臨床研修ブログ

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低ナトリウム血症の対処5

2018.09.04

今までずっと外来でフォローしてきた

70歳代の患者さん。症状はないけど、

いきなり低Na血症になってしまいました。

当初はフロセミドの影響を考えて中止

したものの低Na血症は改善せず、

SIADHの診断に至りました。

 

ここでSIADHをまとめてみましょう。

 

SIADH(Syndrome of inappropriate 

antidiuresis hormone)とは

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群と

訳されていますが、尿量を減少させる

作用を持つホルモンである

バソプレッシンが血漿浸透圧に

対して不適切に分泌、または作用する

ことによっておこる症候群です。

 

診断は

<必須所見>

① 血漿浸透圧<275mOsm/kg

② 尿浸透圧>100mOsm/L

③ 体液量が正常

④ 通常の塩分摂取状態で

 尿Na排泄>40mmol/L

⑤ 副腎、甲状腺機能が正常

⑥ 利尿剤の使用がない

 

<参考所見>

・血清尿酸値<4 mg/dL

・血清尿素窒素< 10 mg/dL

・FENa >1 % ;FEUN > 55%

・生理食塩水投与で改善しない

・水制限にて低Na血症が補正

・水負荷試験で異常結果

・体液量正常な低Na血症における

 バソプレッシン値の上昇

(NEJM 2007; 356;2064-72)

 

ここで不思議に思うかもしれませんが、

バソプレッシン値の上昇が参考所見に

なっていることです。

 

そもそもバソプレッシンは低浸透圧時

には分泌されないはずのものです。

測定出来てしまうこと自体が異常です。

しかし(古典的)SIADHを調べていくと、

バソプレッシン値が必ずしも上昇している

訳ではないので、最近はSIAD

(Syndrome of inappropriate antidiuresis)と

いうことが提唱されているようです。

 

そして重要なこととして、SIADHは

あくまで二次性に起こるものです。

つまりSIADHになったきっかけがあるので

それを探しに行く必要があります。

 

SIADHの原因には

肺疾患:肺炎、肺結核、肺腫瘍、気管支喘息、

陽圧換気、肺アスペルギルス症

 

脳疾患:髄膜炎、脳炎、くも膜下出血、脳梗塞、

脳出血、脳腫瘍、外傷

 

悪性腫瘍:肺癌(特に小細胞癌)、膵癌

 

薬剤:カルバマゼピン、ビンクリスチン、

アミトリプチン、イミプラミン、SSRI、NSAIDs

 

などがあります。

(他にもたくさんあるので、成書をご覧ください)

 

次回はSIADHの治療について

紹介します。

(編集長)

 

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平成30年9月11日(火)

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