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水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
リウマチ性多発筋痛症 その3
マッキーがまとめてくれた
PMRの続きです。今回は鑑別疾患と
治療、予後についてです。
【PMRの鑑別疾患】
慢性関節リウマチなどの関節疾患、
感染症、悪性腫瘍などが鑑別になります。
・関節リウマチ
・変形性関節症
・多発性筋炎
・血管炎症候群
・多発性骨髄腫や他の悪性腫瘍
(前立腺癌、乳癌、大腸癌、膵臓癌など)
・感染症(ウイルス感染、ライム病、
感染性心内膜炎)
・甲状腺機能低下症、
・副甲状腺機能亢進症、
・うつ病
・繊維筋痛症
【治療】
少量のプレドニゾロン(PSL)で速やかに
(早い人では服用当日から、遅くても
1週間以内に)反応することが特徴
初回投与量はPSL10~20㎎/日を4週間
(UpToDateでは15㎎/日を推奨)
その後は2~4週ごとに10%ずつ減量し、
維持量は5~10㎎/日が目安
治療抵抗性や、PSLの減量を目的に
メソトレキセートやTNF阻害薬(レミケード®、
ヒュミラ®など)、IL6受容体阻害薬(アクテ
ムラ®)なども用いられることがあるそう
ですが、データは限られているようです。
【予後】
数か月から数年で病気の勢いが収束し、
3~4年のステロイド治療で最終的に
中止可能になることが多くあります。
一方で長期に低用量のPSLが長期に
必要になる症例や、初回治療後に
再発することもあります。
ですが、基本的には治療後の予後は
良好で、PMRそのものによって死亡率が
高くなることも、関節破壊や臓器障害を
来たすこともありません。
このため、治療の際にはステロイドによる
副作用(感染症、糖尿病、高血圧、
脂質異常症、骨粗鬆症、緑内障、
白内障、筋量低下など)の影響を最小限に
することが重要になってきます。
(マッキー)
ちょっとの時間でカルテ記載
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リウマチ性多発筋痛症 その2
マッキーがまとめてくれた
リウマチ性多発筋痛症
(Polymyalgia rhumatica:PMR)の続きです。
今回は検査所見について
【PMRの検査所見】
・高度の炎症反応を認める。
具体的には血沈(ESR)が80~100㎜/h
時に>150㎜/hを示す。
同様にCRPの上昇し>10㎎/dlとなる
こともある
・滑液包炎や滑膜炎を反映してMMP-3が
著明高値となる。ただし、ステロイド
開始後は、ステロイド自体でも上昇する
ため、寛解の指標には使えない
・リウマトイド因子や抗核抗体などの
自己抗体は陰性
・筋逸脱酵素(CK アルドラーゼ)は正常
同様に、筋電図、筋生検も異常なし
・エコーやMRIで、両側の肩峰下や三角筋下、
大腿骨大転子下に滑液包炎を高頻度に
認める。
【PMRの診断基準】
高齢者で、両側対称性の上肢のこわばりや
疼痛による挙上困難を訴え、炎症反応の
上昇を認める時はPMRを鑑別に挙げる。
Birdの診断基準が汎用されているが、
エコー所見を加味した、米国リウマチ学会
/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)の基準も
用いられます。
次回は鑑別と治療についてです。
(マッキー)
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リウマチ性多発筋痛症 その1
80歳台の女性
ADLの自立した患者さん。
糖尿病で近医加療中ですが、
コントロールはあまりよくない。
今回は、1か月前から両肩と両膝の
痛みを自覚。1週間前には整形外科を
受診し、痛み止めを追加された。
しかし、前日から疼痛が悪化し、
立ち上がれなくなったため、ERを
受診しました。
バイタルはBP:150/90mmHg、HR:90bpm
BT:37.1℃ RR:16 SpO2:97%
痛みを訴える場所には発赤・腫脹なし
熱感なし
さて、これだけの情報で、あなたは
どんな鑑別を挙げますか?
