臨床研修ブログ

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急性大動脈解離の診断

2022.12.03
カテゴリー: カンファレンス循環器

こんにちは。現在、救急科で研修している新潟県産もやしです。

 

研修中の症例で、当院ERを受診し急性大動脈解離の診断となったのですが、治療する前に状態が急激に悪化してしまった症例を立て続けに2例経験しました。大動脈解離はいかに早く診断し、治療につなげられるかが大切であると実感しました。造影CTを撮ることで診断できるのですが、ERでは全ての症例に造影CTを撮るわけにもいきません。そこで今回は大動脈解離について見落としやすいポイントやいつ造影CTを撮るべきなのかまとめてみました。

 

  • 意外な症状

当然発症の胸痛や腰背部痛は有名ですが、必ずしも痛みを主訴としないこともあり、突然発症の気分不良や呼吸困難感、神経学的異常(失神、一過性意識障害、片麻痺など)で来院されることもあります。このような無痛性大動脈解離は5-10%と報告されています。

 

  • 疑って胸部Xpを読影

Xpの有名な所見は、縦隔拡大、胸水貯留、カルシウムサインです。破裂の有無とは無関係に胸水貯留(左側>右側)することは比較的多いです。カルシウムサインは大動脈の石灰化が大動脈血管壁から10mm以上離れて見えることを言います(下写真)。感度・特異度は高くないですが、大動脈解離を疑って胸部Xpを撮影し読影することが大切です。異常所見があっても疑っていなければ見落としてしまいます。

 

カルシウムサイン

血管の辺縁と石灰化した内膜の距離が離れている

 

  • D-dimerについて

D-dimerの解離に対する感度は97%、特異度56%であり解離の否定材料として非常に有用ですが、偽腔閉鎖型や解離腔が短い時ではしばしば陰性になることもあるので注意しましょう。

 

  • 大動脈解離診断リスクスコア(Aortic Dissection Detection Risk Score:ADD-RS

どんな患者が高リスクか事前に見積もるための指針です。3つのカテゴリーがあり、各カテゴリーの中で1つ以上該当するものがあれば1点とし、0点から3点で評価します。

 

<ADD-RSスコア>

基礎疾患

Marfan症候群、大動脈疾患家族歴、大動脈疾患既往歴、最近の大動脈弁手術、胸部大動脈瘤の既往

痛みの性状

突然発症の痛み、重度の疼痛、裂けるような痛み

身体所見

血流障害(血圧の左右差、脈の左右差、神経局在所見+痛み)、新規大動脈弁雑音、ショックor低血圧

 

欧米のガイドラインではADD-RSとD-ダイマーとを組み合わせた下記のようなアルゴリズムが提唱されています。

 

 

大動脈解離は単独で感度・特異度の高い病歴や所見はありません。今回、紹介したポイントを組み合わせて、大動脈解離を診断し早期の治療につなげたいと思います。

(新潟県産もやし)

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