈硬化性疾患に対する血管内

カテーテル検査・治 療の普及に伴い,

今後本症が増加していくと考えられる。

予後不良で確立した治療法がないものの, 

LDL-アフェレーシス とステロイドの併用

療法は有効性が期待される。

 

⭐️診療のポイント:

血管内操作後に好酸球増多を伴う

腎機能障害,足趾症状をみたらCCEを

念頭に置き,皮膚生検などに よる早期

診断が望まれる。

 

PG 製剤,スタチンの投与などで経過が

改善しない症例 では,ステロイド療法と

LDL アフェレーシスの併用が有効である

可能性がある。

(Suzu).

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ベッドサイドでの処置中

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