考えてみてください。
↓
↓
この症例はリウマチ性多発筋痛症
(Polymyalgia rheumatica:PMR)でした。
高齢者の不明熱の原因になるなど、
名前は聞いたことがあると思います。
除外診断が基本ですが、もうすぐ
初期研修を終えるマッキーが
PMRについて、まとめてくれたので
紹介します。
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【PMRの臨床的特徴】
・50歳以上(多くは60歳以上)に発症し、
男女比は1:2
・病因は不明だが、炎症の局在は
筋ではなく、滑液包や滑膜
・頚・肩・腰・大腿などの近位筋部に疼痛や
こわばりを訴え、一般的に両側性
・炎症を反映した安静時のこわばりで
肩関節周囲の滑液包炎のため
「朝から昼まで、両側上肢の挙上が
できない」という訴えが多い。
・微熱、倦怠感、体重減少などの
全身症状を伴う
・症状は2週間以内に完成し、慢性関節
リウマチより比較的亜急性の経過を取る
・側頭動脈炎と合併することもある
(欧米に比べ、本邦は少ない)
・両側の肩峰下滑液包と大腿骨転子部、
坐骨結節に、同部位の炎症を反映した
圧痛がある
・筋力低下はないものの、筋痛のために
筋力テストが困難なことがある
(マッキー)
次回は、PMRの検査や診断基準に
ついて紹介します。
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結節性紅斑 その2
結節性硬化症(Erythema Nodosum:EN)の
続きです。
皮疹は患者さんや家族も自分の目で
見ることができるので、どういう
経過になるのかを、よく質問されます。
ですので、今回はENの経過について
まとめておきます。
ENは炎症性の脂肪織炎なので、
皮下に結節が触れるのがポイントですが、
病変は硬く、境界不明瞭で、大きさは
さまざま。明るい赤色で、熱感や疼痛が
あります。
それが、だんだん平坦になって、紫色を
経て黄色のあざのように変化します。
最終的には、潰瘍や瘢痕を残さずに
完全に治癒しますが、数週間(たいてい
6週間)程度はかかるようです。
(もちろん基礎疾患によります)
基礎疾患が不明の場合は、30~40%で
再発を認めるとされ、その場合は
悪性腫瘍の検索を考慮します。
写真はネット上でいろいろ見れるので、
是非確認してください
参考文献
国際診療のための内科アトラス大事典
(編集長)
ERの一コマ
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結節性紅斑 その1
肺炎で入院していた70歳台男性。
抗菌薬の治療も終了し、そろそろ退院
という状態でした。ところが、数日前から
両側下腿の痛みを訴えるようになりました。
診察すると、下腿前面にわずかに隆起した
圧痛を伴う紅斑を3か所ほど認めました。
皮膚科に診てもらうと、結節性紅斑
(Erythema Nodosum:EN)の診断でした。
感染に伴うものとの診断で、サワシリンを
1週間服用し、痛みもなくなりました。
このENですが、
皮下結節と圧痛を伴う境界不明瞭な紅斑を
特徴とする、炎症性の脂肪織炎です。
慢性炎症や悪性腫瘍、感染、薬剤などで
見られることは聞いたことがあるはず。
20~40歳代の女性に多く、典型的には
下腿前面か側面に生じますが、他の
部位に認めることもあります。
たぶん、サルコイドーシスとか悪性腫瘍との
関連があることは、あなたも国試的な知識
として知っていると思いますが、半数以上
(文献によっては55%程度)は特発性
なんだそうです。
逆に言うと、4割以上で基礎疾患が隠れて
いるので、原因検索が必要です。
例えば、感染に伴うものであれば、
A群β溶連菌や結核が有名ですが、
結核によるものは非常にまれになって
いるようです。
炎症性疾患ではサルコイドーシス、
潰瘍性大腸炎やクローン病といった
炎症性腸疾患、ベーチェット病、
スウィート病などで関連があります。
悪性腫瘍であれば、急性骨髄性白血病、
カルチノイド腫瘍、膵臓癌が関連する
そうです。
(編集長)
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【開催中止のお知らせ】 第21回水戸医学生セミナー
ご承知の通りCOVID-19対策で
26日に政府から全国のイベント
自粛要請が出されました。
これを受けて、今週末に予定していた
第21回水戸医学生セミナーも
中止することにしました。
実は、先週はじめから院内のICTを
含めた関係者で、開催の是非を
検討し、院内で患者さんとの導線が
交差しないようにとか、参加予定者に
体調の悪い方は参加を控える
ようにメールするなど、準備して
きました。
しかし、報道の通り、この時期は
感染拡大を防ぐ大事な時期でも
あるため、再度関係者で検討し、
中止を決定しました。
申し込んでくれた医学生の皆さんは
もちろんのこと、講義の準備や、
ラリーのシナリオを考えてくれた
当院の研修医たち、そして協力を
申し出てくれた近隣の救急隊員や
院内スタッフには申し訳ありませんが、
どうかご理解いただきますよう
お願い申し上げます。
なお、次回は夏に開催できるよう
準備を進めたいと考えていますので、
是非参加してください。
(編集長)
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心室二段脈 期外収縮5
前回は、期外収縮で「脈が抜ける」、
「ドキン」と感じる理由を紹介しました。
今回は、宿題の答え合わせです。
問題は下の心電図でした。
この心電図は心室期外収縮の
二段脈です。
この場合、期外収縮のところで
1回拍出量が小さくなるため、
脈拍を計っていると、心拍数の半分
になります。
二段脈とは、このように正常波形と
期外収縮が交互に出ているものを
さしますが、こんな時でもほとんどの
患者さんは無症状です。対応は
基本どおりに「経過観察」でOKです。
(編集長)
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なぜ脈が抜けるの? 期外収縮4
期外収縮の続きです。
患者さんは、期外収縮の症状を
「脈が抜けた」とか
「ドキンと脈が強くなる」
と、よく表現します。
これって、どうしてなのでしょう?
