臨床研修ブログ

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脊髄梗塞(2)

2023.10.17
カテゴリー: カンファレンス 内科

みなさんこんにちは、研修医のUminekoです。前回に引き続き脊髄梗塞について話していこうと思います。

 

前回は血管支配や病因など知識面多めでしたが、今回は実際の臨床像などについてまとめていきます。

 

【臨床症状】

脊髄梗塞の発症経過としては数時間での発症が多く、ほとんどの患者では症状出現時に重度の背部痛や手足の疼痛を持つと言われています。脊髄梗塞の神経学的所見は関与する血管領域によって異なり、その程度としては対麻痺から軽度の痺れまで幅広くあります。そして背中や首の痛みは、通常脊髄虚血が起こっている病変のレベルで発生します。

 

脊髄梗塞の一般的な臨床症状が前脊髄動脈症候群です。前脊髄動脈の支配する領域である腹側2/3が障害されることで、急速に発現する対麻痺や四肢麻痺、病変レベル以下の温痛覚の低下などが認められます。また自律神経機能の障害により低血圧、性機能障害、膀胱直腸障害が生じる可能性が考えられます。

 

【診断】

脊髄梗塞の診断にはMRIが必要です。まずはヘルニアや脊柱管狭窄症などの圧迫による脊髄疾患を除外することが大切です。脊髄梗塞でのMRI所見としてはT2強調画像や拡散強調画像での高信号などがあります。特に脊髄血管領域または腹側角に限定したT2高信号はOwl’s eyesやsnake eyesと言われ、脊髄梗塞に特異的な所見となっています。

 

MRI以外の検査は必ずしも必要ではなく、その他疾患を除外する目的で検査を追加することがあります。(例.大動脈解離鑑別のCT、感染症・炎症性疾患鑑別の腰椎穿刺や髄液検査など)

 

【治療】

残念ながら脊髄梗塞に対して定められた治療法はまだありません。可能性として脊髄虚血に対する血栓溶解療法が現在調査中との報告もあります。脊髄梗塞を引き起こす根本的な病因がある場合は、2次的な障害が出ることを防ぐ目的に治療する場合があります。

 

脊髄虚血が起きてしまった時の対処としては脊髄への酸素供給を維持することが大切です。具体的な方法としては酸素飽和度の維持や貧血の改善などをしてみるといいでしょう。

 

またある報告ではAAAの手術時に内科的予防として脳脊髄液圧を下げる目的にスパイナルドレナージを行ったり、脊髄血流量を改善する働きのあるオピオイド受容体拮抗薬(ナロキソン)を投与したりすることもあるそうです。いろんな報告・検証があるのでみなさんもぜひ調べてみて下さい。

 

いかがだったでしょうか。

脊髄梗塞は稀な疾患であり、臨床現場ではなかなか見る機会はないかもしれません。ですが脊髄梗塞による症状である麻痺や感覚障害などは日々の診療で多く見ると思います。そのような患者さんと遭遇した際にきちんと脊髄梗塞を鑑別に上げられるかどうか非常に大切だと思います。自分も今回のブログで改めて脊髄梗塞について学ぶことができましたので、今後下肢の麻痺患者さんの診察の際にはきちんと想定できるようにしていきたいと思います。

 

それではみなさん失礼します。

              (Umineko)

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