さらに、よく考えてみれば、
脈が抜けるのと、ドキンと
強く脈を感じるのは
全然違う現象ですよね。
あなたは説明できますか?
↓
↓
正常の心臓であれば、1回拍出量は、
拡張期が短いと低下します。
これは、左室内に十分に血液を
ため込めない(左室拡張末期容積が
小さい)うちに収縮してしまうためです。
逆に、拡張期が長いと、1回拍出量は
増加します。
これは、左室内に十分血液をため込む
(左室拡張末期容積が大きい)と、
収縮力が増加するためです。
(Frank-Starlingの法則)
期外収縮の話に戻ると、期外収縮は
予定よりも早いタイミングで収縮する
不整脈なので、1回拍出量が低下
します。
と言うことは、図の矢印のように
なるので、脈をとっていると、
ここで「脈が抜けた」ように感じます。
一方、期外収縮の直後の収縮は、
一般的に拡張期が長くなるので、
1回拍出量が増加します。
図の矢頭のようになり、ここで正常の
脈よりも「ドキン」と強く脈を感じて
しまいます。
では、ここで宿題です。
下記のような心電図では
脈拍はどうなるでしょうか?
解説は次回にしますので、
それまで考えてみてください。
(編集長)
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意外なことに、高評価です
当院では病院見学をお勧めしています。
2月に入り、すでに何人もの医学生が
来てくれていますが、その病院見学で、
意外と好評なのが研修医たちとの
昼食です。
以前から編集長は、
「指導医クラスの話は半分程度に
聞き流して下さい」
と言っています。どうしても、話を
盛ってしまうからです(笑)
大事なのは、研修医から直接話を
聞いてもらうことだと考えています。
そのために、研修医たちと昼食を
とりながら話をしてもらっている
のですが、他に邪魔が入らない状況
なので、普段聞けないことをいろいろ
聞き出せるようです。
(内容は編集長も知りません!)
見学していただいた方にはアンケート
をお願いしているのですが、この
昼食の時間が、意外と高評価を
いただいています。
ぜひあなたも、この春休みを利用して
当院の研修医たちから、リアルなところを
聞き出してみてください。
(編集長)
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なんで、このタイミングなの?
あなたは、高齢の肺炎患者さんを
担当しています。
入院時は低酸素血症も認めて
いましたが、徐々に酸素も減らせて
昨日から終了できました。
食事も摂れていて、むせ込みも
ありません。WBCもCRPもだいぶ
改善してきました。
明日には抗菌薬も投与終了の予定
で、家族と退院の日程調整も
終えたばかりです。
ところが、夕方の申し送りの時間帯に
看護師さんから
「先生、○○〇さんが、38℃と熱発
していますよ。どうしますか?」
と言われました。
なんで、このタイミングなの?
と、がっかりする状況ですが、
こんな時、あなたはどう対応する
でしょう?考えてみてください。
↓
↓
↓
あなたが、
「ホントは明日で抗菌薬は終了予定
だったけど、そのままもう少し継続
しよう」と考えたのなら、
賢明な選択とは言えません。
発熱の原因は、肺炎なのでしょうか?
例えば、尿道カテーテルが入って
いて、尿路感染症かもしれません。
点滴刺入部のところが発赤して
いて、点滴ラインからの感染かも
してません。
もしかしたら、患者さんの膝が
発赤して、熱感を持っていて、
偽痛風の発作かもしれません。
つまり、他の感染巣を検索する
必要があるのです。
最低でも、患者さんを診察して、
血液培養をとって、新たな異常
所見がないか確認しましょう。
そして、こんな時に、熱源検索に
役立つのが、「8つのD」です。
・Device(デバイス)
・CD(CD腸炎)
・Pseudogout(偽痛風)
・DVT(深部静脈血栓症)
・Drug(薬剤)
・Decuvitus(褥瘡)
・Debris(絶食による無石性胆泥)
・Deep abscess(深在性膿瘍)
以前に、徳田先生カンファレンスで
7Dと教わりましたが、
当院では最後のDeep abscessを
加えて、「8つのD」で覚えるように
しています。
もう少しで治療が終わる、とか
退院目前、といった患者さんの
発熱を見たら、「8つのD」を
思い浮かべながら診察を
していきましょう。
(編集長)
ERの一コマ
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